昨日の「治験というガン治療」
で抗癌剤の治験について、
受けるべきではない治験がたくさんあることを書きました。
これからも様々な治験が予定されています。
当然、受けないほうが無難な治験も予定されています。
その中で、
まだ日本でのスケジュールは知りませんが、
確実に行われるであろうと思われる治験があります。
それは膵癌に対する、
極めて厳しいメニューの抗癌剤治療です。
直腸・大腸ガンに対して、
一般的に行われている
FOLFOXとFOLFIRIというメニューの抗癌剤治療を
同時に行ってしまうというようなスケジュールの治療です。
FOLFOXはオキサリプラチンを柱に、
5-FU、レボホリナートという薬剤を組み合わせる治療で、
FOLFIRIはオキサリプラチンの代わりにイリノテカンを使う治療です。
直腸・大腸ガンに対しては、
FOLFOX、FOLFIRI、それぞれ単独で行われますが、
膵癌では、
それを同時に行った治療、
名付けてFOLFIRINOXなる治療のデータが、
今年の5月にイギリスの医学雑誌で報告されました。
全身状態の良好な手術不能膵癌の患者さん342人を対象に、
従来のジェムザール単独治療患者群と、
FOLFIRINOX治療患者群に分けて、
前者の生存期間中央治値が6.8ヶ月だったのに対して、
後者の治療では11.1ヶ月で、
統計学的にも有意に4.3ヶ月の延命効果が示されました。
その数字だけを見れば、
新しいFOLFIRINOX治療のほうが、
従来のジェムザール単独治療よりは優れているように思えます。
しかし、その治療では、
ジェムザール単独よりは遥かに大きな副作用が発生することも、
同時に示されています。
激しい副作用に悩まされての4.3ヶ月の延命、
その数字を如何に考えるかは、
それを受ける患者さんの価値観で判断するしかありません。
私の価値観から判断すれば、
絶対に受けるべきではない治療だと感じます。
恐らくその治療の治験が、
日本でも行われることになると思います。
治験が行われなければ、
その治療は承認されることはありません。
私の価値観からは、
受けるべきではないと考えても、
その治験を受けてくれる患者さんがいないと、
その治療は承認されません。
「受けるべき治療ではない」と考えるなら、
「承認されなくても良い」ようにも思われるかも知れませんが、
そうでもありません。
論文発表された治療をそのまま行うつもりは毛頭ありませんが、
その治療で使われるパーツは、
膵癌治療においてきわめて重要です。
前述のごとくFOLFIRINOXは、
オキサリプラチンとイリノテカン、
5-FUとレボホリナートというパーツに分けられます。
このうち5-FUだけは、
現在でも健康保険で認められていますが、
残りの3剤は膵癌では認可されていません。
残念ながら現在は、
自費でなければ使えない状況です。
(イリノテカンは自費でも数千円ですが、
オキサリプラチンは4万円以上もかかります)
オキサリプラチンもイリノテカンも、
膵癌にとっては現在でも貴重な武器です。
それがFOLFIRINOXが認可されたなら、
重要なパーツすべてが健康保険で使えるようになります。
健康保険では、
「原則」では「標準量」使うことになりますが、
すべての抗癌剤は医者の裁量で、
「適宜減量」が可能です。
したがって必ずしも激しい副作用を強いてまで使わなければならない、
ということはありません。
健康保険では、
「患者さんが副作用が怖いと言ったから」
というのも「減量」の立派な理由になります。
一般に治療費が安くなるような変更には文句は出ません。
膵癌の治験では、
TS-1とオキサリプラチンの併用療法であるSOX治療が、
すでに終了しており、
間も無く認可されることが期待されます。
その時には、
オキサリプラチンという大きな武器を、
膵癌患者さんは手にすることになります。
そのSOXという治験も、
その内容を見ると、
けっしてお勧めできる治療ではありませんでした。
その治験でボロボロになってから来られた患者さんも何人も診ました。
当然、私はそれを行う気はサラサラありませんが、
その治験の犠牲?になってくれた患者さんがいるから、
後進の患者さんは大きな恩恵を得ることができます。
イリノテカンという、
もう一つの大きな武器も、
FOLFIRINOXという、
「残忍な拷問」「白衣を着た閻魔様のお遊び」
とすら思われるような治療を
治験というかたちで受けてくれる、
犠牲的精神をお持ちの患者さんがいなければ、
認可されることはないと思われます。
その治験を受けるべきか否か、
患者さんに聞かれたら、
私の価値観からの判断では、
何も迷うことなく、
「止めた方がいいですよ!」
と言います。
しかし犠牲になってくれる患者さんが存在するから、
健康保険で使うことが可能な薬剤、
すなわち武器が増えていく。
今後の患者さんに大きな恩恵を与えてくれる。
両方の患者さんを見ていると、
なんだか複雑な心境です。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
