昨日「ダメでもともと」を書きましたが、
「元祖ダメもと」を書くのを忘れました。
しかし、これは、値段を考えると「ダメもと」と言えるか否か疑問もありますが、
3月5日の「効かない抗癌剤」(2)
3月6日の「ガン治療費、高い?安い?」
でも書いたクレスチンです。
クレスチンについては、
3月5日の「効かない抗癌剤」(2)でも書きました。
クレスチンの現在の薬価は、一月あたり5万円以上します。
患者さんの負担はその3割です。
「ダメもと」と言えるか否かは、患者さんにしか判断できません。
現在でも、「ダメもと」を納得してくださっている患者さんに使っています。
そして、「当たれば見っけ物」を得ている患者さんも少なくありません。
例えば、大腸ガンの肝臓転移、肺転移、リンパ節転移をきたしたお二人の患者さんで、
TS-1との併用で、一人は腫瘍マーカーの減少、もう一人は不変の状態が続いています。
昨日書いた廉価な「ダメもと」と、
高価なクレスチンの併用です。
専門家は「TS-1の効果だ」と言われると思います。
しかし、お一人は、一日40mgもう一人は25mgと45mgを毎日交互に飲むだけです。
「標準的」に考えるとこの非常識な量では、効果は得られないと思います。
後者の方は、「朝TS-1を飲むと食事がまずくなる」とのことで、
夜一回だけ飲んでもらいましたが、
「連日40mgだとやはり食欲が落ちる。」
そこで、苦肉の策で25mgと45mgの毎晩の交互内服に落ち着きました。
この量にしたところ副作用は無くなりました。
毎晩25mgだけでは増大傾向にあった腫瘍マーカーも、
平均35mgと言うビミョウな量で、増加が止まりました。
お二人とも、この量では、副作用は出ていませんので、
効果が無くなるまで使い続けられます。
もし、「効果が無くなる」と言うより、ガンの増大が認められるようになれば、
このTS-1の上に、イリノテカンの少量頻回点滴などを被せることも可能です。
その後には、ロイコボリンやオキザリプラチンなどが待っていますし、
それらだけでは、抑えられなくなる頃には、
アバスチンという、現在は輸入でしか使えない高価な薬剤も、
日本での保険適応も叶っていると思います。
「効果が無くなる、と言うよりガンの増大が・・・」
と書いたのは、「ガンが増大した」ことをもって、「効果が無い」とは、
必ずしも言えないからです。
本当に「効果が無い」のかも知れませんが、
「効果が十分ではない」のかも知れません。
標準的抗癌剤治療のように、極量の抗癌剤を使って、
身体に大きなダメージを与える治療では、
たとえガンの増大が止まっても、
腫瘍の縮小効果が出なければ、
「効果が無い」と判断しなければなりません。
身体が受けたマイナス分だけは、ガンに縮小してもらわなければ困ります。
しかし、身体にダメージを与えない治療であれば、
仮に、腫瘍の増大傾向が認められても、
抗癌剤の増量もできますし、
その上に他の治療を被せることも可能であり、
必ずしも「効果が無い」と判断して、
その治療を中止する必要はありません。
また、肺の小細胞ガンで、UFTとクレスチンさらに健康食品だけで、
4年間以上お元気で、病態に変化を見ない患者さんもいます。
数ヶ月前から、腫瘍マーカーに増大傾向が見られていますので、
UFT300mgを2週内服2週休薬から、
UFTの量を400mg連日20日間内服10日間休薬にしています。
変更後一月で増加を続けた腫瘍マーカーは、半減しました。
単なる、私の感触ですが、肺の小細胞ガンに対して、
クレスチン、UFTの組み合わせは、有効な例が多いように思います。
ガンとの共存が保たれているのは、この患者さんだけではありません。
UFTの話が出ましたので、ついでに書くと、
UFTも「ダメもとのようなクスリ」だと思っています。
勿論、UFTには、
3月4日の「効かない抗癌剤」
4月28日の「“効かない抗癌剤”に対するコメントへの回答」
で書いたように、科学的にその治療効果は証明されています。
しかし、再発ガンや、切除不能のガン患者さんにとって、
はじめに、ダメもとで、少ない量から試してみても悪くは無いと思います。
但し、頻回に検査を行い、効果が見られなければ、
即座に次の治療に変更する準備をしておかなければなりません。
UFTに関して、隠れコメントで、「UFTとフルツロンとの違いは何だ」という質問を
頂いています。
基本的には、UFTと同様の考え方で私は使っています。
データとしても、
進行大腸ガン、胃ガンおよび乳ガンの手術後の補助抗癌剤治療で、
生存期間の延長を認めております。
