先日、乳がん手術後の再発予防の抗がん剤治療についての、
セカンドオピニオンを得るために来られた患者さんがいます。
手術後にドセタキセルでの治療を勧められていました。
乳がんの再発予防の抗がん剤治療については、
「アンスラサイクリン系+サイクロフォスファマイド」(AC)という、
30年もむかしから執行されている、
かなり厳しい儀式に対して、
10年くらい前に、
手術後、無治療患者群との比較データが出され、
無治療よりは、
5年後10年後の再発確率および生存確率が、
統計学的に有意に高いことが証明され、
その後、ACがすべての乳がんの再発予防の基礎になって、
ACに他の薬剤を上乗せするデータは出されていましたが、
根治手術後にタキサン系(ドセタキセルなど)を使った患者群と、
AC患者群との直接比較試験は、
行われていないと思っていました。
それは、ただ私の勉強不足だけでした。
手術が可能なステージⅠ~Ⅲの、
早期?乳がん1016名の患者さんへの根治手術後に、
無作為に
506名のドセタキセル+サイクロフォスファマイド(TC)
4回執行患者群と、
510名のAC4回執行患者群との、
直接比較データが、
2009年にアメリカで出されていました。
その結果は、
7年後の再発確率、生存確率ともに、
TC患者群のほうが、
AC患者群よりも、
有意に高かった、
というものでした。
何故7年後のデータなのかは不明です。
2009年の3年後だと、
ドセタキセルの特許が切れる可能性が考えられた、
などとは下衆の勘ぐりです。
実際には日本でドセタキセルの後発薬が出たのは今年でした。
それはともかく、
むかしACでの、
無治療患者群との直接比較データが出されている以上、
手術後無治療経過観察患者群との比較は、
人道的にできませんが、
このデータを見る限り、
根治手術後はACよりはTCのほうが、
7年後の予後は良いようです。
多くの場合、
患者さんが体感する副作用は、
TCのほうが、
ACよりは遥かに軽いようです。
現在、TCよりもACを優先する医療機関のほうか多く、
さらにACとTC(多くはT単独)を両方執行する方針が多くみられます。
両方が執行されると、
患者さんのQOLは相当に落ちると思いますが、
10年後程度の生存確率は、
向上する可能性は有り得ます。
しかし天寿を全うすることができる可能性の有無については、
誰も知りません。
また、この論文では、
ステージⅠ~Ⅲの手術可能な「早期乳がん」という、
ザックリとした一括りであり、
ステージごとの再発確率、生存確率については、
開示されていませんでした。
もし、そのデータが出されていても、
統計データとは、
大きな数の患者群から引き出された、
ただの統計学的な冷たい数字であり、
個々の患者さんの利益を担保するものではないことは、
言うまでもありません。
特に再発予防の治療の場合、
がん細胞という相手が見えないのですから、
その治療が有効なのか、
無効なのか、
個々の患者さんでは知る術はありません。
再発予防の治療でも、
唯一簡単に分かることは、
個々の患者さんが受ける副作用の軽重です。
勿論、副作用の多寡と、
効果とはまったく相関しません。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。
セカンドオピニオンを得るために来られた患者さんがいます。
手術後にドセタキセルでの治療を勧められていました。
乳がんの再発予防の抗がん剤治療については、
「アンスラサイクリン系+サイクロフォスファマイド」(AC)という、
30年もむかしから執行されている、
かなり厳しい儀式に対して、
10年くらい前に、
手術後、無治療患者群との比較データが出され、
無治療よりは、
5年後10年後の再発確率および生存確率が、
統計学的に有意に高いことが証明され、
その後、ACがすべての乳がんの再発予防の基礎になって、
ACに他の薬剤を上乗せするデータは出されていましたが、
根治手術後にタキサン系(ドセタキセルなど)を使った患者群と、
AC患者群との直接比較試験は、
行われていないと思っていました。
それは、ただ私の勉強不足だけでした。
手術が可能なステージⅠ~Ⅲの、
早期?乳がん1016名の患者さんへの根治手術後に、
無作為に
506名のドセタキセル+サイクロフォスファマイド(TC)
4回執行患者群と、
510名のAC4回執行患者群との、
直接比較データが、
2009年にアメリカで出されていました。
その結果は、
7年後の再発確率、生存確率ともに、
TC患者群のほうが、
AC患者群よりも、
有意に高かった、
というものでした。
何故7年後のデータなのかは不明です。
2009年の3年後だと、
ドセタキセルの特許が切れる可能性が考えられた、
などとは下衆の勘ぐりです。
実際には日本でドセタキセルの後発薬が出たのは今年でした。
それはともかく、
むかしACでの、
無治療患者群との直接比較データが出されている以上、
手術後無治療経過観察患者群との比較は、
人道的にできませんが、
このデータを見る限り、
根治手術後はACよりはTCのほうが、
7年後の予後は良いようです。
多くの場合、
患者さんが体感する副作用は、
TCのほうが、
ACよりは遥かに軽いようです。
現在、TCよりもACを優先する医療機関のほうか多く、
さらにACとTC(多くはT単独)を両方執行する方針が多くみられます。
両方が執行されると、
患者さんのQOLは相当に落ちると思いますが、
10年後程度の生存確率は、
向上する可能性は有り得ます。
しかし天寿を全うすることができる可能性の有無については、
誰も知りません。
また、この論文では、
ステージⅠ~Ⅲの手術可能な「早期乳がん」という、
ザックリとした一括りであり、
ステージごとの再発確率、生存確率については、
開示されていませんでした。
もし、そのデータが出されていても、
統計データとは、
大きな数の患者群から引き出された、
ただの統計学的な冷たい数字であり、
個々の患者さんの利益を担保するものではないことは、
言うまでもありません。
特に再発予防の治療の場合、
がん細胞という相手が見えないのですから、
その治療が有効なのか、
無効なのか、
個々の患者さんでは知る術はありません。
再発予防の治療でも、
唯一簡単に分かることは、
個々の患者さんが受ける副作用の軽重です。
勿論、副作用の多寡と、
効果とはまったく相関しません。
以上 文責 梅澤 充
著者に許可無く当ブログの文章をインターネットその他に転記・転載することは堅く禁じます。