先日、東京にある、誰でも知っている、
とあるガン治療専門の大病院で、
術後の補助化学療法を受けている患者さんがセカンドオピニオンに来られました。
2006年11月19日の「再発予防の抗癌剤治療」
をはじめ何回も書きましたが、
術後の再発予防の標準的抗癌剤治療は
再発確率を抑える、
すなわち天寿をまっとうする確率を向上させることが、
ハッキリと確認されている治療もたくさんありますから、
多少つらくても、是非受けるべき治療だと考えています。
そして、その治療を行うときには、
抗癌剤のターゲットとなるガン細胞が見えないのですから、
治療指針となるのはエビデンスだけです。
エビデンスがハッキリしている標準的抗癌剤治療が推奨されます。
現在、患者さんの強い要望で、
エビデンスの無い治療を行っている方もいますが・・・
再発予防の抗癌剤治療の場合には
私が現在行っているような、
エビデンスを無視して、
存在するガンそのものを治療の道標にして、
ガンと共存して長生きしていくことを目指す、
エビデンスの無い休眠療法的な抗癌剤治療は行うべきではないと考えています。
しかし、そのご相談の患者さんと、その病院の場合は、
チョット考えさせられてしまいました。
3週間に一回の割合で、
外来でエビデンスどおりの抗癌剤の点滴を受けます。
そこまでは良いのですが、
次の点滴の予定日まで、
通院の指示は一切無しです。
そして、初回の点滴治療を行ったあと、
指示通りに3週間目にその病院の外来に抗癌剤の点滴を受けに行くと、
当然ながら先ず採血をされました。
その時、白血球が1100しかなく。
その日は、抗癌剤の点滴は中止。
その一週間後には、白血球は増加しており、
予定通りエビデンスに従い抗癌剤の点滴を行いました。
その後、3週間目の来院指示を受けて帰宅しましたが、
時間が経つにつれて、
患者さんの方で、白血球の減少があるのか否か気になり、
10日目にわかすぎファミリークリニック(左袖にリンク)に
相談に来ました。
その時白血球は900でした。
幸い、感染症は併発していませんでしたが、
尋常なことではありません。
白血球が1100に下がった初回抗癌剤点滴のときにも、
顆粒球という感染防御に重要な白血球が大きく低下していました。
その反応を見たならば、
次の抗癌剤点滴の後には、
1週間後や10日後に再度来院して、
白血球の数をシッカリ確認するべきだと思います。
幸い大事には至りませんでしたが、
一歩間違えれば、悲惨な結末だって起こりうる状況です。
その患者さんは
「ガン治療の専門病院だから大丈夫、信頼していた。」
「最善の治療をしてもらえるものだと信じていた。」
と、多くの患者さんと同じような勘違いをされていましたが、
たしかに、ガン治療の専門病院であり、
標準的抗癌剤治療しか行っていませんから、
大量の抗癌剤を使った治療には、
副作用対策も含めて、とても長けています。
標準的抗癌剤治療を私などの外科医に行わせるのは愚かなことです。
しかし、皆が「あそこなら大丈夫」などと、同じことを考えるから、
その病院、医者のキャパシティーを遥かに超えた患者さんが
集中してしまいます。
そんな状態で、
白血球の数を調べるために、
外来抗癌剤治療の患者さんの来院数を増やすことは、
今でもパンク寸前の状態なのに、
不可能です。
もしかすると、多大な副作用が当たり前という
標準的抗癌剤治療だけを行っている
その病院の腫瘍内科医は、
その程度の白血球の減少は予想しており、
「想定内で、大したことは無い」
と、考えた上の治療計画だったのかも知れません。
そうなると名人芸です。
私などにはとてもできません。
昔、私の先輩で、
「そんなに切ったら死んじゃう!」
というギリギリのところまで切除して、
患者さんは何事も無かったかのように無事退院していく、
という名人外科医がいましたが、
(今でも彼は名人です)
その病院の腫瘍内科医は、名人外科医のように、
「紙一重のところで、メスを止める」
天性の技量をお持ちなのかも知れません。
しかし、私には、
忙しくてそこまで手が回らないだけで、
たまたま、ラッキーで
事故が起きなかっただけ、
のように思えてなりません。
下衆の勘ぐりでしょうか。
いずれにせよ、
私は、その病院では、そのご相談の患者さんは
術後の補助抗癌剤治療も行うべきではないと考えました。
術後再発予防の標準的抗癌剤治療には
シッカリした従うべきエビデンスがあります。
しかし、そのエビデンスというのは、
同じ状態の患者さんが何百人何千人何万人といたならば、
それを行ったグループとそうでないグループを比較した場合、
その治療を行った方が、
再発確率が減少し長生きできる確率が高いから得だという平均の数字です。
一人一人の患者さんについての検討はなされていません。
十把一絡げで、損得を決めているだけです。
個々の患者さんについて、その治療の途中経過など検討されていません。
当然標準的抗癌剤治療を行えば事故も起こりえます。
さらに、その治療を受けたがために、
耐え難い抗癌剤治療の後遺症に悩まされる患者さんも出てきます。
当然、治療を受けなければ抗癌剤の副作用はありません。
その治療により、得する患者さんも、損をする患者さんもいます。
「平均すると、得する患者さんの方が多い」というだけです。
そこまで考えると、
この患者さんにとって、
その治療を続けることが本当に得策か否か迷います。
少なくとも、その病院で治療を続けることだけは避けた方が良いように思います。
エビデンスに従うべき術後の標準的抗癌剤治療でも、
「エビデンスとは十把一絡げの平均数字」だということを忘れないで、
その時々の状況により、
個々の患者さんに最善と考えられる治療を模索してください。