しかし、両者間で作用機序は少々異なっています。
UFTは血液中の5-FUが腫瘍細胞に直接作用します。
一方フルツロンは、血液中では5-FUの前駆物質の状態で存在し、
腫瘍細胞に入り込み、はじめて5-FUに変換され抗腫瘍効果を発揮します。
その5-FUに変換する酵素はピンパーゼといいます。
したがってガン細胞にそのピンパーゼがなければフルツロンの効果は期待できません。
ピンパーゼの活性を向上させる目的で、
サイクロフォスファマイドの内服を併用したりします。
また、ピンパーゼは小腸粘膜細胞にもたくさん存在しますので、
小腸粘膜を傷害し、下痢という副作用が高頻度に発生します。
フルツロンでも、「見っけ物」はあります。
肺転移、肝転移を伴う大腸ガンに対し、
大腸切除だけの手術を行い、
その後フルツロンだけの内服で、
2年以上増悪無しで経過し、
悪化傾向が見られはじめて来院した患者さんが2名います。
一人はちょうど2年、もう一人は2年半の間、
フルツロンだけで、ガンとの同居状態が得られていました。
お二人ともその期間、ほとんど副作用は見られなかったようです。
このようなケースはけっして頻度の高いものではないのかも知れません。
しかし、大腸ガンの標準的抗癌剤治療では、
副作用に苦しめられ、その上入院まで必要として、
生存期間中央値が、20ヶ月程度であることを考えれば、
先ず、はじめにフルツロンやUFTで「当たるか否か」だけを確認することは、
まったく無駄ではないと思います。
UFTやフルツロンも副作用は軽微ですから、そのような薬剤で、
身体に大きな害を与えることなく、時間稼ぎができれば、
たとえそのクスリが効かなくなってきても、
その後にさまざまな治療を構築していくことができます。
最後に、クレスチンと並んで、
効かないクスリの代表選手であるレンチナンも、
「ダメもと」で頻繁に使っています。
レンチナンは、シイタケからの抽出物です。
胃ガンにしか健康保険の適応はありませんが、
抗癌剤治療と併用することで延命効果が確認されています。
ガン治療の現場には、「ダメもと」治療がたくさんあります。
どれも、身体的、経済的に害がないのであれば、
また、標準的抗癌剤治療のエビデンスが、
今までどおりの貧弱なものであり続けるのであれば、
是非試すべき治療だと思います。
以上 文責 梅澤 充
「元祖ダメもと」を書くのを忘れました。
しかし、これは、値段を考えると「ダメもと」と言えるか否か疑問もありますが、
3月5日の「効かない抗癌剤」(2)
3月6日の「ガン治療費、高い?安い?」
でも書いたクレスチンです。
クレスチンについては、
3月5日の「効かない抗癌剤」(2)でも書きました。
クレスチンの現在の薬価は、一月あたり5万円以上します。
患者さんの負担はその3割です。
「ダメもと」と言えるか否かは、患者さんにしか判断できません。
現在でも、「ダメもと」を納得してくださっている患者さんに使っています。
そして、「当たれば見っけ物」を得ている患者さんも少なくありません。
例えば、大腸ガンの肝臓転移、肺転移、リンパ節転移をきたしたお二人の患者さんで、
TS-1との併用で、一人は腫瘍マーカーの減少、もう一人は不変の状態が続いています。
昨日書いた廉価な「ダメもと」と、
高価なクレスチンの併用です。
専門家は「TS-1の効果だ」と言われると思います。
しかし、お一人は、一日40mgもう一人は25mgと45mgを毎日交互に飲むだけです。
「標準的」に考えるとこの非常識な量では、効果は得られないと思います。
後者の方は、「朝TS-1を飲むと食事がまずくなる」とのことで、
夜一回だけ飲んでもらいましたが、
「連日40mgだとやはり食欲が落ちる。」
そこで、苦肉の策で25mgと45mgの毎晩の交互内服に落ち着きました。
この量にしたところ副作用は無くなりました。
毎晩25mgだけでは増大傾向にあった腫瘍マーカーも、
平均35mgと言うビミョウな量で、増加が止まりました。
お二人とも、この量では、副作用は出ていませんので、
効果が無くなるまで使い続けられます。
もし、「効果が無くなる」と言うより、ガンの増大が認められるようになれば、
このTS-1の上に、イリノテカンの少量頻回点滴などを被せることも可能です。
その後には、ロイコボリンやオキザリプラチンなどが待っていますし、
それらだけでは、抑えられなくなる頃には、
アバスチンという、現在は輸入でしか使えない高価な薬剤も、
日本での保険適応も叶っていると思います。
「効果が無くなる、と言うよりガンの増大が・・・」
と書いたのは、「ガンが増大した」ことをもって、「効果が無い」とは、
