患者さんおよびご家族が相談に来られました。
インフォームドコンセントが重要だと、日本中の病院に対し唱えられている
日本の中心的な大病院で手術を行った患者さんです。
胃ガンに対する手術中に腹膜播種が判明し、
完全切除ができなかった患者さんです。
当然、抗癌剤治療が必用になります。
選択肢として、メトトレキセートと5-FUの点滴、
タキソール、タキソテール、イリノテカンなどの標準治療が
「面談票」なる紙に書かれていました。
しかし、その患者さんに推奨されたのは、
「TS-1を1日120㎎で4週間内服、2週間休薬」
という極めてシンプルな内容でした。
患者さんが、手術前に話の出た
「内服だけで簡便な経口抗癌剤」ということを覚えていて、
患者さんの方からお願いしたそうです。
ちょうどその病院でも、「TS-1単独と他の抗癌剤治療の比較試験」を行いたかったようで、
面談票にも「比較試験」という言葉だけが書かれていました。
病院として比較試験を行いたいと思っていた矢先の、
患者さんからの依頼ですから、
まさに渡りに舟の状態だったようです。
TS-1単独は、
「TS-1 + シスプラチン」または「TS-1 + タキソール」
よりも生存期間が短いことが現在までのデータでは出ていますので、
その短いことが判っている「TS-1単独」は、
他の患者さんには、なかなか勧め難かったことと思います。
そこに、患者さんから「手軽な方がイイ」という申し出があれば
これほどありがたいことは有りません。
「TS-1単独の治療ではどの程度のメリットがあるのか」
「その治療を行うとどの程度長生きができるのか」
についてどのような説明を受けているかその患者さんにお聞きしたところ、
「ガンが小さくなればイイ」
「小さくなっているかどうかをCTで検査して観ていく」
というだけで、生存期間については一切説明はされていません。
「TS-1 + シスプラチン」または「TS-1 + タキソール」
の方が生存期間が長いという現時点でのデータを知っているのですから、
当然、その病院の医者は患者さんが一番知りたい生存期間については、
一言も言えなかったのだと思います。
したがって「ガンが小さくなればイイ」
などと、訳の判らないことを言って患者さんを煙に捲く必要があるのです。
その病院が一番大切にし、その治療の唯一のよりどころであるエビデンスついて説明すると、
「そんなに短いとは思わなかった」
と、案の定、勘違いをされていました。
その勘違いが無ければ、患者さんはその病院の標準的治療は受けません。
デタラメなインフォームドコンセントの上の患者さんの勘違いを利用した、
極めて悪質な抗癌剤治療のように思います。
また、その患者さんはもう一つ大きな勘違いをされていました。
それは、その大病院の近くにお住まいであり、
「いよいよ具合が悪くなった時にすぐに面倒を診てくれる」
から、大病院からは離れない方がイイのではないか。
という、致命的な勘違いです。
標準的抗癌剤治療が効果が無くなり、
PS(パフォーマンスステイタス)が低下すると、アッサリと
「もはや治療方法はありません」
「緩和医療を受けてください」
と宣告され、
ガン難民への道が待っています。
PSが落ちても、それなりの生活はできます。
その状態で治療を諦められるものでしょうか。
ガン治療を諦めるということは、
ガンに敗北宣言を出して、静かに死を待つということです。
「PSが落ちてエビデンスが無い」というそれだけの理由で・・・
PSが2または3以上の患者さんに対する治験データはほとんど有りません。
治験の参加者はほとんどPSゼロ~1、悪くても2までです。
したがって現在の標準治療はPSがイイ患者さんにしかエビデンスがないのです。
PSにつきましては1月18日の「緩和医療」で説明しました。
ご参照下さい。
某大病院ではインフォームドコンセントとは掛け声だけで、
内容は極めていい加減、デタラメですが、
エビデンスだけは頑なに守っている病院ですから、
エビデンスのないことはいくら患者さんが望んでも行われません。
そのような病院に騙されないように、
十分にご注意下さい。
また、そのような病院は
昨日の「病院の有効利用」で書いたような賢い利用を心がけてください。
本日は、この患者さんの他にも、
セカンドラインの治療が無効だから、
「緩和医療を」と勧められたご家族もお見えになりました。
まだ、騙まし討ちでも治療をするなら少しはマシですが、
「他に治療方法が無い」と信じ込んでしまい、
言われるとおりの「緩和医療」だけを行ってしまったなら、
取り返しがつきません。
可能性のある治療はエビデンスなど無くても行うべきではないでしょうか。
白旗を揚げるのは、すべての武器を使い果たしてからでも遅くはありません。
患者さんを騙すのは、巷の似非治療を行っているインチキクリニックだけではありません。
大病院だからといって、騙されないように、十分にご注意下さい。
しかし、そのような状態になってしまっているのは、
そこで働く医者が悪いのではありません。
システムに問題があるのです。
また同時に、そこを利用する患者さんの無知にも大きな責任があります。
病気に対してばかりではなく、
病院に対してもシッカリ知識武装をして下さい。
