抗癌剤治療は有効に効いても長生きできない!?
???と思われることでしょう。
しかし、これが真実なのです。
そもそも、1995年までは、すなわち僅か10年前まで、例えば肺ガン等では、いわゆる標準的な抗癌剤治療を受けた患者群と、無治療で経過を診た患者群とで、どちらのグループがどれだけ長生き出来るかを観察した時、両グループの間で、全く差が出ませんでした。
それが1995年になり、はじめて、抗癌剤治療を受けた患者群の方が無治療のグループより1.5ヶ月長生きできるというデータが出て来ました。(生存期間の延長)
現在では、抗癌剤やその使い方の進歩により、肺ガンでも3〜4ヶ月程度にまでその延命効果は延長されています。
大腸ガンでは1992年にはじめて抗癌剤治療の延命効果が証明されました。
胃ガンでは、1995年頃です。
いずれも無治療と比較して、数ヶ月の延命というものです。
これから抗癌剤治療を受けようという患者さんで、こんなにお寒い治療効果に満足して、その治療を受けたいと考える方はいないのではないでしょうか。
しかも、ご承知のとおり、抗癌剤治療は決して楽な治療ではありません・・・
副作用を防止する薬剤の進歩、その使い方の工夫には目を見張るものがあり、以前よりは、その副作用対策は比較にならないほど進んでいます。
しかし、標準的な抗癌剤治療を受けて全く苦痛を感じない患者さんはほとんどおりません・・・・
何故、このようなお粗末な治療効果しか出ていないのでしょうか?
それを、説明するためには、抗癌剤治療において、治療効果の表す指標である"奏効率"という数字について説明しなければなりません。
奏効率とは、文字通り「効」を「奏」する「率」すなわち、効果を発現する確率を意味します。
そして、この数字は、長い間、抗癌剤治療における、唯一絶対的な治療効果の、判定指標とされてきました。
(日本では現在でも奏効率至上主義的な抗癌剤治療専門医は少なくありません)
患者さんが一番望んでいるはずの"生存期間の延長"よりもむしろ重要視されてきました。
その奏効率を最重要視している施設や、腫瘍内科医と呼ばれる抗癌剤治療専門医も日本にはいまだに沢山おられます。
それは「腫瘍(ガンのカタマリ)の縮小なしに、癌治療なし」という旧態然たる、化石の様な古い頭をお持ちのエライ先生方がまだ現役で頑張っておられる結果だと思われます。
具体的に、その奏効率とは、次のように定義されております。
ガンが、明らかに身体の何処かに存在していることが確認されている患者さんに、ある抗ガン治療を行なって、「その存在しているガンが、レントゲン写真や、CT、超音波検査などの画像診断上の面積で1/2以下の大きさに縮小し、その縮小状態が4週間以上継続すること。」
(病変部の面積で計算しますから、長さだと約30%の縮小でよいことになります。
0.7 x 0.7 = 0.49 でほぼ50%です。)
この条件が満たされた時、PR(Partial Responseパーシャル レスポンス)(部分寛解)と判定されます。
もし「存在していたガンが、画像診断上完全に見えなくなり、その状態が4週間以上継続」した場合、CR(Complete Responseコンプリート レスポンス)(完全寛解)と判定します。
「治療が"奏効"した。」とは、治療前に存在していたガンのカタマリがPRまたはCRの状態になることです。
そのPRとCRの患者さんの合計数を、治療を行なった患者さん総数で割った数字を奏効率と言います。
奏効率 = CR + PR / 治療患者総数 X 100 % と表します。
ここで勘違いをしないで頂きたいのですが、画像上、ガンが"消えた"CR(完全寛解)と言っても、一般的には、それはガンが"無くなった""治った"のとは、全く意味が違います。
ただ、機械の目では、見えなくなったというだけです。
たった一個のガン細胞は、一回分裂し2個になり、次に4個になり、その次は8個になり、16個になり、32個になり、64個になりという様に細胞分裂を繰り返し、およそそれが30回繰り返されると約10億個にまで増大します。
そうなるとそのガンの塊・シコリは、大きさが1立方センチメートル(1cm四方)の大きさになると考えられています。
一方、現在の画像診断では、どんなに精度の高い機械を使っても、その百分の一の大きさになったら、もはや検出することは出来なくなります。
ここで考えてみて下さい。
10億個の百分の一は幾つでしょうか?
実に一千万個です。「機械の目で見えなくなった」と言うだけの話で、ガン細胞は、何と一千万個以上身体の中に残っているのです。
奏効率と生存期間の関係

