今日は、ある患者さんに対して、
絶対に言ってはいけないことを、
言ってしまったことへの反省です。
乳ガン再発の患者さんです。
肺に転移しています。
標準的抗癌剤治療、巷の怪しげな免疫治療その他イロイロな治療を経て、私のもとにきました。
半年ほどになります。
私のところで、経口抗癌剤治療とホルモン剤だけによる治療を開始しました。
さらに、ご希望があったので廉価な健康食品も併用しました。
はじめに飲んでもらった経口抗癌剤は、
いつもの私流で常用量の1/4の量から始めたのですが、それでも、
「アレを飲むと、身体が苦しくなる」と言われ、
自己中止されてしまいました。
そのクスリだけでも、
ホルモン剤や健康食品との相乗効果があったのか、
肺の転移病巣の進行は止まっていたので、
それを止めるのは、とても残念だったのですが、
患者さんが「辛い」というのであれば、
それに逆らうことはできません。
それを続けることを強要することはできません。
その量では副作用を訴える患者さんは見たことが無かったのですが・・・・
別の経口抗癌剤に変更しました。
それも、私流に常用量の約1/5 の量で始めました。
今度は、副作用(?)の訴えも無く、
もあまり期待していなかった転移病巣の僅かながらの縮小も見られました。
非常に良好な経過を辿っていました。
ここで問題が起きました。
その患者さんのガンは、腫瘍マーカーには現われず、
CTの検査でしか効果を判定することはできません。
肺の転移病巣の状態を見ることはできません。
単純写真では、確認しにくいところにあります。
また、肺に転移があれば、
その次に来る脳への転移を常に警戒しなければなりません。
脳転移は小さければ、ガンマーナイフという放射線照射装置で、
ほとんど副作用を伴わずに完全に消去できます。
その設備は、私の勤務するさいたま市の病院にもあります。
しかし、小さな脳転移病巣は自覚症状を出さないことがしばしばあります。
その、小さな脳転移の有無を調べるにもCT検査は必須です。
脳転移はMRI検査でもイイのですが、医療費が高くなります。
患者さんの経済的負担を考えれば、
採血による腫瘍マーカー検査だけで、
ガンの状態の推移が確認できれば一番イイのですが、
残念ながら、それはその患者さんでは不可能でした。
また、CTよりは廉価な超音波の方が、経済的な負担は少ないのですが、
それも不可能です。
肝臓転移であれば超音波という機械の目も使えるのですが、
肺転移や脳転移には、超音波検査は使えません。
その結果、頻回にCT検査を行なう必要が生じていました。
しかし、患者さんの経済的負担を考え、
本来肺の転移病巣を観るなら、
造影CTを撮りたいところですが、
患者さんの自己負担は10000円前後になってしまいます。
単純CTでは、3000円強。
超音波検査ならば1700円程度で済みます。
経済的にあまり豊ではない患者さんでしたので、
ギリギリの選択をしていたのですが、
先日、その患者さんに
「また肺のCT検査をしましょう。大きくなってなければイイですね。」
と話したところ、
「そんなに何度もCTの検査をするのは、
身体によくないと、友達の患者に言われたから、
今日はCT検査は受けません。」
と、言われました。
「病気が発見されていない健常人に対して、
頻回な放射線検査を行なうことはイイことではない」
は事実です。
それは、発ガンを誘発する恐れが皆無ではないからです。
どうも、患者さん仲間のお友達はそのことと混同されて、
親切心からでしょうけれども、
その患者さんに忠告してしまったようです。
「あなたの場合は、すでに肺に転移したガンが存在しているのであり、
そのガンがあなたの寿命を短くする可能性に比べたら、
CT検査により発生した新たなガンが、
あなたの命を縮める可能性は、考える必要はないと思う。
交通事故に遭うのが怖くて、一生涯外出しないで
家に閉じこもったまま生活していくのと同じようなものですよ。
副作用が怖くてインフルエンザの予防注射をしないのと同じですよ。」
さらに、
「あなたの場合は、CTの目を使って、転移病巣の状態を確認していかないと、
治療はできないのですよ。
病巣が拡大しているのか、縮小しているのか、変化なしなのか、
たとえ極少量といえども抗癌剤を使っているのだから、
状態を調べながらでなければ治療はできませんよ。」
とまで、説明しましたが、
「そんなに何回もCTやっちゃダメと、お友達に言われたから。
今日は検査を受けません。」
の一点張りです。
まだ、経済的負担を理由にしてくれれば、私としても
かなり無謀な「検査なしの抗癌剤治療」を続行することもできたのですが、
「頻回なCT検査が身体によくない」を理由に、
その患者さんに絶対に必要な検査を行なわずに、
抗癌剤を処方し続けることはできません。
また、彼女の言う、「頻回なCT検査などいいものではない」ことなど、
素人でも知っていることです。
それを、医者である私が患者さんに勧めるということは、
「私(梅澤)が患者さんの身体のことを考えずに、
害のある無謀な検査を平気で行なっている」
と解釈されます。
無い知恵を目一杯絞り、
最善と考える治療をしている人間に対してあまりにも失礼です。
そこまできて、とうとう
「そのお友達の患者さんの行っている病院に行って下さい。
私はこれ以上あなたを診ることはできません。
治療は患者と医者の信頼関係がなくなったらお終いです。」
と言ってしまいました。
この患者さんに対しては、仕方がなったとも思いますが、
まだ、モヤモヤした、うしろめたいような、嫌な気分が残っています。
イロイロと考えさせられる事件でした。
