4月30日の「ホメオパシー」
5月2日の「誤解?小さな勘違い」
で書きましたが、
代替療法では、「ダメでもともと」という気持ちでそれを受けるのであれば、
そして、その治療が、身体に害を及ぼさないのであれば、
まったく悪い治療だとは思いません。
「当たれば見っけ物」です。
現在の私の抗癌剤治療も、標準的抗癌剤治療を至高の治療とされている
偉い腫瘍内科の先生からみると、
代替療法と言われるかも知れません。
しかし私はそうは思っていません。
PSが良好で、自覚症状の乏しい多くの患者さんでは、
腫瘍の縮小効果は、はじめから期待していないのですから
奏効率は低いことは事実です。
奏効率など、ゼロ%でよいと考えていますので当然です。
(PSについては1月18日の「緩和医療」で書きました)
しかし、持続時間は数ヶ月から数年とバラバラですが、
80%以上の患者さんで、腫瘍の増大は抑制されます。
けっして代替療法だとは考えていません。
「標準的ではない抗癌剤治療」だと考えています。
しかし、世間一般に言われる代替療法以外で
「ダメでもともと」と考える治療法(?)を併用することはしばしばあります。
5月11日の「強いクスリ、弱いクスリ」でも、
チョッと書いた、
COX 2 阻害作用を利用する消炎鎮痛剤や、胃薬などです。
「伝兵衛さん」といわれる方から、5月12日にコメントを頂きましたが、
消炎鎮痛剤は、ご指摘のセレブレックスというクスリを使っていた時期もありますが、
その薬剤は輸入しなければ入手できず、そのため高額になります。
また、セレブレックスで蕁麻疹が出た患者さんがおられたため、
日本で使われているCOX2の選択性の一番高い消炎鎮痛剤に変えてみました。
もともと消炎鎮痛剤による制ガン効果は、ガンを縮小させるというものではありませんので、効果がどれだけあったのか、無かったのか判りません。
その患者さんは膵ガンで、残念ながらその後亡くなられましたが、
2年間以上自宅で普通の生活をされ、通院治療を続けました。
多少の効果はあったものと思います。
その後セレブレックスはまったく使わず日本の消炎鎮痛剤を使っています。
また、伝兵衛さんから質問がありましたが、
「ガスターテン」で有名な、H2ブロッカーという胃酸分泌抑制剤の元祖である
シメチジンには、免疫活性を高める効果が知られています。
最近人間での効果も実証されましたので、
それも、「ダメもと」で使っています。
リンパ球のNK活性という、腫瘍免疫を向上させます。
また、もう一つ胃のクスリですが、
プログロマイドという、古〜いクスリがあります。
人間の身体は、胃袋の出口の方の幽門部といわれる場所の粘膜細胞から
ガストリンというホルモンが分泌されています。
ガストリンは胃酸の分泌を促進させるホルモンですが、
同時に食道から胃、小腸、大腸、直腸の粘膜に対して
粘膜細胞の増殖促進効果があります。
大腸ガン細胞は、概ね三分の一の確率で、
そのガストリンに反応するレセプターが存在しています。
これはある製薬会社の研究所を借りて、私たちの教室で調べた結果です。
プログロマイドは、胃酸分泌細胞(壁細胞)のガストリンレセプターを阻害して、
胃酸の分泌を抑制することで効果を発揮する胃薬です。
ガン細胞にガストリンに対するレセプターが存在するということは、
プログロマイドでそのレセプターが阻害されれば、
ガン細胞の増殖が抑制される可能性があります。
古い論文ですが、末期の大腸ガン患者さんを
プログロマイドを飲んだ群と、飲まない群との2群に分け、
生存期間を調べたところ飲んだ群の方が長生きしたというデータもあります。
三分の二の大腸ガンの患者さんでは、レセプターを持っていませんから、
まったく効果は期待できません。
レセプターの有無は、簡単には検査できません。
しかし、このクスリも副作用はほとんど見られません。
そして、古いクスリですのでとても廉価です。
一日薬価60円(本人負担20円)程度です。
十分に「ダメもと」の資格はあると考えています。
しかし、このプログロマイドとシメチジンを考えるとき、
ガンを背負った患者さん、一人の人間を診ていくことの難しさを感じます。
人間の身体は、何かを押さえ込もうとすると、
必ずそれに反発する動きが起こります。
例えば、つい最近、乳ガンに対する新しいホルモン剤が認可されましたが、
その作用機序は、アロマターゼ阻害作用といって
乳ガン細胞中のアロマターゼの阻害作用の方が重要であるとの考えも有りますが、
一般的には、閉経後の乳ガン患者さんにおいて、
脂肪細胞中のアロマターゼの働きで