上に示した表は、切除不能の進行胃ガンに対し、様々な治療を行った時の、奏効率とMST(生存期間中央値)(概ねの平均生存期間)を表したものです。
ここで疑問は出てこないでしょうか?
この表を見て頂いても、"奏効率"と"MST"とは全く比例していません。すなわち奏効率が34%でも10%でもMSTは7.7ヶ月で変わりないのです。
何故このような、一見矛盾したことが起こるのでしょうか。
その理由は幾つかあります。
一つは、「4週間以上継続」と言うのが「ミソ」であり、「4週間過ぎたら、何時、患者さんが、死んでしまっても、関係なし」なのです。
すなわち「4週間の間はガンは小さくなっていたけれど、抗癌剤で痛めつけられた患者さんの身体の中で、治療後急激にガンが成長し、患者さんは一週間で死んでしまった。」と言うこともあるのです。
それでも「奏効した」と判定されます。
従って、患者さんの「寿命と奏効」とは関係無い数字なのです。
以下の2枚の表にその皮肉を簡単にまとめました。


ねじれ現象
奏効率が高いのに、生存期間の延長が得られない、という皮肉なねじれ現象とも言うべき結果は、ガンを宿した人間が必死にガンと戦おうという免疫機能を抗癌剤が破壊してしまうことが、最大の原因と考えられます。
免疫力だけでガンが縮小するなどと言うことは殆どありません。
しかし、ガンの増大を阻止しようと言う"けなげな"免疫力は確実に、存在しているのです。
その証拠については、いずれ詳しく書きますが、簡単に説明すると、
図Aの様に"標準的な抗癌剤治療"で使われる、大量の抗癌剤は、ガン細胞も沢山殺してくれる一方、同時にガンを抱えた"ご主人様"の肉体も蝕んでしまいます。
従って大量に抗癌剤を使い続けることは不可能です。
ご主人様の体力に限界が来るか、あるいは、抗癌剤にガン細胞を殺す効果が無くなるかいずれかの理由で、その抗癌剤が使えなくなった時、抗癌剤を使うまでは、必死にガンの発育阻止のために"けなげに"働いていた免疫力までも、その大量の抗癌剤で殺されてしまっているので、抗癌剤が止まった時のガンの増大スピードは、それまでとは比較にならないほど速くなってしまうためであろうと考えられます。
もう一点は「奏効しなかった」患者さん、すなわち、使われた抗癌剤がガン細胞を殺せなかった患者さんでは、いたずらに大切な身体だけが抗癌剤により、大きくダメージを受け、寿命を縮めてしまうこともあるからです。
抗癌剤の毒薬としての作用の部分だけをもろに受けてしまい、全身状態を悪化させ、ガンの増大を少しでも食い止めていた、免疫力まで奪われて、結果として、ガンの増大を速め、寿命を縮めてしまう可能性があります。
当然、抗癌剤治療をした患者さんの中には、薬が本当によく効いて、すなわち「奏効」して長生き出来る患者さんも存在します。
しかし、今述べた様に、逆に抗癌剤治療で寿命を縮めてしまう患者さんも存在するので、患者さんの「生存期間」を「平均すると、何も治療をしない患者さんと、その寿命はさほど変わらない。」ということになってしまうのです。
一方、図Bのように、「使う抗癌剤の量を少なくした場合」ガンに対抗する免疫力を削ぐことはなく、そのけなげな免疫力もガンに対し僅かでも抵抗し、少量の抗癌剤と強調して、ガンに対抗してくれるものと思われます。
もし、その抗癌剤がその患者さんのガンに対し効果を示さない場合でも、ガンを宿した身体にダメージを与えなければ、すぐ次の抗癌剤に切り替えることも出来ます。
ところが、日本では、「そのような治療にはエビデンス(臨床研究に基づく実証の報告)がないからダメだ。」と抗癌剤治療の専門医は仰ります・・・・


書きたいことは、まだまだ山ほどあります。
ゆっくりと書き進めてゆきます。
以上 文責 梅澤 充