必ずしも言えないからです。
本当に「効果が無い」のかも知れませんが、
「効果が十分ではない」のかも知れません。
標準的抗癌剤治療のように、極量の抗癌剤を使って、
身体に大きなダメージを与える治療では、
たとえガンの増大が止まっても、
腫瘍の縮小効果が出なければ、
「効果が無い」と判断しなければなりません。
身体が受けたマイナス分だけは、ガンに縮小してもらわなければ困ります。
しかし、身体にダメージを与えない治療であれば、
仮に、腫瘍の増大傾向が認められても、
抗癌剤の増量もできますし、
その上に他の治療を被せることも可能であり、
必ずしも「効果が無い」と判断して、
その治療を中止する必要はありません。
また、肺の小細胞ガンで、UFTとクレスチンさらに健康食品だけで、
4年間以上お元気で、病態に変化を見ない患者さんもいます。
数ヶ月前から、腫瘍マーカーに増大傾向が見られていますので、
UFT300mgを2週内服2週休薬から、
UFTの量を400mg連日20日間内服10日間休薬にしています。
変更後一月で増加を続けた腫瘍マーカーは、半減しました。
単なる、私の感触ですが、肺の小細胞ガンに対して、
クレスチン、UFTの組み合わせは、有効な例が多いように思います。
ガンとの共存が保たれているのは、この患者さんだけではありません。
UFTの話が出ましたので、ついでに書くと、
UFTも「ダメもとのようなクスリ」だと思っています。
勿論、UFTには、
3月4日の「効かない抗癌剤」
4月28日の「“効かない抗癌剤”に対するコメントへの回答」
で書いたように、科学的にその治療効果は証明されています。
しかし、再発ガンや、切除不能のガン患者さんにとって、
はじめに、ダメもとで、少ない量から試してみても悪くは無いと思います。
但し、頻回に検査を行い、効果が見られなければ、
即座に次の治療に変更する準備をしておかなければなりません。
UFTに関して、隠れコメントで、「UFTとフルツロンとの違いは何だ」という質問を
頂いています。
基本的には、UFTと同様の考え方で私は使っています。
データとしても、
進行大腸ガン、胃ガンおよび乳ガンの手術後の補助抗癌剤治療で、
生存期間の延長を認めております。
しかし、両者間で作用機序は少々異なっています。
UFTは血液中の5-FUが腫瘍細胞に直接作用します。
一方フルツロンは、血液中では5-FUの前駆物質の状態で存在し、
腫瘍細胞に入り込み、はじめて5-FUに変換され抗腫瘍効果を発揮します。
その5-FUに変換する酵素はピンパーゼといいます。
したがってガン細胞にそのピンパーゼがなければフルツロンの効果は期待できません。
ピンパーゼの活性を向上させる目的で、
サイクロフォスファマイドの内服を併用したりします。
また、ピンパーゼは小腸粘膜細胞にもたくさん存在しますので、
小腸粘膜を傷害し、下痢という副作用が高頻度に発生します。
フルツロンでも、「見っけ物」はあります。
肺転移、肝転移を伴う大腸ガンに対し、
大腸切除だけの手術を行い、
その後フルツロンだけの内服で、
2年以上増悪無しで経過し、
悪化傾向が見られはじめて来院した患者さんが2名います。
一人はちょうど2年、もう一人は2年半の間、
フルツロンだけで、ガンとの同居状態が得られていました。
お二人ともその期間、ほとんど副作用は見られなかったようです。
このようなケースはけっして頻度の高いものではないのかも知れません。
しかし、大腸ガンの標準的抗癌剤治療では、
副作用に苦しめられ、その上入院まで必要として、
生存期間中央値が、20ヶ月程度であることを考えれば、
先ず、はじめにフルツロンやUFTで「当たるか否か」だけを確認することは、
まったく無駄ではないと思います。
UFTやフルツロンも副作用は軽微ですから、そのような薬剤で、
身体に大きな害を与えることなく、時間稼ぎができれば、
たとえそのクスリが効かなくなってきても、
その後にさまざまな治療を構築していくことができます。
最後に、クレスチンと並んで、
効かないクスリの代表選手であるレンチナンも、
「ダメもと」で頻繁に使っています。
レンチナンは、シイタケからの抽出物です。
胃ガンにしか健康保険の適応はありませんが、
抗癌剤治療と併用することで延命効果が確認されています。
ガン治療の現場には、「ダメもと」治療がたくさんあります。
どれも、身体的、経済的に害がないのであれば、
また、標準的抗癌剤治療のエビデンスが、
今までどおりの貧弱なものであり続けるのであれば、
是非試すべき治療だと思います。
以上 文責 梅澤 充