手術後の再発予防のために行われる抗癌剤治療を
術後補助抗癌剤治療と言います。
現在、その術後補助抗癌剤治療を巡って、
相反する考えのお二人から相談を受けています。
お二人は、ガンの種類は違いますが、
二人とも根治手術後です。
お一人は、すでに術後の補助治療としての標準的抗癌剤治療を受けられています。
しかし、
「それだけでは不安だから、もう少し抗癌剤治療をして欲しい。」
と言われています。
もう一人の患者さんは、
「術後の標準的な補助抗癌剤治療を勧められているけれど、
私は、クスリに弱いから、抗癌剤の量を少なくして、
補助治療をして欲しい。」と言われます。
手術後の再発予防のための標準的抗癌剤治療は、
4月25日の「標準的抗癌剤治療も有効です」でも書いたとおり、エビデンスから考えると、
それを受ける利益はけっして小さくはありません。
副作用に勝る利益が得られると思います。
しかし、それは私の価値観であり、
数字の上からお勧めできるというだけのものです。
当然のことですが、最終的には、
昨日も、また
5月2日の「誤解?小さな勘違い」
5月3日の「医者の一人相撲?」
でも書いたとおり、その治療が得であるのか否かを決めるのは、
医者ではなく、それを受ける患者さんの価値観です。
術後の補助抗癌剤治療はエビデンスにより、
数字の上だけでその有用性が証明されているにすぎません。
それに伴う副作用については数字では表せません。
しかし、標準的な術後補助抗癌剤治療を終えた後に、
さらに再発を予防するエビデンスのある抗癌剤治療は存在しません。
また、使われる抗癌剤の量を減らした場合の術後補助抗癌剤治療にも、
再発予防効果についてのエビデンスはありません。
当ブログでは、エビデンスについて、
「真に患者さんのためになる“証拠”ではない。」
という内容のことを随分と書いてきましたが、
それは、再発ガン、切除不能ガン、
すなわちほとんど根治不能と考えられるガンに対する
抗癌剤治療のエビデンスです。
そのエビデンスはすべての患者さんに福音をもたらすものとは思われません。
(勿論それも私の価値観での判断ですが・・・)
ところが、術後再発予防のためのエビデンスは、
それがなければ治療の道標がありません。
再発ガン、切除不能ガンの治療に対する道標は、
幾らでもあります。
その時々の患者さんの全身状態であり、副作用の程度であり、
検査所見であり、
すべてが治療の道標になります。
根治不能のガンに対する治療のエビデンスなどは、
治療方針を考えるときの一つの目安に過ぎないと思っています。
しかし、再発予防の抗癌剤治療では訳が違います。
再発予防のための抗癌剤治療とは、
将来の再発に備えるものです、
したがってその治療を開始する時には、
その患者さんの体内にガン細胞が存在するか否かすら不明なのです。
もし、ガン細胞が存在しないのであれば、抗癌剤治療はまったくの無駄です。
しかし、何十人何百人という集団になった場合、
「統計的にその中に何十人ガン細胞を持っている患者さんがいる」
ということが判明しています。
したがって、その当人がガン細胞を持っているか否か不明でも、
統計確率に則り治療を開始するものです。
その結果統計確率どおりの成果が得られます。
そこには、患者さん個々の個性などはまったく無視されます。
しかしそれは仕方が無いことです。
戦う相手が、その治療開始時点ではまったく見えない存在ですから。
3月4日の「効かない抗癌剤」
3月5日の「効かない抗癌剤」(2)
4月28日の「“効かない抗癌剤”へのコメントに対する回答」
などで何回も書いたとおり、
術後の再発予防の為の抗癌剤治療として、
多くの外科医は昔から、UFTを「経験的に再発予防効果があると」信じて、
手術後に何年間も患者さんに処方していました。
しかし、それを処方した根拠は「外科医の勘」だけでした。
それを見て、腫瘍内科医は、UFTを、外科医を散々酷評しました。
しかし、最近になりUFTに再発予防のエビデンスがあることが確認され、
威勢のよかったその声は、すっかり影を潜めました。
一方、エビデンスが極めてしっかりしている乳ガンの再発予防の抗癌剤治療も、
そのエビデンスが確認されたのは数年前のことです。
20年以上も前から行なわれていた術後補助抗癌剤治療は、
まったくエビデンスの無い状態で行なわれていました。
そのエビデンスの無い時代のデータが積み重なり解析された結果、
しっかりしたエビデンスがあることが判明しました。
UFTも乳ガンもたまたま、当たったから良かったのですが、
エビデンスの無い時代の予防的抗癌剤治療は、
ハズレることもあるはずです。
行き過ぎた予防的抗癌剤治療は、
抗癌剤の副作用によりむしろ寿命を縮めてしまう可能性すらあります。
したがって、早期ガンに対して予防的抗癌剤治療を行なうことはほとんどありません。
早期ガンとて再発の可能性はあります。
しかし、エビデンスが無い上、再発確率が低く、
むしろ抗癌剤の副作用の大きさの方が危惧されるからです。
エビデンスのある標準的抗癌剤治療よりも、
抗癌剤の量を減らした場合もエビデンスはありません。
もしかするとまったく効果が無いかも知れません。
理屈から考えれば、抗腫瘍効果が確認される量の抗癌剤治療であれば、
再発予防も期待できる可能性はあります。
しかし、エビデンスはありません。
再発予防抗癌剤治療はそれほどエビデンスが重要です。
再発予防の抗癌剤治療を受ける時には、
どの程度のエビデンスがある治療なのか主治医にしっかりと確認して、
十分に納得してから開始して下さい。
