ガンという病気は、年齢が高くなればなるほど、発生確率は高くなります。
周りを見渡しても、20歳代でガンが発生したというお知り合いは
ほとんどいないではないかと思いますが、
60歳70歳さらに80歳以上になると、
「あの人も、あの人もガンだった。」と思い当たる方が必ず何人かいるはずです。
現在の日本では70歳代はまだ高齢者という感じではなく、
皆さんお元気ですが、
80歳を超えると、一部のお元気な方々以外は、
「お年寄り」の仲間になってきます。
その80歳を超えた高齢者にこそ、ガンは高頻度に発生してきます。
昨年名古屋で開催された日本癌治療学会でも、
高齢者のガン治療、特に手術治療についての演題がたくさん出されていました。
それらの発表は、「高齢者でも、このように工夫すれば安全に手術ができる」
という内容が多かったのですが、
「リスクの高い手術を安全に行なう」ことも非常に重要なことでり、
その技術を研究、開発、確立してゆくことは、医学の大きな進歩になります。
しかし、その発表を聞いている時、ひねくれモノの私には、
「手術をしないという選択肢はないものか」という考えが頭を過ぎりました。
当ブログでも何回も書いているとおり、
現在、ガンを根治させる方法は、手術で完全に切除してしまう以外にはありません。
根治するとは、ガンという病気から完全に離脱し、
一生涯その病気に悩まされることがないような状態を作ることです。
しかし、その一生涯には、患者さんにより大きな差があります。
例えば、80歳の男性の場合、平均的な一生涯はあと概ね8年です。
いわゆる平均余命です。
勿論、それより長い人もいれば、短い人もいます。
前立腺ガンなどでは、
「65歳以上あるいは70歳以上であれば手術は行なわない。
ホルモン治療だけで経過を診る。」
と、手術で根治を期待する年齢をはっきりと線引きして、
治療方針を決めている病院も多いようです。
手術の侵襲が小さくなく、反面ホルモン剤治療が非常に有効であるからです。
前立腺ガンは、ゾラデックスまたはリュープリンというホルモン剤だけで、
根治に近い状態にまで改善する症例も増えています。
他のガンの場合、
例えば早期胃ガンなどでは、多くの場合進行スピードは極めて緩徐です。
早期胃ガンといえども、胃の中でそれが発生してきた場所によっては、
胃を全部摘出しなければならない場合もあります。
当然、高齢者の場合、侵襲の大きな手術であれば、手術のリスク、
すなわち直接・間接は問わず、
手術により寿命を縮めてしまう可能性もでてきます。
また、胃を全部取る手術をすれば、それによる食事摂取が困難になるなどの
術後障害も、必ず出現します。
今現在、全く無症状で毎日、美味しく、楽しく、食生活を楽しんでおられるお年寄りの、
胃を切除してよいものなのか否か、とても迷います。
やはり進行スピードの、極めて遅い高齢者乳ガンでも同様です。
散々迷った挙句、ご家族およびご本人と時間をかけて相談をして、
手術を行なわずに、極少量の抗癌剤治療で経過を診ている患者さんが現在5人います。
90歳の乳ガン患者さんを最高齢に、
86歳の男性早期胃ガンの患者さんなど、
5名診ております。
90歳の患者さんはすでに5年経過しますが、
アリミデックスという毎日一錠のむホルモン剤だけで、
ガンは全く進行が止まったままでおります。
しかし、老化は止まりません。
残念ながら、余り遠くない将来、自然のお迎えが来てしまいそうです。
胃ガンで、胃全摘をしなければ根治できない86歳の早期胃ガンの患者さんも、
全く進行は止まり、一時期は、内視鏡でも病巣が見えなくなり、
ガン細胞が検出されない状態にもなりました。
再び、ガン細胞は検出されましたが、
ガン病巣自身は全く進行していません。
この患者さんも老化だけは確実に進んでいます。
この方は、食べることが唯一の楽しみという患者さんです。
手術は行なわなかった方が正解であったように思います。
万一、急速に進行したら、その時に手術を行うという手もあります。
他の患者さんでも、ガンの進行はみておりません。
逆に、ガン細胞が消失したままになっている患者さんもいます。
高齢のガン患者さんに対し、手術をしないで、
副作用が発現しない範囲の極僅かな抗癌剤だけで経過を診ていくことが、
正しい治療であるのか否かは判りません。
あらゆる可能性を説明し、ご本人およびご家族と相談した結果の治療です。
(半分認知症状態の患者さんは、ご家族だけですが・・・・)
ガンが発生して、「根治可能な手術ができるから、手術をする。」
という、画一的な考えではなく、
患者さんの年齢・体力・思想・認知状態に合わせて、
柔軟に対処してもいいように思います。
82歳で肺ガンが発見された私の実父に対し、
私は、手術という治療法は選択しませんでした。
幸い、そのガンは4年間増大を見ず、
86歳で、別の死因で亡くなりましたが、
それまで、肺がんの自覚症状は全く出ませんでした。
100歳以上の患者さんであれば、治療方針に大きな迷いはないのですが、
そこまでいかない高齢の患者さんが増えてきて、
その対処に迷っています。
イイ対処法があれば、教えて頂きたいと思います。
