情報公開
度々登場しますが、先日放送されたNHKのガン治療に関する番組(2006/1/7 NHKスペシャル〜第一夜 がん医療を問う〜、2006/1/8 第二夜 がんの苦痛は取り除ける)の中でも、ガン医療に関する情報公開の重要性が、論議されていましたが、
日本が目標としている欧米とは、すでに基本的なところから、
情報公開に極めて大きな開きがあります。
下の表は、全世界規模で開催されるアメリカ癌治療学会(ASCO)で、2002年
「化学療法(抗癌剤治療)は患者にとって有用か?」
と、大真面目に論議された時に使われたスライドです。(勿論原文は英語です。)

このスライドの肺ガンに対する抗癌剤治療の治療成績については、2005年になり論文として発表されています。
内容は、手術不能の肺癌患者さんのデータです。
「無治療」で経過を見た患者さんのグループの生存期間中央値。
肺癌に対し"有効性"が大きいとされるシスプラチンという抗癌剤を含んだ、諸種の抗癌剤を組み合わせた治療をしたグループの生存期間中央値が示されています。
(生存期間中央値については、2006年1月12日に書きました。)
同時に、それぞれのグループで一年間生きていることが出来る確率も示されています。
結果は、ご覧のとおり、無治療で経過を診た場合50%の患者さんが生きていられる期間は、5.7ヶ月。
シスプラチンを用いて抗癌剤治療を行うと、7.7ヶ月と言うものです。
すなわち、"辛く苦しい思いをすれば"平均して"2ヶ月間長生きが出来る"。と言うものです。
この数字を見て、良心的な医者は「化学療法は患者にとって有用か?」という真摯な論議になるのです。
この数字は、現在の抗癌剤治療で非常に重要視されるエビデンスです。
(エビデンスについては2006年1月15日に書きました。)
そしてその数字が確認されていることから、現在の"標準的抗癌剤治療"のスケジュールが定められて、その治療が推奨されています。
勿論、現在では他の治療方法もいろいろと試され、この数字が全てではありませんが、この治療成績を大幅に改善させ、どの患者さんも納得して治療を受けたくなるようなものはいまだありません。現在、最善のデータでも、抗癌剤治療では、無治療よりは3〜4ヶ月程度の長生きを可能にさせてくれるだけです。
患者さんが、この討論を聞かれたら、如何思うでしょうか?
化学療法を受けて、すでに亡くなられた患者さんのご家族は、どの様に感じるでしょうか?
「"イマサラ"何を言っているの!」と思われることでしょう。
そして、「そんな結果、エビデンスについては説明されなかった。それを聞いていたら、あのような辛く苦しい治療は受けさせなかった。」と言われると思います。
この学会では、論議されていませんが、"抗癌剤治療の奏効率"という、患者さんが最も望んでいるはずの"長生きすることとは関係の無い数字"だけしか、日本の患者さんやご家族には、説明されなかったのではないでしょうか。
(奏効率については2006年1月10日に書きました。)
そして、抗癌剤治療の奏効率と延命効果について、患者さんもご家族も誤解したまま、その抗癌剤治療を受けてしまったのではないでしょうか。
確実に、7.7ヶ月以内に半分の患者さんが、死ぬことが判っていながら、その事実を患者さんに知らせることなく、副作用の極めて大きい辛い治療を受けさせることに対して、日本の腫瘍内科医といわれるお医者様たちは、罪悪感は感じなかったのでしょうか。
少なくともアメリカの医者は、それを感じたから、このような論議が出てきたものと思われます。
しかも、アメリカでは、エビデンスの真実について、日本のように患者さんに隠すことはなく、全て曝け出した上で、患者さん自身がその治療を選択します。
本当の意味でのインフォームドコンセントが成り立っています。
それでも、やはり、その治療に疑問を持った医者が、多くの医者の意見を聞くべく、学会で論議されています。
現在の日本では、殆んど"騙まし討ち"のように、どの患者さんも満足は出来ない貧弱なエビデンスしかない治療を、その実態を患者さんに説明することなく、医者の思うままに、強引な抗癌剤治療が進められています。
勿論、"騙まし討ち"のようになってしまっている背景には、日本の患者さんが、ご自分の病気に対する情報を医者から徹底的に聞き出そうとする貪欲さに欠けている点や、日本の現在の医療行政の立ち遅れから、医者が患者さんに十分に説明する時間が持てない。