で抗癌剤の治験について、
受けるべきではない治験がたくさんあることを書きました。
これからも様々な治験が予定されています。
当然、受けないほうが無難な治験も予定されています。
その中で、
まだ日本でのスケジュールは知りませんが、
確実に行われるであろうと思われる治験があります。
それは膵癌に対する、
極めて厳しいメニューの抗癌剤治療です。
直腸・大腸ガンに対して、
一般的に行われている
FOLFOXとFOLFIRIというメニューの抗癌剤治療を
同時に行ってしまうというようなスケジュールの治療です。
FOLFOXはオキサリプラチンを柱に、
5-FU、レボホリナートという薬剤を組み合わせる治療で、
FOLFIRIはオキサリプラチンの代わりにイリノテカンを使う治療です。
直腸・大腸ガンに対しては、
FOLFOX、FOLFIRI、それぞれ単独で行われますが、
膵癌では、
それを同時に行った治療、
名付けてFOLFIRINOXなる治療のデータが、
今年の5月にイギリスの医学雑誌で報告されました。
全身状態の良好な手術不能膵癌の患者さん342人を対象に、
従来のジェムザール単独治療患者群と、
FOLFIRINOX治療患者群に分けて、
前者の生存期間中央治値が6.8ヶ月だったのに対して、
後者の治療では11.1ヶ月で、
統計学的にも有意に4.3ヶ月の延命効果が示されました。
その数字だけを見れば、
新しいFOLFIRINOX治療のほうが、
従来のジェムザール単独治療よりは優れているように思えます。
しかし、その治療では、
ジェムザール単独よりは遥かに大きな副作用が発生することも、
同時に示されています。
激しい副作用に悩まされての4.3ヶ月の延命、
その数字を如何に考えるかは、
それを受ける患者さんの価値観で判断するしかありません。
私の価値観から判断すれば、
絶対に受けるべきではない治療だと感じます。
恐らくその治療の治験が、
日本でも行われることになると思います。
治験が行われなければ、
その治療は承認されることはありません。
私の価値観からは、
受けるべきではないと考えても、
その治験を受けてくれる患者さんがいないと、
その治療は承認されません。
「受けるべき治療ではない」と考えるなら、
「承認されなくても良い」ようにも思われるかも知れませんが、
そうでもありません。
論文発表された治療をそのまま行うつもりは毛頭ありませんが、
その治療で使われるパーツは、
膵癌治療においてきわめて重要です。
前述のごとくFOLFIRINOXは、
オキサリプラチンとイリノテカン、
5-FUとレボホリナートというパーツに分けられます。
このうち5-FUだけは、
現在でも健康保険で認められていますが、
残りの3剤は膵癌では認可されていません。
残念ながら現在は、
自費でなければ使えない状況です。
(イリノテカンは自費でも数千円ですが、
オキサリプラチンは4万円以上もかかります)
オキサリプラチンもイリノテカンも、
膵癌にとっては現在でも貴重な武器です。
それがFOLFIRINOXが認可されたなら、
重要なパーツすべてが健康保険で使えるようになります。
健康保険では、
「原則」では「標準量」使うことになりますが、
すべての抗癌剤は医者の裁量で、
「適宜減量」が可能です。
したがって必ずしも激しい副作用を強いてまで使わなければならない、
ということはありません。
健康保険では、
「患者さんが副作用が怖いと言ったから」
というのも「減量」の立派な理由になります。
一般に治療費が安くなるような変更には文句は出ません。
膵癌の治験では、
TS-1とオキサリプラチンの併用療法であるSOX治療が、
すでに終了しており、
間も無く認可されることが期待されます。
その時には、
オキサリプラチンという大きな武器を、
膵癌患者さんは手にすることになります。
そのSOXという治験も、
その内容を見ると、
けっしてお勧めできる治療ではありませんでした。
その治験でボロボロになってから来られた患者さんも何人も診ました。
当然、私はそれを行う気はサラサラありませんが、
その治験の犠牲?になってくれた患者さんがいるから、
後進の患者さんは大きな恩恵を得ることができます。
イリノテカンという、
もう一つの大きな武器も、
FOLFIRINOXという、
「残忍な拷問」「白衣を着た閻魔様のお遊び」
とすら思われるような治療を
治験というかたちで受けてくれる、
犠牲的精神をお持ちの患者さんがいなければ、
認可されることはないと思われます。
その治験を受けるべきか否か、
患者さんに聞かれたら、
私の価値観からの判断では、
何も迷うことなく、
「止めた方がいいですよ!」
と言います。
しかし犠牲になってくれる患者さんが存在するから、
健康保険で使うことが可能な薬剤、
すなわち武器が増えていく。
今後の患者さんに大きな恩恵を与えてくれる。
両方の患者さんを見ていると、
なんだか複雑な心境です。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。