何故か不思議なことに、いろいろなご相談は、
同じような内容がいちどきに続きます。
最近は乳ガン術後の補助抗癌剤治療についてのご質問が重なりました。
その中で2件ほど、ほとんど同じようなことを言って来られた方がおられます。
お二方とも、乳ガンの術後補助抗癌剤治療の意味については、
一見ほぼ正確に理解されているように見えました。
4月25日の「標準的抗癌剤治療も有効です」
でも書いたとおり、術後の再発予防の補助抗癌剤治療は、
一般的な標準的抗癌剤治療とは大きく違い、
その目的は「無治療よりは○ヶ月長生きできる」という
極めて貧粗なエビデンスに根ざした延命治療ではなく、
再発予防、すなわち、根治を目指し、
それに対してしっかりとしたエビデンスがあるのですから、
その治療は受けた方が得だと思われます。
しかし、それは私の価値観であり、
人それぞれの価値観の相違により、
5月2日の「誤解?小さな勘違い」
5月3日の「医者の一人相撲?」
でも書いたとおり、
「その治療は損だ」と考える患者さんがいてもおかしくはありません。
再発ガン、切除不能ガンに対するエビデンスは、
前述のとおり、また当ブログでも散々書いてきたとおり、
本当に患者さんがその内容を知った上で、
そのエビデンスに則った治療を受けたいと考えるか否か、
大きな疑問があります。
根治切除ができないガンであれば、
目的は延命だけです。
その延命効果も、一般の何も知らない患者さんが想像するのとは、
大きくかけ離れた数字しか出されていないのが現実です。
何度も言うとおり、「○○ヶ月以内に半数の患者さんが死ぬ」という
貧弱なエビデンスに従って治療を行なうことは、
私は得なことだとは考えていません。
1月15日の「ガン医療の現場で使われる言葉 エビデンスEBM(Evidence)」
1月16日の「ガン医療の現場で使われる言葉 エビデンスEBM(Evidence)(2)」
3月19日の「肺ガンの抗癌剤治療・エビデンスの裏側」
でお示ししたとおり、
患者さんの個性を完全に無視し、
すべての患者さんを十把一絡げにして出されるのが、
現在の標準的抗癌剤治療のエビデンスです。
日本全国津々浦々に標準的抗癌剤治療という
「画一的な定食提供」に努力されている人々からは多くの非難を浴びますが、
私は、その様な虚しいエビデンスに囚われることなく、
目の前の一人ひとりの患者さんのガンが、
そして全身状態がどの様に変化していくかが、
唯一無二の治療指針であり、
それを確認しながらの治療を進めています。
残念ながらそこにはまだエビデンスはありません。
間も無く、金沢大学の高橋先生が中心になり、
立派なエビデンスが出てくるとは思いますが・・・
「標準的抗癌剤治療 = 定食」説は、
3月10日の「ある腫瘍内科医の勘違い」
3月11日の「ガン治療の地域格差」
で詳しく書きましたご参照下さい。
患者さんも、死ぬことが前提のような貧粗なエビデンスのある治療よりは、
むしろ、エビデンスの無い治療に賭けてみたいという気持ちは当然だと思います。
ところが、術後の再発予防の補助抗癌剤治療となると、話は別です。
先ず、治療の指針となるガンが何処にもいません。
手術後の病理検査所見から推測し、
統計的に「○○%の患者さんの体内にガン細胞が残されている。」
ということだけしか、判っていません。
目の前の患者さんは一人だけです。
その患者さんの身体にガン細胞がいるのかいないのか、
○○%という確率だけしか判りません。
この見えない敵○○%に対して抗癌剤治療を行なう訳です。
ガン細胞が存在しない確率も、
(100−○○)% あるわけです。
ガン細胞が存在しないのであれば、
抗癌剤治療はまったく意味をなしません。
副作用だけをもらうことになります。
患者さんは、大きな決断を迫られることになります。
しかし、そこは統計学上その治療を行なった方が得だということが判っているのですから、
やはり、一般的な価値観から判断すれば、それは受けた方がイイと思います。
話がずいぶんと遠回りしましたが、
ご相談のお二人の患者さんもそこまでは概ね理解されていました。
ところが、そこから先の考え方が普通ではありません。