女性ホルモンが作られることを抑制することにより、
乳ガン細胞の増殖を抑制すると考えられています。
そのような薬剤は古くから使われていますが、
かつてファドロゾールという古い作用の弱いアロマターゼ阻害剤で、
女性ホルモンの動きを見たことがあります。
閉経直後の女性の場合、
女性ホルモンを減少させるどころか、
大きく増加させてしまう患者さんを何例も見ました。
その理由は恐らく、閉経直後の女性では、卵巣機能はまだ残存していますから、
脂肪細胞で合成される女性ホルモンが抑制されたことにより、
その代償に、残っている卵巣機能が活発になったものと考えられます。
閉経直後の患者さんだとまったく逆効果になる可能性があります。
新しく出てきたアロマターゼ阻害剤は、
その阻害効果が、他の薬剤より大きいことがウリですから、
閉経直後の患者さんの場合、逆に心配になります。
一方、シメチジンは胃酸を抑制します。
抑制されればそれに反発します。
人間の身体は抑制された胃酸を元のとおりに戻そうとして、
ガストリンの分泌を増大させます・・・
この事実は、随分昔に動物実験および、
十二指腸潰瘍の患者さんで確認してあります。
大腸ガン細胞にガストリンレセプターが存在していれば、
シメチジンは、免疫活性を高める代償として、
大腸ガン細胞の分裂を促進させる可能性が出てきます。
プログロマイドはそのガストリンの作用を抑制してくれる・・・
大腸ガンの患者さんで、胃の状態が不良で、
H2ブロッカーや、PPI という胃酸分泌抑制剤が処方されている患者さんは、
少なくないと思います。
「ガンを背負っている」というだけで精神的なストレスは計り知れません。
そのような場合、胃酸分泌は亢進して、胃の状態を悪化させます。
そのとき制酸剤が処方されます。
それは、ガストリン分泌を促進します・・・
プログロマイドを使ってくれる医者はあまりいないと思います。
せめて制酸剤の処方を受ける時は、シメチジンにしてもらった方が無難かも知れません。
または、ガストリン分泌促進作用が弱いとされる、ラフチジンやラベプラゾール
などでも良いかも知れません。
「ダメもと」も意外な落とし穴がある場合もあります。
注意して「当たれば見っけ物」をゲットして下さい。
以上 文責 梅澤 充
5月2日の「誤解?小さな勘違い」
で書きましたが、
代替療法では、「ダメでもともと」という気持ちでそれを受けるのであれば、
そして、その治療が、身体に害を及ぼさないのであれば、
まったく悪い治療だとは思いません。
「当たれば見っけ物」です。
現在の私の抗癌剤治療も、標準的抗癌剤治療を至高の治療とされている
偉い腫瘍内科の先生からみると、
代替療法と言われるかも知れません。
しかし私はそうは思っていません。
PSが良好で、自覚症状の乏しい多くの患者さんでは、
腫瘍の縮小効果は、はじめから期待していないのですから
奏効率は低いことは事実です。
奏効率など、ゼロ%でよいと考えていますので当然です。
(PSについては1月18日の「緩和医療」で書きました)
しかし、持続時間は数ヶ月から数年とバラバラですが、
80%以上の患者さんで、腫瘍の増大は抑制されます。
けっして代替療法だとは考えていません。
「標準的ではない抗癌剤治療」だと考えています。
しかし、世間一般に言われる代替療法以外で
「ダメでもともと」と考える治療法(?)を併用することはしばしばあります。
5月11日の「強いクスリ、弱いクスリ」でも、
チョッと書いた、
COX 2 阻害作用を利用する消炎鎮痛剤や、胃薬などです。
「伝兵衛さん」といわれる方から、5月12日にコメントを頂きましたが、
消炎鎮痛剤は、ご指摘のセレブレックスというクスリを使っていた時期もありますが、
その薬剤は輸入しなければ入手できず、そのため高額になります。
また、セレブレックスで蕁麻疹が出た患者さんがおられたため、
日本で使われているCOX2の選択性の一番高い消炎鎮痛剤に変えてみました。
もともと消炎鎮痛剤による制ガン効果は、ガンを縮小させるというものではありませんので、効果がどれだけあったのか、無かったのか判りません。
その患者さんは膵ガンで、残念ながらその後亡くなられましたが、
2年間以上自宅で普通の生活をされ、通院治療を続けました。
多少の効果はあったものと思います。
その後セレブレックスはまったく使わず日本の消炎鎮痛剤を使っています。
また、伝兵衛さんから質問がありましたが、
「ガスターテン」で有名な、H2ブロッカーという胃酸分泌抑制剤の元祖である