以上 文責 梅澤 充
インフォームドコンセントが重要だと、日本中の病院に対し唱えられている
日本の中心的な大病院で手術を行った患者さんです。
胃ガンに対する手術中に腹膜播種が判明し、
完全切除ができなかった患者さんです。
当然、抗癌剤治療が必用になります。
選択肢として、メトトレキセートと5-FUの点滴、
タキソール、タキソテール、イリノテカンなどの標準治療が
「面談票」なる紙に書かれていました。
しかし、その患者さんに推奨されたのは、
「TS-1を1日120㎎で4週間内服、2週間休薬」
という極めてシンプルな内容でした。
患者さんが、手術前に話の出た
「内服だけで簡便な経口抗癌剤」ということを覚えていて、
患者さんの方からお願いしたそうです。
ちょうどその病院でも、「TS-1単独と他の抗癌剤治療の比較試験」を行いたかったようで、
面談票にも「比較試験」という言葉だけが書かれていました。
病院として比較試験を行いたいと思っていた矢先の、
患者さんからの依頼ですから、
まさに渡りに舟の状態だったようです。
TS-1単独は、
「TS-1 + シスプラチン」または「TS-1 + タキソール」
よりも生存期間が短いことが現在までのデータでは出ていますので、
その短いことが判っている「TS-1単独」は、
他の患者さんには、なかなか勧め難かったことと思います。
そこに、患者さんから「手軽な方がイイ」という申し出があれば
これほどありがたいことは有りません。
「TS-1単独の治療ではどの程度のメリットがあるのか」
「その治療を行うとどの程度長生きができるのか」
についてどのような説明を受けているかその患者さんにお聞きしたところ、
「ガンが小さくなればイイ」
「小さくなっているかどうかをCTで検査して観ていく」
というだけで、生存期間については一切説明はされていません。
「TS-1 + シスプラチン」または「TS-1 + タキソール」
の方が生存期間が長いという現時点でのデータを知っているのですから、
当然、その病院の医者は患者さんが一番知りたい生存期間については、
一言も言えなかったのだと思います。
したがって「ガンが小さくなればイイ」
などと、訳の判らないことを言って患者さんを煙に捲く必要があるのです。
その病院が一番大切にし、その治療の唯一のよりどころであるエビデンスついて説明すると、
「そんなに短いとは思わなかった」
と、案の定、勘違いをされていました。
その勘違いが無ければ、患者さんはその病院の標準的治療は受けません。
デタラメなインフォームドコンセントの上の患者さんの勘違いを利用した、
極めて悪質な抗癌剤治療のように思います。
また、その患者さんはもう一つ大きな勘違いをされていました。
それは、その大病院の近くにお住まいであり、
「いよいよ具合が悪くなった時にすぐに面倒を診てくれる」
から、大病院からは離れない方がイイのではないか。
という、致命的な勘違いです。
標準的抗癌剤治療が効果が無くなり、
PS(パフォーマンスステイタス)が低下すると、アッサリと
「もはや治療方法はありません」
「緩和医療を受けてください」
と宣告され、
ガン難民への道が待っています。
PSが落ちても、それなりの生活はできます。
その状態で治療を諦められるものでしょうか。
ガン治療を諦めるということは、
ガンに敗北宣言を出して、静かに死を待つということです。
「PSが落ちてエビデンスが無い」というそれだけの理由で・・・
PSが2または3以上の患者さんに対する治験データはほとんど有りません。
治験の参加者はほとんどPSゼロ~1、悪くても2までです。
したがって現在の標準治療はPSがイイ患者さんにしかエビデンスがないのです。
PSにつきましては1月18日の「緩和医療」で説明しました。
ご参照下さい。
某大病院ではインフォームドコンセントとは掛け声だけで、
内容は極めていい加減、デタラメですが、
エビデンスだけは頑なに守っている病院ですから、
エビデンスのないことはいくら患者さんが望んでも行われません。
そのような病院に騙されないように、
十分にご注意下さい。
また、そのような病院は
昨日の「病院の有効利用」で書いたような賢い利用を心がけてください。
本日は、この患者さんの他にも、
セカンドラインの治療が無効だから、
「緩和医療を」と勧められたご家族もお見えになりました。
まだ、騙まし討ちでも治療をするなら少しはマシですが、
「他に治療方法が無い」と信じ込んでしまい、
言われるとおりの「緩和医療」だけを行ってしまったなら、
取り返しがつきません。
可能性のある治療はエビデンスなど無くても行うべきではないでしょうか。
白旗を揚げるのは、すべての武器を使い果たしてからでも遅くはありません。
患者さんを騙すのは、巷の似非治療を行っているインチキクリニックだけではありません。
大病院だからといって、騙されないように、十分にご注意下さい。
しかし、そのような状態になってしまっているのは、
そこで働く医者が悪いのではありません。
システムに問題があるのです。
また同時に、そこを利用する患者さんの無知にも大きな責任があります。
病気に対してばかりではなく、
病院に対してもシッカリ知識武装をして下さい。
以上 文責 梅澤 充