昨日の「エビデンス重視」の続きです。
日本では、
多くの場合、患者さんに対して、
その患者さんが宿している病気が
ガンであることさえ告知しませんでした。
したがって治療内容の詳細について
ご本人に説明することも
ほとんどありませんでした。
ガンという病名を告げていない患者さんには、
「ガンの可能性もある」
「放っておくとガンになるから・・・・」
ガンであることを知っている患者さん対しては、
「再発の可能性もあるから」
「再発すると困るから」
などと適当なことを言って、
手術をしたり、
抗癌剤治療を行っていました。
当時、あまり馴染みのなかった腫瘍内科なる診療科での実態は知りませんが、
日本全国、
ガン告知はタブーであったように思います。
今思うと、
そんな告知無しが当たり前の中で、
辛く、厳しい抗癌剤治療を行っていた専門の先生は、
さぞかし苦労されていたと想像されます。
国立がんセンターは、
40年以上前に設立されていますから、
流石に、がんセンターでは、
「ガンかも知れない」
は通用しないで、
「ガンですから治療をします」
と話していたのだとは思います。
その上で、
延命効果が無いというエビデンスのある
抗癌剤治療を延々と行って、
現在の抗癌剤治療の発展に大きく寄与しています。
そのために、
何万もの人柱が立てられたことと思います。
しかし、その頃は、大学病院も含めて、
多くの抗癌剤治療は
手術の片手間に、
外科医が行っていました。
そして、その対象は、
すでに手術ができない、
あるいは手術後に再発をきたした患者さんであり、
外科医から見れば、
すでに敗北させられたガンでした。
手術で苦しめられた身体に、
抗癌剤でさらに追い討ちをかけるよりも、
治らないことが分かっているのだから、
ラクな治療をしてあげよう。
と考えていた外科医が多かったように思います。
少なくとも私の周囲の外科医はそうでした。
さじ加減治療だらけでした。
一応教科書的なものはありましたが、
それは参考程度で、
それに忠実に従うことはほとんどありませんでした。
抗癌剤治療に熱心な医者は、
イロイロな文献から情報を仕入れて、
抗癌剤の治療効果を高める努力をしていましたが、
それは、まったく教科書には書いてありませんでした。
最先端の実験的治療の文献だけを頼りに、
手探りの、さじ加減治療を進めていました。
それは、当時の標準的な治療では、
患者さんは長生きしないことを知っていたからです。
手術で傷つけれられた身体をさらに痛めつけることを
憚ったが故の、さじ加減治療を行っていました。
私がはじめて抗癌剤治療の現場を見た時、
抗癌剤治療を受けている患者さんは、
全員心電図のモニターを付けていて、
その心電図はナースステーションで、
常に監視されていました。
何故全員に心電図が必要なのか理解できませんでしたが、
全員の心拍数が異常に少ないことに気付き、
使っているクスリを調べたところ、
ベラパミールという心拍数を遅くする薬剤を全員に併用していました。
抗癌剤のガン細胞内濃度を高める作用があるとの文献に従っての治療でした。
残念ながら、
その治療には大きな効果は認められませんでしたが、
そんなに大量のベラパミールを人間に実際に使ったデータは、
当時ほとんどなかったらしく、
心電図データのほうを循環器の専門医が興味を持ち、
学会発表したようです。
話しはそれましたが、
手探り抗癌剤治療を進める指標は、
患者さんの全身状態、自覚症状でした。
当時抗癌剤治療を必要とされる患者さんでは、
ガンの存在による、
痛みなどの強い自覚症状を伴っていましたので、
その症状緩和のためには、
最大量の、
あるいはそれを超えるような量の抗癌剤を用いて
治療を行うこともしばしばでした。
しかし、当時は、
現在のように、
白血球を簡単に増やしてくれるクスリもありませんでしたので、
大量の抗癌剤を使うときには、
いつも、オッカナビックリでした。
検査室から
「本日の○○さんの白血球が100です!」
などの電話があると、
心臓が絞めつけられる思いでした。
幸、死亡事故に遭うことありませんでした。
そのような患者さん本位の抗癌剤治療から、
徐々に現在の治療形態に移行していき、
10年前には、
外科医以外の医者が抗癌剤治療を行うことも多くなり、
現在の標準治療一辺倒の基礎が出来上がったような気がします。
ほとんどロボット治療になっている病院もあるように思います。
インターネットで医者に抗癌剤治療を指導しているような
ホームページを見ると、
身長と体重から算出した体表面積だけを指標にして、
忠実にそれに従わなければ、
「意味が無い」
と書かれています。
まさに、「抗癌剤治療医はロボットになれ!」
と指導してくれています。
「意味が無い」のは、
昨日も書いたとおり、
患者さんには、
延命効果は無いという事実を隠し、
そのエビデンスは無視して、
無数の人柱の上に築き上げた治療に、
やっと、ごく僅かといえども、
延命効果があるというエビデンスが出てきたのですから、
そのありがたいエビデンスを再現するには、
患者さんおよびガンの個性は、
完全に無視して、
身長と体重だけからでてくる体表面積だけを頼りに
治療を進めなければならない、
という意味だと、
私は理解しています。
私は、患者さんの個性を最優先にすることの方が、
「意味は有る」ように思っています。
ただし、ロボット治療で空いた時間を
論文書き、学会発表に回すことはできませんが・・・・
面白い質問をいただき、
時代の流れを振り返ることができました。
ありがとうございました。
以上 文責 梅澤 充
10年、20年前の抗がん剤治療では、
医師の方々は何を指標にして、抗がん剤治療に取り組まれていたのですか?
