たとえばアメリカではアバスチンやアービタックスといった腫瘍の増殖と関わる分子標的に対する薬剤でどうにかできないかと模索されているわけです。
たとえばアバスチンは大腸癌の治療と組み合わせると多少の奏効率の上昇がみられ、それにみあう以上に生存期間が延びるのです。(血管新生阻害自体で抗腫瘍効果を発揮しているわけではなさそうですが)積極的に理論に基づいて腫瘍の増殖を抑えようという発想です。
それに対し、抗癌剤の少量投与による増殖速度の抑制はその論理的背景が弱くすべての抗癌剤で同様に考えるのも難しいと思います。
したがって医学的な検証が必要なのです。活性リンパ球輸注療法の狙いの一つも免疫系を修飾する事により癌の増殖を抑えているようです。
休眠期以外の腫瘍細胞が免疫系に認識されるようです。(肝癌術後の再発予防のみ臨床試験で有意な結果があります)休眠療法の方法論としてはいろいろありますが、少量抗癌剤の休眠療法としての意義は未だ証明されていないので、毒物である抗癌剤の投与としては標準治療以外の方法は少なくとも臨床試験以外では医学倫理的には許容しがたい・・・という考え方が存在します。
ちょっと回りくどく難しくなりましたが・・
同じ理由で癌ではない方に抗癌剤を投与することは絶対に出来ません。抗癌剤は効果が見込まれて初めて投与が倫理的に許容される毒薬です。胃薬や高血圧などの薬物とは根本的にその安全性が異なります。
抗癌剤の少量投与による増殖速度の抑制はその論理的背景が弱くすべての抗癌剤で同様に考えるのも難しいと思います。したがって医学的な検証が必要なのです。
「論理的背景が弱くすべての抗癌剤で同様に考えるのも難しい」とお考えであれば、昨日も書きましたが、
ただこれはすべての抗癌剤・腫瘍系にエビデンスがあるわけではありません。
であれば、すべてを否定するのも、難しいですね。どの程度まで、少量の抗癌剤治療を容認されるのですか。
また、科学者として医学的な検証は重要でしょう。
それは、科学者の端くれとして重々理解しているつもりです。
しかし、そのために、どのくらいの時間がかかるのでしょうか。
匿名先生には、患者さんの時間を止めることができるのでしょうか。
検証をしている間、患者さんにお待ち頂くのでしょうか。
ガン細胞クンにも待ってくれるようにお願いするのでしょうか。
ガンという病気は、時間が経つとだんだん進行してくる病気だということをお忘れになられたのでしょうか。
また、現在、ガンを患っている患者さんが、医学的検証のある治療の、
その検証結果に満足されず、他の治療を希望したらどうするのですか。
多くの患者さんがそうであるように、
「立派なエビデンスどおりに死ぬことを拒否した場合」は、
匿名先生はどうなさるのでしょうか。
死ぬのは先生ではなく、患者さんなのです。
患者さんが、それを拒否しても、エビデンスのしっかりした標準治療以外はしてはいけないとお考えでしょうか。
少量抗癌剤の休眠療法としての意義は未だ証明されていないので、毒物である抗癌剤の投与としては標準治療以外の方法は少なくとも臨床試験以外では医学倫理的には許容しがたい・・・という考え方が存在します。
名前は忘れましたが、戦後の混乱期に、闇流通の食糧には一切手を出さず、政府から配給される食料以外は、一切口にせず、
法律を厳守した生活をされ餓死した、とっても立派な日本人がいます。
その偉人の考え方に良く似ていますね。
法を尊守される匿名先生ご自身、ご家族も、是非そうなさって下さい。
俗人の私には、とてもそんな立派なことはできません。
闇米でも何でも食べて飢えをしのぎたいと思います。急いで病院へ向かわなければならない時には、
平気でスピード違反を犯します。
私はそのような反社会的な人間です。
匿名先生のような模範的な人間ではありません。
癌ではない方に抗癌剤を投与することは絶対に出来ません。
抗癌剤であるメトトレキセートはリウマチ治療に使っていますよね。また、乳ガンでも良く使うサイクロフォスファマイド(エンドキサン)は、
もともとは、免疫抑制剤として開発されましたね。
最後に医療者側の言い訳になりますが、多くの医師が患者さんによくなってもらいたいと思っているのは事実だと思います。
だから他の専門の先生より夜遅くまで病院にいるし、最新の治療を取り入れようとがんばっているのです。
