昨日の「ガン治療と自己責任」で、
腹膜播種手術について書きました。
胃ガンなどでは、
腹膜播種を伴う場合、
手術不能のステージⅣと分類され、
日本のほとんどの病院で一般的には、
手術は行わずに、
標準的抗癌剤治療だけが執行され、
ほとんどの患者さんは
大きな副作用に苦しんだ挙句、
標準的に1年程度で亡くなられます。
それに対し、
何回かご紹介しているとおり、
腹腔内抗癌剤治療を行い、
腹膜播種病巣を、
少なくとも肉眼的には消滅させてから、
手術を行うという方法を、
某大学の外科医グループがはじめました。
従来の(ほとんどの病院で今もですが・・・)、
手術を簡単に諦めるよりは、
遥かに優れた生存期間を実現してきています。
現在、私も、
その手術後の患者さんを数名診ています。
大腸ガンの腹膜播種では、
その方法はまだ確立されていません。
腹膜播種が存在すればお手上げ状態で、
手術は諦め、
標準治療に突入します。
勿論、標準的な予後しか待っていません。
治る(モドキも含め)ことなど有り得ません。
それに対して、
転移病巣を認める腹膜を
すべて切除するという果敢な手術を、
行う外科医もいます。
昨日書いたとおり、
手術リスクや術後合併症発生の確率は低くはありませんが、
標準的抗癌剤治療では得ることができない、
ガンが一時的にでも、
「治ったモドキ状態」に至ることも少なからずあります。
大腸ガンなどで腹膜をすべて切除するという、
全腹膜切除手術や、
それ以上の拡大手術は、
私自身も25年以上も前に何例も経験しています。
勿論、私が行った手術ではなく、
今も、しばしば本当に難しい手術をお願いしている名人の手術の、
助手に入ったりして勉強させてもらいました。
その手術の術後管理は、
名人の監督下ですが、
我々下っ端の仕事でしたから、
本当に苦労したことを思い出します。
当時は、その手術は「私にはできない」と確信していました。
それは手術の難しさだけではなく、
術後の合併症の大きさから、
「するべき手術ではない」
と感じていました。
外科医の驕りとすら考えていました。
手術後入院中の重篤な合併症。
なんとか退院できても、
激しい下痢が続いたり、
20kg、30kg程度の体重減少は、
珍しいことではありませんでした。
QOLの著しい低下は防ぐことはできませんでした。
しかし、当時通常数ヶ月で亡くなるはずのところ、
天寿を全うされる患者さんもいました。
その後抗癌剤の進歩もあり、
また、私自身が歳をとり、
患者さん、ご家族の、
「命」「生」「死」に対する考え方が、
若い外科医の勝手な考え方とは大きく違うことを知り、
現在は、可能だと思われる患者さんでは、
そして、それを望む患者さんには、
積極的に前述の名人に手術を依頼して、
昔は無謀と思われた手術をしてもらっています。
その名人は、
かつて、激しい合併症を散々経験していますので、
絶妙の匙加減で、
手術の大きさを決めてくれています。
けっして無理はしません。
私にはとても真似はできない技術です。
私だけではなく普通の外科医では無理だと思われます。
現在まで、
何人も手術をお願いしていますが、
容認できない大きな合併症で苦しんでいる患者さんはいません。
しかし、その技術は、
普通の外科医では無理かも知れませんが、
それが可能な技量を持っている外科医も少なくないと思います。
しかし、いわゆる3K といわれる外科の仕事は嫌われ、
外科医がドンドン減っている日本の現状では、
そのような手術が普及することは起こりえないと思われます。
先程も書きましたが、
そのような手術では、
術後管理の苦労は、
素人の患者さんには想像もできないほど大変です。
それを考えただけでも、
その手術には誰も手を出そうとは考えないはずです。
消化器外科の手術技術は、
日本は世界水準から見れば非常に優れています。
恐らくどこかの大臣様がお嫌いな「世界で1番」です。
したがって他国で、
それが普及することも有り得ないと思われます。
さらに、日本で、
外科医減少の要因の一つは、
何でも訴訟の風潮にもあります。
患者さんのための手術を行い、