「漢方治療で乳ガン再発予防ができる」という話を持ち出しました。
それも、その怪しげな漢方薬には副作用も無く、
1年程度それを飲むだけでイイと言われたそうです。
その様な、漢方薬の存在を、少なくとも私は知りません。
恐らく私が知らないだけではないと思います。
その様な魔法の漢方薬など存在しないのではないかと思います。
現在世界的にみて、乳ガン治療薬は製薬メーカーにとってドル箱です。
欧米の製薬会社も、本当に有効なクスリであれば、
漢方薬だからという理由で、それに興味を示さないことはありません。
効果の有りそうな物質であればなんでも実験で確認していきます。
そして有効性が示唆されるや自社で製品化すると同時にすぐに特許を取ります。
1年間飲むだけで副作用も無く、乳ガンの再発が抑制されるような、
夢の新薬が存在すれば、世界中の製薬会社が、
血眼になりその開発に取り組みます。
その会社はビルゲイツをも抜くような大金持ちになりうるからです。
きっと拘置所内の村上さんもその会社の株には食指を延ばすでしょう。
この夢の漢方薬の話には、何か新種の詐欺治療の臭いがします。
「100%再発を抑えます。」とさえ言わなければ、
詐欺としての立件はほとんど不可能だと思います。
「90%再発を抑えます。」でも詐欺の立件は不可能ではないでしょうか。
すでに、何も治療しなくても再発しそうにない患者さんが
何人かその夢のクスリを飲んでいて、再発していない、という事実があれば、
その後、再発確率の高い患者さんが騙されてそれを飲んで再発したところで、
それは、「運が悪かった」「10%に入ってしまった」だけで簡単に片付けられてしまいます。
結局その患者さんとは、1時間以上も話し合った結果、
やっと納得され、幼いお子さんのためにも、
標準的な術後再発予防の抗癌剤治療を受ける決心をされました。
同じような漢方薬の話を、続けてお二人の患者さんから聞いたのでビックリしました。
ガン患者さんを食い物にする何処かの組織が暗躍しているのかも知れません。
残念ながらそんなうまい話はありません。
以上 文責 梅澤 充
同じような内容がいちどきに続きます。
最近は乳ガン術後の補助抗癌剤治療についてのご質問が重なりました。
その中で2件ほど、ほとんど同じようなことを言って来られた方がおられます。
お二方とも、乳ガンの術後補助抗癌剤治療の意味については、
一見ほぼ正確に理解されているように見えました。
4月25日の「標準的抗癌剤治療も有効です」
でも書いたとおり、術後の再発予防の補助抗癌剤治療は、
一般的な標準的抗癌剤治療とは大きく違い、
その目的は「無治療よりは○ヶ月長生きできる」という
極めて貧粗なエビデンスに根ざした延命治療ではなく、
再発予防、すなわち、根治を目指し、
それに対してしっかりとしたエビデンスがあるのですから、
その治療は受けた方が得だと思われます。
しかし、それは私の価値観であり、
人それぞれの価値観の相違により、
5月2日の「誤解?小さな勘違い」
5月3日の「医者の一人相撲?」
でも書いたとおり、
「その治療は損だ」と考える患者さんがいてもおかしくはありません。
再発ガン、切除不能ガンに対するエビデンスは、
前述のとおり、また当ブログでも散々書いてきたとおり、
本当に患者さんがその内容を知った上で、
そのエビデンスに則った治療を受けたいと考えるか否か、
大きな疑問があります。
根治切除ができないガンであれば、
目的は延命だけです。
その延命効果も、一般の何も知らない患者さんが想像するのとは、
大きくかけ離れた数字しか出されていないのが現実です。
何度も言うとおり、「○○ヶ月以内に半数の患者さんが死ぬ」という
貧弱なエビデンスに従って治療を行なうことは、
私は得なことだとは考えていません。
1月15日の「ガン医療の現場で使われる言葉 エビデンスEBM(Evidence)」
1月16日の「ガン医療の現場で使われる言葉 エビデンスEBM(Evidence)(2)」
3月19日の「肺ガンの抗癌剤治療・エビデンスの裏側」
でお示ししたとおり、
患者さんの個性を完全に無視し、
すべての患者さんを十把一絡げにして出されるのが、