などの多くの問題が複雑に絡み合った結果であって、一概に医者だけが責められるべき問題ではないと思いますが・・・・
話はそれましたが、この決して満足の出来ない治療効果しかもたらしてくれない現在の抗癌剤治療に対して、医者の間では「これで良いのか?」という再確認が、アメリカではなされています。
日本には、ありません。
エビデンスを"錦の御旗"、"黄門様の印籠"のように誇らしげに掲げ、
どの患者さんも満足しないであろう治療が、何の疑いもなく進められています。
医者の間でも、論議が出ない問題を、一般の患者さんにまで、情報公開することなど、極めて難しいことではないでしょうか。
日本の現状を考える時、開かれた、ガラス張りの医療にしてゆくには、相当に遠い道のりが待っているように思います。
ちなみに「化学療法は患者にとって有用か?」の結果ですが、
「現時点での回答」という形で一応出されています。
答えは「Yes」
「化学療法は必要。」です。
それは、無治療で経過を診るより、確実な延命効果は証明されているのですから、
「神様から与えられた命を、可能な限り大切にする」という、
キリスト教の精神からは、当然だと思います。
この回答は、人種、宗教感、生死感などにより大きく変わってくるはずです。
先ず、全ての治療情報が公開され、
患者さんを交えて、論議することが極めて重要であると考えます。
しかし残念ながら、日本でこのような真摯な討論がなされる可能性は、現在のところ皆無だと思います。
現在の日本では、この様な数字は、患者さんには完全に伏せられ、インフォームドコンセントが存在しないのですから、当然のことですが・・・・
この論議の結果・回答が、どのようなものであるかよりも、このような議論がなされることが、重要であると思います。しかし日本ではありません。
早くその様な日が来ることを祈ります。
以上 文責 梅澤 充
度々登場しますが、先日放送されたNHKのガン治療に関する番組(2006/1/7 NHKスペシャル〜第一夜 がん医療を問う〜、2006/1/8 第二夜 がんの苦痛は取り除ける)の中でも、ガン医療に関する情報公開の重要性が、論議されていましたが、
日本が目標としている欧米とは、すでに基本的なところから、
情報公開に極めて大きな開きがあります。
下の表は、全世界規模で開催されるアメリカ癌治療学会(ASCO)で、2002年
「化学療法(抗癌剤治療)は患者にとって有用か?」
と、大真面目に論議された時に使われたスライドです。(勿論原文は英語です。)

このスライドの肺ガンに対する抗癌剤治療の治療成績については、2005年になり論文として発表されています。
内容は、手術不能の肺癌患者さんのデータです。
「無治療」で経過を見た患者さんのグループの生存期間中央値。
肺癌に対し"有効性"が大きいとされるシスプラチンという抗癌剤を含んだ、諸種の抗癌剤を組み合わせた治療をしたグループの生存期間中央値が示されています。
(生存期間中央値については、2006年1月12日に書きました。)
同時に、それぞれのグループで一年間生きていることが出来る確率も示されています。
結果は、ご覧のとおり、無治療で経過を診た場合50%の患者さんが生きていられる期間は、5.7ヶ月。
シスプラチンを用いて抗癌剤治療を行うと、7.7ヶ月と言うものです。
すなわち、"辛く苦しい思いをすれば"平均して"2ヶ月間長生きが出来る"。と言うものです。
この数字を見て、良心的な医者は「化学療法は患者にとって有用か?」という真摯な論議になるのです。
この数字は、現在の抗癌剤治療で非常に重要視されるエビデンスです。
(エビデンスについては2006年1月15日に書きました。)
そしてその数字が確認されていることから、現在の"標準的抗癌剤治療"のスケジュールが定められて、その治療が推奨されています。
勿論、現在では他の治療方法もいろいろと試され、この数字が全てではありませんが、この治療成績を大幅に改善させ、どの患者さんも納得して治療を受けたくなるようなものはいまだありません。現在、最善のデータでも、抗癌剤治療では、無治療よりは3〜4ヶ月程度の長生きを可能にさせてくれるだけです。
患者さんが、この討論を聞かれたら、如何思うでしょうか?