何よりも現状を悪くしているのは、命がけの癌の患者さんひとりひとりに対して割く時間が余りにない実情だと思います。
また社会的に癌の啓蒙が足らないのだと思います。時に抗癌剤治療が患者さんの最後の重要な時間を奪ってしまうことがあるのは事実です。
標準治療にせよそれ以外にせよ患者さんにやはり、治療の選択権はあるのだと思います。
ただし標準治療がある場合は他の治療は必ず臨床試験並みによくその結果を吟味しないといけないのだと思います。
付け足しですが乳癌などでは治療の幅はかなり広いので、もし副作用が強ければ次に考えられる治療があるのでその辺も・・ 主治医から説明があるといいのですが・・・
平岩正樹先生と高橋豊先生の対談を下記のページで見ることができます。
http://dot.eee.ne.jp/drhiraiwa/special03.htm
医者の本態の全部とは言いませんが、かなり鋭くえぐっていると思います。
「時間に余裕が無い」ことは事実ですね。
しかし、工夫によりかなり改善はされますよ。
また、「社会的に癌の啓蒙が足らない」ことも大きな問題だと思います。
ただ、啓蒙といっても、標準的抗癌剤治療が最善の治療であるかのような、
偏向報道をする某放送局のような存在も大きな問題だと思います。
また、インフォームドコンセントを推奨している某がんセンターなどで、
患者さんに、その患者さんのガンに対して正確な情報を提示しないことも大問題だと思っています。
「標準治療にせよそれ以外にせよ患者さんにやはり、治療の選択権はあるのだと思います。」そんなことは、当たり前ではないでしょうか。
何故、医者に、他人である患者さんの治療法を選択する権利があるのでしょうか。
患者さんはクライアントであり、その要求を満たすのが医者の役割だと思います。
医者には、標準治療以外には、エビデンスが無いこと、
また、標準治療のエビデンスとは如何なるものであるかの、
正確な情報を提示する義務があり、
その提示された正確な情報をもとに、
患者さんはご自身の治療法を選択すればイイだけではないでしょうか。
正確な情報を知っても、患者さんが選択に迷う場合だけ、
医者の意見の入り込む余地はあると思います。
ただし標準治療がある場合は他の治療は必ず臨床試験並みによくその結果を吟味しないといけないのだと思います。
吟味している間に、標準治療という配給米だけしか食べられず、飢え死にしたいとは、誰も考えないと思います。
そう考えるのは、法律遵守の匿名先生くらいではないですか。
本日は、再度頂いた匿名先生からのコメントに対する私の考えを書きました。
匿名先生のコメントに対しては、
当ブログの読者からもイロイロなコメントがあるようです。
このブログは患者さん向けの内容です。
医者からコメントを頂く時は必ず、所属施設名も入れて実名でお願いします。
実名の無い場合は、すべて即刻削除します。
匿名先生のコメントに対し、まともに受けあってしまった私が悪かったと思います。
多くの読者に不愉快な思いをかけてしまったことをお詫びします。
申し訳ありませんでした。
医者であり、何かご意見があるときは私宛に直接メールをお送り下さい。
よろしくお願い致します。
以上 文責 梅澤 充
追記
4月18日の「最大耐用量と最大継続可能量」の最後の「追記」で書いた、悪性リンパ腫のことで、
ある患者さんに大変大きな迷惑をかけてしまったようです。
お詫びいたします。
「専門医の治療により悪性リンパ腫は治る病気」と
書いたことが大きな誤解を生んでしまったようです。
正確には「専門医の的確な治療により完治することも期待できる病気です。」
「その確率は、専門医以外の医者が治療するより、
専門医が診るほうがはるかに高くなります。」と書くべきだったのかも知れません。
治ることなく亡くなられてゆく患者さんがおられることは、
重々承知しております。
悪性リンパ腫の場合、他の固形ガンと比較して、
根治の確率がまったく違うという意味で書きました。
治るはずの白血病で最近も有名な歌手(私は知りませんでしたが…)が
亡くなられたことは、記憶に新しいところです。
治る患者さんも治らない患者さんも存在していることは、
腫瘍内科の専門医でなくとも、常識として知っています。
誤解を招くような書き方であったようですので、
深くお詫び申し上げます。
申し訳ありませんでした。