その想像も絶する苦労の挙句、
患者さん、ご家族の納得のいかない結果だった場合には、
最悪、告訴、逮捕の可能性すらあるのですから。
昨日書いたとおり、
患者さんやご家族が、
自己責任を放棄するような国では、
患者さんは、
大きな副作用と標準どおりの時間だけしか与えられない、
標準的抗癌剤治療を甘んじて受ける以外にはないと思います。
ガンの手術にも、
標準術式という
ガイドラインがあります。
手術室の現場で、
もしも外科医にそれをこなす技量が無い場合には、
9月21日の「ガン治療のウソ」で書いたとおり、
「私の腕では」
という枕詞を隠して、
「それができる状態ではなかった」
とだけ言えば、
それがすべてです。
一件落着です。
「認定医」「専門医」「指導医」などという資格?もありますが、
その資格?は、
ただ、決められた年数以上、
学会に年会費を払い、
会費を支払い学会に参加したという「参加証」を揃えるだけです。
「参加証」は本当に学会に参加する同僚の医者や、
製薬会社の社員などに頼み、
お金を渡して買ってきてもらえばそれで十分です。
何枚かの「参加証」を添付して、
高額な「認定料」さえ学会に支払えば、
誰でも「認定医」「専門医」「指導医」になれます。
私も幾つもの学会からその資格?を
有難く拝領していましたが、
忙しくて学会にも行けなくなり、
数年分、会費も未納になり、
それらの資格?のほとんどは抹消されました。
継続するにも、
多額の「更新費用」が必要であり、
バカバカしくなりました。
外科医のそんな肩書き?は
その程度のものであり、
手術技量とはまったく関係ありません。
現在は、そのほかにも揃えなければならない
書類もたくさんありますが、
「手術技能検定試験」などはありません。
患者さんのガン治療に対する意識・認識は、
医療・医者を成長させる大きな力になります。
腹膜切除手術も日本の患者さんが成長しなければ、
普及は有り得ないでしょう。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
腹膜播種手術について書きました。
胃ガンなどでは、
腹膜播種を伴う場合、
手術不能のステージⅣと分類され、
日本のほとんどの病院で一般的には、
手術は行わずに、
標準的抗癌剤治療だけが執行され、
ほとんどの患者さんは
大きな副作用に苦しんだ挙句、
標準的に1年程度で亡くなられます。
それに対し、
何回かご紹介しているとおり、
腹腔内抗癌剤治療を行い、
腹膜播種病巣を、
少なくとも肉眼的には消滅させてから、
手術を行うという方法を、
某大学の外科医グループがはじめました。
従来の(ほとんどの病院で今もですが・・・)、
手術を簡単に諦めるよりは、
遥かに優れた生存期間を実現してきています。
現在、私も、
その手術後の患者さんを数名診ています。
大腸ガンの腹膜播種では、
その方法はまだ確立されていません。
腹膜播種が存在すればお手上げ状態で、
手術は諦め、
標準治療に突入します。
勿論、標準的な予後しか待っていません。
治る(モドキも含め)ことなど有り得ません。
それに対して、
転移病巣を認める腹膜を
すべて切除するという果敢な手術を、
行う外科医もいます。
昨日書いたとおり、
手術リスクや術後合併症発生の確率は低くはありませんが、
標準的抗癌剤治療では得ることができない、
ガンが一時的にでも、
「治ったモドキ状態」に至ることも少なからずあります。
大腸ガンなどで腹膜をすべて切除するという、
全腹膜切除手術や、
それ以上の拡大手術は、
私自身も25年以上も前に何例も経験しています。
勿論、私が行った手術ではなく、
今も、しばしば本当に難しい手術をお願いしている名人の手術の、
助手に入ったりして勉強させてもらいました。
その手術の術後管理は、
名人の監督下ですが、
我々下っ端の仕事でしたから、
本当に苦労したことを思い出します。
当時は、その手術は「私にはできない」と確信していました。
それは手術の難しさだけではなく、
術後の合併症の大きさから、
「するべき手術ではない」
と感じていました。
外科医の驕りとすら考えていました。