現在の標準的抗癌剤治療のエビデンスです。
日本全国津々浦々に標準的抗癌剤治療という
「画一的な定食提供」に努力されている人々からは多くの非難を浴びますが、
私は、その様な虚しいエビデンスに囚われることなく、
目の前の一人ひとりの患者さんのガンが、
そして全身状態がどの様に変化していくかが、
唯一無二の治療指針であり、
それを確認しながらの治療を進めています。
残念ながらそこにはまだエビデンスはありません。
間も無く、金沢大学の高橋先生が中心になり、
立派なエビデンスが出てくるとは思いますが・・・
「標準的抗癌剤治療 = 定食」説は、
3月10日の「ある腫瘍内科医の勘違い」
3月11日の「ガン治療の地域格差」
で詳しく書きましたご参照下さい。
患者さんも、死ぬことが前提のような貧粗なエビデンスのある治療よりは、
むしろ、エビデンスの無い治療に賭けてみたいという気持ちは当然だと思います。
ところが、術後の再発予防の補助抗癌剤治療となると、話は別です。
先ず、治療の指針となるガンが何処にもいません。
手術後の病理検査所見から推測し、
統計的に「○○%の患者さんの体内にガン細胞が残されている。」
ということだけしか、判っていません。
目の前の患者さんは一人だけです。
その患者さんの身体にガン細胞がいるのかいないのか、
○○%という確率だけしか判りません。
この見えない敵○○%に対して抗癌剤治療を行なう訳です。
ガン細胞が存在しない確率も、
(100−○○)% あるわけです。
ガン細胞が存在しないのであれば、
抗癌剤治療はまったく意味をなしません。
副作用だけをもらうことになります。
患者さんは、大きな決断を迫られることになります。
しかし、そこは統計学上その治療を行なった方が得だということが判っているのですから、
やはり、一般的な価値観から判断すれば、それは受けた方がイイと思います。
話がずいぶんと遠回りしましたが、
ご相談のお二人の患者さんもそこまでは概ね理解されていました。
ところが、そこから先の考え方が普通ではありません。
「漢方治療で乳ガン再発予防ができる」という話を持ち出しました。
それも、その怪しげな漢方薬には副作用も無く、
1年程度それを飲むだけでイイと言われたそうです。
その様な、漢方薬の存在を、少なくとも私は知りません。
恐らく私が知らないだけではないと思います。
その様な魔法の漢方薬など存在しないのではないかと思います。
現在世界的にみて、乳ガン治療薬は製薬メーカーにとってドル箱です。
欧米の製薬会社も、本当に有効なクスリであれば、
漢方薬だからという理由で、それに興味を示さないことはありません。
効果の有りそうな物質であればなんでも実験で確認していきます。
そして有効性が示唆されるや自社で製品化すると同時にすぐに特許を取ります。
1年間飲むだけで副作用も無く、乳ガンの再発が抑制されるような、
夢の新薬が存在すれば、世界中の製薬会社が、
血眼になりその開発に取り組みます。
その会社はビルゲイツをも抜くような大金持ちになりうるからです。
きっと拘置所内の村上さんもその会社の株には食指を延ばすでしょう。
この夢の漢方薬の話には、何か新種の詐欺治療の臭いがします。
「100%再発を抑えます。」とさえ言わなければ、
詐欺としての立件はほとんど不可能だと思います。
「90%再発を抑えます。」でも詐欺の立件は不可能ではないでしょうか。
すでに、何も治療しなくても再発しそうにない患者さんが
何人かその夢のクスリを飲んでいて、再発していない、という事実があれば、
その後、再発確率の高い患者さんが騙されてそれを飲んで再発したところで、
それは、「運が悪かった」「10%に入ってしまった」だけで簡単に片付けられてしまいます。
結局その患者さんとは、1時間以上も話し合った結果、
やっと納得され、幼いお子さんのためにも、
標準的な術後再発予防の抗癌剤治療を受ける決心をされました。
同じような漢方薬の話を、続けてお二人の患者さんから聞いたのでビックリしました。
ガン患者さんを食い物にする何処かの組織が暗躍しているのかも知れません。
残念ながらそんなうまい話はありません。
以上 文責 梅澤 充