以上 文責 梅澤 充
とあるガン治療専門の大病院で、
術後の補助化学療法を受けている患者さんがセカンドオピニオンに来られました。
2006年11月19日の「再発予防の抗癌剤治療」
をはじめ何回も書きましたが、
術後の再発予防の標準的抗癌剤治療は
再発確率を抑える、
すなわち天寿をまっとうする確率を向上させることが、
ハッキリと確認されている治療もたくさんありますから、
多少つらくても、是非受けるべき治療だと考えています。
そして、その治療を行うときには、
抗癌剤のターゲットとなるガン細胞が見えないのですから、
治療指針となるのはエビデンスだけです。
エビデンスがハッキリしている標準的抗癌剤治療が推奨されます。
現在、患者さんの強い要望で、
エビデンスの無い治療を行っている方もいますが・・・
再発予防の抗癌剤治療の場合には
私が現在行っているような、
エビデンスを無視して、
存在するガンそのものを治療の道標にして、
ガンと共存して長生きしていくことを目指す、
エビデンスの無い休眠療法的な抗癌剤治療は行うべきではないと考えています。
しかし、そのご相談の患者さんと、その病院の場合は、
チョット考えさせられてしまいました。
3週間に一回の割合で、
外来でエビデンスどおりの抗癌剤の点滴を受けます。
そこまでは良いのですが、
次の点滴の予定日まで、
通院の指示は一切無しです。
そして、初回の点滴治療を行ったあと、
指示通りに3週間目にその病院の外来に抗癌剤の点滴を受けに行くと、
当然ながら先ず採血をされました。
その時、白血球が1100しかなく。
その日は、抗癌剤の点滴は中止。
その一週間後には、白血球は増加しており、
予定通りエビデンスに従い抗癌剤の点滴を行いました。
その後、3週間目の来院指示を受けて帰宅しましたが、
時間が経つにつれて、
患者さんの方で、白血球の減少があるのか否か気になり、
10日目にわかすぎファミリークリニック(左袖にリンク)に
相談に来ました。
その時白血球は900でした。
幸い、感染症は併発していませんでしたが、
尋常なことではありません。
白血球が1100に下がった初回抗癌剤点滴のときにも、
顆粒球という感染防御に重要な白血球が大きく低下していました。
その反応を見たならば、
次の抗癌剤点滴の後には、
1週間後や10日後に再度来院して、
白血球の数をシッカリ確認するべきだと思います。
幸い大事には至りませんでしたが、
一歩間違えれば、悲惨な結末だって起こりうる状況です。
その患者さんは
「ガン治療の専門病院だから大丈夫、信頼していた。」
「最善の治療をしてもらえるものだと信じていた。」
と、多くの患者さんと同じような勘違いをされていましたが、
たしかに、ガン治療の専門病院であり、
標準的抗癌剤治療しか行っていませんから、
大量の抗癌剤を使った治療には、
副作用対策も含めて、とても長けています。
標準的抗癌剤治療を私などの外科医に行わせるのは愚かなことです。
しかし、皆が「あそこなら大丈夫」などと、同じことを考えるから、
その病院、医者のキャパシティーを遥かに超えた患者さんが
集中してしまいます。
そんな状態で、
白血球の数を調べるために、
外来抗癌剤治療の患者さんの来院数を増やすことは、
今でもパンク寸前の状態なのに、
不可能です。
もしかすると、多大な副作用が当たり前という
標準的抗癌剤治療だけを行っている
その病院の腫瘍内科医は、
その程度の白血球の減少は予想しており、
「想定内で、大したことは無い」
と、考えた上の治療計画だったのかも知れません。
そうなると名人芸です。
私などにはとてもできません。
昔、私の先輩で、
「そんなに切ったら死んじゃう!」
というギリギリのところまで切除して、
患者さんは何事も無かったかのように無事退院していく、
という名人外科医がいましたが、
(今でも彼は名人です)
その病院の腫瘍内科医は、名人外科医のように、
「紙一重のところで、メスを止める」
天性の技量をお持ちなのかも知れません。
しかし、私には、
忙しくてそこまで手が回らないだけで、
たまたま、ラッキーで
事故が起きなかっただけ、
のように思えてなりません。
下衆の勘ぐりでしょうか。
いずれにせよ、
私は、その病院では、そのご相談の患者さんは
術後の補助抗癌剤治療も行うべきではないと考えました。
術後再発予防の標準的抗癌剤治療には
シッカリした従うべきエビデンスがあります。
しかし、そのエビデンスというのは、
同じ状態の患者さんが何百人何千人何万人といたならば、
それを行ったグループとそうでないグループを比較した場合、
その治療を行った方が、
再発確率が減少し長生きできる確率が高いから得だという平均の数字です。
一人一人の患者さんについての検討はなされていません。
十把一絡げで、損得を決めているだけです。
個々の患者さんについて、その治療の途中経過など検討されていません。
当然標準的抗癌剤治療を行えば事故も起こりえます。
さらに、その治療を受けたがために、
耐え難い抗癌剤治療の後遺症に悩まされる患者さんも出てきます。
当然、治療を受けなければ抗癌剤の副作用はありません。
その治療により、得する患者さんも、損をする患者さんもいます。
「平均すると、得する患者さんの方が多い」というだけです。
そこまで考えると、
この患者さんにとって、
その治療を続けることが本当に得策か否か迷います。
少なくとも、その病院で治療を続けることだけは避けた方が良いように思います。
エビデンスに従うべき術後の標準的抗癌剤治療でも、
「エビデンスとは十把一絡げの平均数字」だということを忘れないで、
その時々の状況により、
個々の患者さんに最善と考えられる治療を模索してください。
以上 文責 梅澤 充