シメチジンには、免疫活性を高める効果が知られています。
最近人間での効果も実証されましたので、
それも、「ダメもと」で使っています。
リンパ球のNK活性という、腫瘍免疫を向上させます。
また、もう一つ胃のクスリですが、
プログロマイドという、古〜いクスリがあります。
人間の身体は、胃袋の出口の方の幽門部といわれる場所の粘膜細胞から
ガストリンというホルモンが分泌されています。
ガストリンは胃酸の分泌を促進させるホルモンですが、
同時に食道から胃、小腸、大腸、直腸の粘膜に対して
粘膜細胞の増殖促進効果があります。
大腸ガン細胞は、概ね三分の一の確率で、
そのガストリンに反応するレセプターが存在しています。
これはある製薬会社の研究所を借りて、私たちの教室で調べた結果です。
プログロマイドは、胃酸分泌細胞(壁細胞)のガストリンレセプターを阻害して、
胃酸の分泌を抑制することで効果を発揮する胃薬です。
ガン細胞にガストリンに対するレセプターが存在するということは、
プログロマイドでそのレセプターが阻害されれば、
ガン細胞の増殖が抑制される可能性があります。
古い論文ですが、末期の大腸ガン患者さんを
プログロマイドを飲んだ群と、飲まない群との2群に分け、
生存期間を調べたところ飲んだ群の方が長生きしたというデータもあります。
三分の二の大腸ガンの患者さんでは、レセプターを持っていませんから、
まったく効果は期待できません。
レセプターの有無は、簡単には検査できません。
しかし、このクスリも副作用はほとんど見られません。
そして、古いクスリですのでとても廉価です。
一日薬価60円(本人負担20円)程度です。
十分に「ダメもと」の資格はあると考えています。
しかし、このプログロマイドとシメチジンを考えるとき、
ガンを背負った患者さん、一人の人間を診ていくことの難しさを感じます。
人間の身体は、何かを押さえ込もうとすると、
必ずそれに反発する動きが起こります。
例えば、つい最近、乳ガンに対する新しいホルモン剤が認可されましたが、
その作用機序は、アロマターゼ阻害作用といって
乳ガン細胞中のアロマターゼの阻害作用の方が重要であるとの考えも有りますが、
一般的には、閉経後の乳ガン患者さんにおいて、
脂肪細胞中のアロマターゼの働きで
女性ホルモンが作られることを抑制することにより、
乳ガン細胞の増殖を抑制すると考えられています。
そのような薬剤は古くから使われていますが、
かつてファドロゾールという古い作用の弱いアロマターゼ阻害剤で、
女性ホルモンの動きを見たことがあります。
閉経直後の女性の場合、
女性ホルモンを減少させるどころか、
大きく増加させてしまう患者さんを何例も見ました。
その理由は恐らく、閉経直後の女性では、卵巣機能はまだ残存していますから、
脂肪細胞で合成される女性ホルモンが抑制されたことにより、
その代償に、残っている卵巣機能が活発になったものと考えられます。
閉経直後の患者さんだとまったく逆効果になる可能性があります。
新しく出てきたアロマターゼ阻害剤は、
その阻害効果が、他の薬剤より大きいことがウリですから、
閉経直後の患者さんの場合、逆に心配になります。
一方、シメチジンは胃酸を抑制します。
抑制されればそれに反発します。
人間の身体は抑制された胃酸を元のとおりに戻そうとして、
ガストリンの分泌を増大させます・・・
この事実は、随分昔に動物実験および、
十二指腸潰瘍の患者さんで確認してあります。
大腸ガン細胞にガストリンレセプターが存在していれば、
シメチジンは、免疫活性を高める代償として、
大腸ガン細胞の分裂を促進させる可能性が出てきます。
プログロマイドはそのガストリンの作用を抑制してくれる・・・
大腸ガンの患者さんで、胃の状態が不良で、
H2ブロッカーや、PPI という胃酸分泌抑制剤が処方されている患者さんは、
少なくないと思います。
「ガンを背負っている」というだけで精神的なストレスは計り知れません。
そのような場合、胃酸分泌は亢進して、胃の状態を悪化させます。
そのとき制酸剤が処方されます。
それは、ガストリン分泌を促進します・・・
プログロマイドを使ってくれる医者はあまりいないと思います。
せめて制酸剤の処方を受ける時は、シメチジンにしてもらった方が無難かも知れません。
または、ガストリン分泌促進作用が弱いとされる、ラフチジンやラベプラゾール
などでも良いかも知れません。
「ダメもと」も意外な落とし穴がある場合もあります。
注意して「当たれば見っけ物」をゲットして下さい。
以上 文責 梅澤 充