以上 文責 梅澤 充
絶対に言ってはいけないことを、
言ってしまったことへの反省です。
乳ガン再発の患者さんです。
肺に転移しています。
標準的抗癌剤治療、巷の怪しげな免疫治療その他イロイロな治療を経て、私のもとにきました。
半年ほどになります。
私のところで、経口抗癌剤治療とホルモン剤だけによる治療を開始しました。
さらに、ご希望があったので廉価な健康食品も併用しました。
はじめに飲んでもらった経口抗癌剤は、
いつもの私流で常用量の1/4の量から始めたのですが、それでも、
「アレを飲むと、身体が苦しくなる」と言われ、
自己中止されてしまいました。
そのクスリだけでも、
ホルモン剤や健康食品との相乗効果があったのか、
肺の転移病巣の進行は止まっていたので、
それを止めるのは、とても残念だったのですが、
患者さんが「辛い」というのであれば、
それに逆らうことはできません。
それを続けることを強要することはできません。
その量では副作用を訴える患者さんは見たことが無かったのですが・・・・
別の経口抗癌剤に変更しました。
それも、私流に常用量の約1/5 の量で始めました。
今度は、副作用(?)の訴えも無く、
もあまり期待していなかった転移病巣の僅かながらの縮小も見られました。
非常に良好な経過を辿っていました。
ここで問題が起きました。
その患者さんのガンは、腫瘍マーカーには現われず、
CTの検査でしか効果を判定することはできません。
肺の転移病巣の状態を見ることはできません。
単純写真では、確認しにくいところにあります。
また、肺に転移があれば、
その次に来る脳への転移を常に警戒しなければなりません。
脳転移は小さければ、ガンマーナイフという放射線照射装置で、
ほとんど副作用を伴わずに完全に消去できます。
その設備は、私の勤務するさいたま市の病院にもあります。
しかし、小さな脳転移病巣は自覚症状を出さないことがしばしばあります。
その、小さな脳転移の有無を調べるにもCT検査は必須です。
脳転移はMRI検査でもイイのですが、医療費が高くなります。
患者さんの経済的負担を考えれば、
採血による腫瘍マーカー検査だけで、
ガンの状態の推移が確認できれば一番イイのですが、
残念ながら、それはその患者さんでは不可能でした。
また、CTよりは廉価な超音波の方が、経済的な負担は少ないのですが、
それも不可能です。
肝臓転移であれば超音波という機械の目も使えるのですが、
肺転移や脳転移には、超音波検査は使えません。
その結果、頻回にCT検査を行なう必要が生じていました。
しかし、患者さんの経済的負担を考え、
本来肺の転移病巣を観るなら、
造影CTを撮りたいところですが、
患者さんの自己負担は10000円前後になってしまいます。
単純CTでは、3000円強。
超音波検査ならば1700円程度で済みます。
経済的にあまり豊ではない患者さんでしたので、
ギリギリの選択をしていたのですが、
先日、その患者さんに
「また肺のCT検査をしましょう。大きくなってなければイイですね。」
と話したところ、
「そんなに何度もCTの検査をするのは、
身体によくないと、友達の患者に言われたから、
今日はCT検査は受けません。」
と、言われました。
「病気が発見されていない健常人に対して、
頻回な放射線検査を行なうことはイイことではない」
は事実です。
それは、発ガンを誘発する恐れが皆無ではないからです。
どうも、患者さん仲間のお友達はそのことと混同されて、
親切心からでしょうけれども、
その患者さんに忠告してしまったようです。
「あなたの場合は、すでに肺に転移したガンが存在しているのであり、
そのガンがあなたの寿命を短くする可能性に比べたら、
CT検査により発生した新たなガンが、
あなたの命を縮める可能性は、考える必要はないと思う。
交通事故に遭うのが怖くて、一生涯外出しないで
家に閉じこもったまま生活していくのと同じようなものですよ。
副作用が怖くてインフルエンザの予防注射をしないのと同じですよ。」
さらに、
「あなたの場合は、CTの目を使って、転移病巣の状態を確認していかないと、
治療はできないのですよ。
病巣が拡大しているのか、縮小しているのか、変化なしなのか、
たとえ極少量といえども抗癌剤を使っているのだから、
状態を調べながらでなければ治療はできませんよ。」
とまで、説明しましたが、
「そんなに何回もCTやっちゃダメと、お友達に言われたから。
今日は検査を受けません。」
の一点張りです。
まだ、経済的負担を理由にしてくれれば、私としても
かなり無謀な「検査なしの抗癌剤治療」を続行することもできたのですが、
「頻回なCT検査が身体によくない」を理由に、
その患者さんに絶対に必要な検査を行なわずに、
抗癌剤を処方し続けることはできません。
また、彼女の言う、「頻回なCT検査などいいものではない」ことなど、
素人でも知っていることです。
それを、医者である私が患者さんに勧めるということは、
「私(梅澤)が患者さんの身体のことを考えずに、
害のある無謀な検査を平気で行なっている」
と解釈されます。
無い知恵を目一杯絞り、
最善と考える治療をしている人間に対してあまりにも失礼です。
そこまできて、とうとう
「そのお友達の患者さんの行っている病院に行って下さい。
私はこれ以上あなたを診ることはできません。
治療は患者と医者の信頼関係がなくなったらお終いです。」
と言ってしまいました。
この患者さんに対しては、仕方がなったとも思いますが、
まだ、モヤモヤした、うしろめたいような、嫌な気分が残っています。
イロイロと考えさせられる事件でした。
以上 文責 梅澤 充