手術後入院中の重篤な合併症。
なんとか退院できても、
激しい下痢が続いたり、
20kg、30kg程度の体重減少は、
珍しいことではありませんでした。
QOLの著しい低下は防ぐことはできませんでした。
しかし、当時通常数ヶ月で亡くなるはずのところ、
天寿を全うされる患者さんもいました。
その後抗癌剤の進歩もあり、
また、私自身が歳をとり、
患者さん、ご家族の、
「命」「生」「死」に対する考え方が、
若い外科医の勝手な考え方とは大きく違うことを知り、
現在は、可能だと思われる患者さんでは、
そして、それを望む患者さんには、
積極的に前述の名人に手術を依頼して、
昔は無謀と思われた手術をしてもらっています。
その名人は、
かつて、激しい合併症を散々経験していますので、
絶妙の匙加減で、
手術の大きさを決めてくれています。
けっして無理はしません。
私にはとても真似はできない技術です。
私だけではなく普通の外科医では無理だと思われます。
現在まで、
何人も手術をお願いしていますが、
容認できない大きな合併症で苦しんでいる患者さんはいません。
しかし、その技術は、
普通の外科医では無理かも知れませんが、
それが可能な技量を持っている外科医も少なくないと思います。
しかし、いわゆる3K といわれる外科の仕事は嫌われ、
外科医がドンドン減っている日本の現状では、
そのような手術が普及することは起こりえないと思われます。
先程も書きましたが、
そのような手術では、
術後管理の苦労は、
素人の患者さんには想像もできないほど大変です。
それを考えただけでも、
その手術には誰も手を出そうとは考えないはずです。
消化器外科の手術技術は、
日本は世界水準から見れば非常に優れています。
恐らくどこかの大臣様がお嫌いな「世界で1番」です。
したがって他国で、
それが普及することも有り得ないと思われます。
さらに、日本で、
外科医減少の要因の一つは、
何でも訴訟の風潮にもあります。
患者さんのための手術を行い、
その想像も絶する苦労の挙句、
患者さん、ご家族の納得のいかない結果だった場合には、
最悪、告訴、逮捕の可能性すらあるのですから。
昨日書いたとおり、
患者さんやご家族が、
自己責任を放棄するような国では、
患者さんは、
大きな副作用と標準どおりの時間だけしか与えられない、
標準的抗癌剤治療を甘んじて受ける以外にはないと思います。
ガンの手術にも、
標準術式という
ガイドラインがあります。
手術室の現場で、
もしも外科医にそれをこなす技量が無い場合には、
9月21日の「ガン治療のウソ」で書いたとおり、
「私の腕では」
という枕詞を隠して、
「それができる状態ではなかった」
とだけ言えば、
それがすべてです。
一件落着です。
「認定医」「専門医」「指導医」などという資格?もありますが、
その資格?は、
ただ、決められた年数以上、
学会に年会費を払い、
会費を支払い学会に参加したという「参加証」を揃えるだけです。
「参加証」は本当に学会に参加する同僚の医者や、
製薬会社の社員などに頼み、
お金を渡して買ってきてもらえばそれで十分です。
何枚かの「参加証」を添付して、
高額な「認定料」さえ学会に支払えば、
誰でも「認定医」「専門医」「指導医」になれます。
私も幾つもの学会からその資格?を
有難く拝領していましたが、
忙しくて学会にも行けなくなり、
数年分、会費も未納になり、
それらの資格?のほとんどは抹消されました。
継続するにも、
多額の「更新費用」が必要であり、
バカバカしくなりました。
外科医のそんな肩書き?は
その程度のものであり、
手術技量とはまったく関係ありません。
現在は、そのほかにも揃えなければならない
書類もたくさんありますが、
「手術技能検定試験」などはありません。
患者さんのガン治療に対する意識・認識は、
医療・医者を成長させる大きな力になります。
腹膜切除手術も日本の患者さんが成長しなければ、
普及は有り得ないでしょう。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。