もしもロボット医療が現実化したら、
医師の方々は治療の場で、いったい何を行うのですか?
日本では、
多くの場合、患者さんに対して、
その患者さんが宿している病気が
ガンであることさえ告知しませんでした。
したがって治療内容の詳細について
ご本人に説明することも
ほとんどありませんでした。
ガンという病名を告げていない患者さんには、
「ガンの可能性もある」
「放っておくとガンになるから・・・・」
ガンであることを知っている患者さん対しては、
「再発の可能性もあるから」
「再発すると困るから」
などと適当なことを言って、
手術をしたり、
抗癌剤治療を行っていました。
当時、あまり馴染みのなかった腫瘍内科なる診療科での実態は知りませんが、
日本全国、
ガン告知はタブーであったように思います。
今思うと、
そんな告知無しが当たり前の中で、
辛く、厳しい抗癌剤治療を行っていた専門の先生は、
さぞかし苦労されていたと想像されます。
国立がんセンターは、
40年以上前に設立されていますから、
流石に、がんセンターでは、
「ガンかも知れない」
は通用しないで、
「ガンですから治療をします」
と話していたのだとは思います。
その上で、
延命効果が無いというエビデンスのある
抗癌剤治療を延々と行って、
現在の抗癌剤治療の発展に大きく寄与しています。
そのために、
何万もの人柱が立てられたことと思います。
しかし、その頃は、大学病院も含めて、
多くの抗癌剤治療は
手術の片手間に、
外科医が行っていました。
そして、その対象は、
すでに手術ができない、
あるいは手術後に再発をきたした患者さんであり、
外科医から見れば、
すでに敗北させられたガンでした。
手術で苦しめられた身体に、
抗癌剤でさらに追い討ちをかけるよりも、
治らないことが分かっているのだから、
ラクな治療をしてあげよう。
と考えていた外科医が多かったように思います。
少なくとも私の周囲の外科医はそうでした。
さじ加減治療だらけでした。
一応教科書的なものはありましたが、
それは参考程度で、
それに忠実に従うことはほとんどありませんでした。
抗癌剤治療に熱心な医者は、
イロイロな文献から情報を仕入れて、
抗癌剤の治療効果を高める努力をしていましたが、
それは、まったく教科書には書いてありませんでした。
最先端の実験的治療の文献だけを頼りに、
手探りの、さじ加減治療を進めていました。
それは、当時の標準的な治療では、
患者さんは長生きしないことを知っていたからです。
手術で傷つけれられた身体をさらに痛めつけることを
憚ったが故の、さじ加減治療を行っていました。
私がはじめて抗癌剤治療の現場を見た時、
抗癌剤治療を受けている患者さんは、
全員心電図のモニターを付けていて、
その心電図はナースステーションで、
常に監視されていました。
何故全員に心電図が必要なのか理解できませんでしたが、
全員の心拍数が異常に少ないことに気付き、
使っているクスリを調べたところ、
ベラパミールという心拍数を遅くする薬剤を全員に併用していました。
抗癌剤のガン細胞内濃度を高める作用があるとの文献に従っての治療でした。
残念ながら、
その治療には大きな効果は認められませんでしたが、
そんなに大量のベラパミールを人間に実際に使ったデータは、
当時ほとんどなかったらしく、
心電図データのほうを循環器の専門医が興味を持ち、
学会発表したようです。
話しはそれましたが、
手探り抗癌剤治療を進める指標は、
患者さんの全身状態、自覚症状でした。
当時抗癌剤治療を必要とされる患者さんでは、
ガンの存在による、
痛みなどの強い自覚症状を伴っていましたので、
その症状緩和のためには、
最大量の、
あるいはそれを超えるような量の抗癌剤を用いて
治療を行うこともしばしばでした。
しかし、当時は、
現在のように、
白血球を簡単に増やしてくれるクスリもありませんでしたので、
大量の抗癌剤を使うときには、
いつも、オッカナビックリでした。
検査室から
「本日の○○さんの白血球が100です!」
などの電話があると、
心臓が絞めつけられる思いでした。
幸、死亡事故に遭うことありませんでした。
そのような患者さん本位の抗癌剤治療から、
徐々に現在の治療形態に移行していき、
10年前には、
外科医以外の医者が抗癌剤治療を行うことも多くなり、
現在の標準治療一辺倒の基礎が出来上がったような気がします。
もしもロボット医療が現実化したら、
医師の方々は治療の場で、いったい何を行うのですか?
ほとんどロボット治療になっている病院もあるように思います。
インターネットで医者に抗癌剤治療を指導しているような
ホームページを見ると、
身長と体重から算出した体表面積だけを指標にして、
忠実にそれに従わなければ、
「意味が無い」
と書かれています。
まさに、「抗癌剤治療医はロボットになれ!」
と指導してくれています。
「意味が無い」のは、
昨日も書いたとおり、
患者さんには、
延命効果は無いという事実を隠し、
そのエビデンスは無視して、
無数の人柱の上に築き上げた治療に、
やっと、ごく僅かといえども、
延命効果があるというエビデンスが出てきたのですから、
そのありがたいエビデンスを再現するには、
患者さんおよびガンの個性は、
完全に無視して、
身長と体重だけからでてくる体表面積だけを頼りに
治療を進めなければならない、
という意味だと、
私は理解しています。
私は、患者さんの個性を最優先にすることの方が、
「意味は有る」ように思っています。
ただし、ロボット治療で空いた時間を
論文書き、学会発表に回すことはできませんが・・・・
面白い質問をいただき、
時代の流れを振り返ることができました。
ありがとうございました。
以上 文責 梅澤 充