以上 文責 梅澤 充
術後補助抗癌剤治療と言います。
現在、その術後補助抗癌剤治療を巡って、
相反する考えのお二人から相談を受けています。
お二人は、ガンの種類は違いますが、
二人とも根治手術後です。
お一人は、すでに術後の補助治療としての標準的抗癌剤治療を受けられています。
しかし、
「それだけでは不安だから、もう少し抗癌剤治療をして欲しい。」
と言われています。
もう一人の患者さんは、
「術後の標準的な補助抗癌剤治療を勧められているけれど、
私は、クスリに弱いから、抗癌剤の量を少なくして、
補助治療をして欲しい。」と言われます。
手術後の再発予防のための標準的抗癌剤治療は、
4月25日の「標準的抗癌剤治療も有効です」でも書いたとおり、エビデンスから考えると、
それを受ける利益はけっして小さくはありません。
副作用に勝る利益が得られると思います。
しかし、それは私の価値観であり、
数字の上からお勧めできるというだけのものです。
当然のことですが、最終的には、
昨日も、また
5月2日の「誤解?小さな勘違い」
5月3日の「医者の一人相撲?」
でも書いたとおり、その治療が得であるのか否かを決めるのは、
医者ではなく、それを受ける患者さんの価値観です。
術後の補助抗癌剤治療はエビデンスにより、
数字の上だけでその有用性が証明されているにすぎません。
それに伴う副作用については数字では表せません。
しかし、標準的な術後補助抗癌剤治療を終えた後に、
さらに再発を予防するエビデンスのある抗癌剤治療は存在しません。
また、使われる抗癌剤の量を減らした場合の術後補助抗癌剤治療にも、
再発予防効果についてのエビデンスはありません。
当ブログでは、エビデンスについて、
「真に患者さんのためになる“証拠”ではない。」
という内容のことを随分と書いてきましたが、
それは、再発ガン、切除不能ガン、
すなわちほとんど根治不能と考えられるガンに対する
抗癌剤治療のエビデンスです。
そのエビデンスはすべての患者さんに福音をもたらすものとは思われません。
(勿論それも私の価値観での判断ですが・・・)
ところが、術後再発予防のためのエビデンスは、
それがなければ治療の道標がありません。
再発ガン、切除不能ガンの治療に対する道標は、
幾らでもあります。
その時々の患者さんの全身状態であり、副作用の程度であり、
検査所見であり、
すべてが治療の道標になります。
根治不能のガンに対する治療のエビデンスなどは、
治療方針を考えるときの一つの目安に過ぎないと思っています。
しかし、再発予防の抗癌剤治療では訳が違います。
再発予防のための抗癌剤治療とは、
将来の再発に備えるものです、
したがってその治療を開始する時には、
その患者さんの体内にガン細胞が存在するか否かすら不明なのです。
もし、ガン細胞が存在しないのであれば、抗癌剤治療はまったくの無駄です。
しかし、何十人何百人という集団になった場合、
「統計的にその中に何十人ガン細胞を持っている患者さんがいる」
ということが判明しています。
したがって、その当人がガン細胞を持っているか否か不明でも、
統計確率に則り治療を開始するものです。
その結果統計確率どおりの成果が得られます。
そこには、患者さん個々の個性などはまったく無視されます。
しかしそれは仕方が無いことです。
戦う相手が、その治療開始時点ではまったく見えない存在ですから。
3月4日の「効かない抗癌剤」
3月5日の「効かない抗癌剤」(2)
4月28日の「“効かない抗癌剤”へのコメントに対する回答」
などで何回も書いたとおり、
術後の再発予防の為の抗癌剤治療として、
多くの外科医は昔から、UFTを「経験的に再発予防効果があると」信じて、
手術後に何年間も患者さんに処方していました。
しかし、それを処方した根拠は「外科医の勘」だけでした。
それを見て、腫瘍内科医は、UFTを、外科医を散々酷評しました。
しかし、最近になりUFTに再発予防のエビデンスがあることが確認され、
威勢のよかったその声は、すっかり影を潜めました。
一方、エビデンスが極めてしっかりしている乳ガンの再発予防の抗癌剤治療も、
そのエビデンスが確認されたのは数年前のことです。
20年以上も前から行なわれていた術後補助抗癌剤治療は、
まったくエビデンスの無い状態で行なわれていました。
そのエビデンスの無い時代のデータが積み重なり解析された結果、
しっかりしたエビデンスがあることが判明しました。
UFTも乳ガンもたまたま、当たったから良かったのですが、
エビデンスの無い時代の予防的抗癌剤治療は、
ハズレることもあるはずです。
行き過ぎた予防的抗癌剤治療は、
抗癌剤の副作用によりむしろ寿命を縮めてしまう可能性すらあります。
したがって、早期ガンに対して予防的抗癌剤治療を行なうことはほとんどありません。
早期ガンとて再発の可能性はあります。
しかし、エビデンスが無い上、再発確率が低く、
むしろ抗癌剤の副作用の大きさの方が危惧されるからです。
エビデンスのある標準的抗癌剤治療よりも、
抗癌剤の量を減らした場合もエビデンスはありません。
もしかするとまったく効果が無いかも知れません。
理屈から考えれば、抗腫瘍効果が確認される量の抗癌剤治療であれば、
再発予防も期待できる可能性はあります。
しかし、エビデンスはありません。
再発予防抗癌剤治療はそれほどエビデンスが重要です。
再発予防の抗癌剤治療を受ける時には、
どの程度のエビデンスがある治療なのか主治医にしっかりと確認して、
十分に納得してから開始して下さい。
以上 文責 梅澤 充