以上 文責 梅澤 充
周りを見渡しても、20歳代でガンが発生したというお知り合いは
ほとんどいないではないかと思いますが、
60歳70歳さらに80歳以上になると、
「あの人も、あの人もガンだった。」と思い当たる方が必ず何人かいるはずです。
現在の日本では70歳代はまだ高齢者という感じではなく、
皆さんお元気ですが、
80歳を超えると、一部のお元気な方々以外は、
「お年寄り」の仲間になってきます。
その80歳を超えた高齢者にこそ、ガンは高頻度に発生してきます。
昨年名古屋で開催された日本癌治療学会でも、
高齢者のガン治療、特に手術治療についての演題がたくさん出されていました。
それらの発表は、「高齢者でも、このように工夫すれば安全に手術ができる」
という内容が多かったのですが、
「リスクの高い手術を安全に行なう」ことも非常に重要なことでり、
その技術を研究、開発、確立してゆくことは、医学の大きな進歩になります。
しかし、その発表を聞いている時、ひねくれモノの私には、
「手術をしないという選択肢はないものか」という考えが頭を過ぎりました。
当ブログでも何回も書いているとおり、
現在、ガンを根治させる方法は、手術で完全に切除してしまう以外にはありません。
根治するとは、ガンという病気から完全に離脱し、
一生涯その病気に悩まされることがないような状態を作ることです。
しかし、その一生涯には、患者さんにより大きな差があります。
例えば、80歳の男性の場合、平均的な一生涯はあと概ね8年です。
いわゆる平均余命です。
勿論、それより長い人もいれば、短い人もいます。
前立腺ガンなどでは、
「65歳以上あるいは70歳以上であれば手術は行なわない。
ホルモン治療だけで経過を診る。」
と、手術で根治を期待する年齢をはっきりと線引きして、
治療方針を決めている病院も多いようです。
手術の侵襲が小さくなく、反面ホルモン剤治療が非常に有効であるからです。
前立腺ガンは、ゾラデックスまたはリュープリンというホルモン剤だけで、
根治に近い状態にまで改善する症例も増えています。
他のガンの場合、
例えば早期胃ガンなどでは、多くの場合進行スピードは極めて緩徐です。
早期胃ガンといえども、胃の中でそれが発生してきた場所によっては、
胃を全部摘出しなければならない場合もあります。
当然、高齢者の場合、侵襲の大きな手術であれば、手術のリスク、
すなわち直接・間接は問わず、
手術により寿命を縮めてしまう可能性もでてきます。
また、胃を全部取る手術をすれば、それによる食事摂取が困難になるなどの
術後障害も、必ず出現します。
今現在、全く無症状で毎日、美味しく、楽しく、食生活を楽しんでおられるお年寄りの、
胃を切除してよいものなのか否か、とても迷います。
やはり進行スピードの、極めて遅い高齢者乳ガンでも同様です。
散々迷った挙句、ご家族およびご本人と時間をかけて相談をして、
手術を行なわずに、極少量の抗癌剤治療で経過を診ている患者さんが現在5人います。
90歳の乳ガン患者さんを最高齢に、
86歳の男性早期胃ガンの患者さんなど、
5名診ております。
90歳の患者さんはすでに5年経過しますが、
アリミデックスという毎日一錠のむホルモン剤だけで、
ガンは全く進行が止まったままでおります。
しかし、老化は止まりません。
残念ながら、余り遠くない将来、自然のお迎えが来てしまいそうです。
胃ガンで、胃全摘をしなければ根治できない86歳の早期胃ガンの患者さんも、
全く進行は止まり、一時期は、内視鏡でも病巣が見えなくなり、
ガン細胞が検出されない状態にもなりました。
再び、ガン細胞は検出されましたが、
ガン病巣自身は全く進行していません。
この患者さんも老化だけは確実に進んでいます。
この方は、食べることが唯一の楽しみという患者さんです。
手術は行なわなかった方が正解であったように思います。
万一、急速に進行したら、その時に手術を行うという手もあります。
他の患者さんでも、ガンの進行はみておりません。
逆に、ガン細胞が消失したままになっている患者さんもいます。
高齢のガン患者さんに対し、手術をしないで、
副作用が発現しない範囲の極僅かな抗癌剤だけで経過を診ていくことが、
正しい治療であるのか否かは判りません。
あらゆる可能性を説明し、ご本人およびご家族と相談した結果の治療です。
(半分認知症状態の患者さんは、ご家族だけですが・・・・)
ガンが発生して、「根治可能な手術ができるから、手術をする。」
という、画一的な考えではなく、
患者さんの年齢・体力・思想・認知状態に合わせて、
柔軟に対処してもいいように思います。
82歳で肺ガンが発見された私の実父に対し、
私は、手術という治療法は選択しませんでした。
幸い、そのガンは4年間増大を見ず、
86歳で、別の死因で亡くなりましたが、
それまで、肺がんの自覚症状は全く出ませんでした。
100歳以上の患者さんであれば、治療方針に大きな迷いはないのですが、
そこまでいかない高齢の患者さんが増えてきて、
その対処に迷っています。
イイ対処法があれば、教えて頂きたいと思います。
以上 文責 梅澤 充