化学療法を受けて、すでに亡くなられた患者さんのご家族は、どの様に感じるでしょうか?
「"イマサラ"何を言っているの!」と思われることでしょう。
そして、「そんな結果、エビデンスについては説明されなかった。それを聞いていたら、あのような辛く苦しい治療は受けさせなかった。」と言われると思います。
この学会では、論議されていませんが、"抗癌剤治療の奏効率"という、患者さんが最も望んでいるはずの"長生きすることとは関係の無い数字"だけしか、日本の患者さんやご家族には、説明されなかったのではないでしょうか。
(奏効率については2006年1月10日に書きました。)
そして、抗癌剤治療の奏効率と延命効果について、患者さんもご家族も誤解したまま、その抗癌剤治療を受けてしまったのではないでしょうか。
確実に、7.7ヶ月以内に半分の患者さんが、死ぬことが判っていながら、その事実を患者さんに知らせることなく、副作用の極めて大きい辛い治療を受けさせることに対して、日本の腫瘍内科医といわれるお医者様たちは、罪悪感は感じなかったのでしょうか。
少なくともアメリカの医者は、それを感じたから、このような論議が出てきたものと思われます。
しかも、アメリカでは、エビデンスの真実について、日本のように患者さんに隠すことはなく、全て曝け出した上で、患者さん自身がその治療を選択します。
本当の意味でのインフォームドコンセントが成り立っています。
それでも、やはり、その治療に疑問を持った医者が、多くの医者の意見を聞くべく、学会で論議されています。
現在の日本では、殆んど"騙まし討ち"のように、どの患者さんも満足は出来ない貧弱なエビデンスしかない治療を、その実態を患者さんに説明することなく、医者の思うままに、強引な抗癌剤治療が進められています。
勿論、"騙まし討ち"のようになってしまっている背景には、日本の患者さんが、ご自分の病気に対する情報を医者から徹底的に聞き出そうとする貪欲さに欠けている点や、日本の現在の医療行政の立ち遅れから、医者が患者さんに十分に説明する時間が持てない。
などの多くの問題が複雑に絡み合った結果であって、一概に医者だけが責められるべき問題ではないと思いますが・・・・
話はそれましたが、この決して満足の出来ない治療効果しかもたらしてくれない現在の抗癌剤治療に対して、医者の間では「これで良いのか?」という再確認が、アメリカではなされています。
日本には、ありません。
エビデンスを"錦の御旗"、"黄門様の印籠"のように誇らしげに掲げ、
どの患者さんも満足しないであろう治療が、何の疑いもなく進められています。
医者の間でも、論議が出ない問題を、一般の患者さんにまで、情報公開することなど、極めて難しいことではないでしょうか。
日本の現状を考える時、開かれた、ガラス張りの医療にしてゆくには、相当に遠い道のりが待っているように思います。
ちなみに「化学療法は患者にとって有用か?」の結果ですが、
「現時点での回答」という形で一応出されています。
答えは「Yes」
「化学療法は必要。」です。
それは、無治療で経過を診るより、確実な延命効果は証明されているのですから、
「神様から与えられた命を、可能な限り大切にする」という、
キリスト教の精神からは、当然だと思います。
この回答は、人種、宗教感、生死感などにより大きく変わってくるはずです。
先ず、全ての治療情報が公開され、
患者さんを交えて、論議することが極めて重要であると考えます。
しかし残念ながら、日本でこのような真摯な討論がなされる可能性は、現在のところ皆無だと思います。
現在の日本では、この様な数字は、患者さんには完全に伏せられ、インフォームドコンセントが存在しないのですから、当然のことですが・・・・
この論議の結果・回答が、どのようなものであるかよりも、このような議論がなされることが、重要であると思います。しかし日本ではありません。
早くその様な日が来ることを祈ります。
以上 文責 梅澤 充



