4月5日の毎日新聞社配信の記事に興味深いものがありました。
外科医志望、このまま減り続ければ…10年後ゼロ
◇学会アンケート「後輩に勧めず」28%
過酷な勤務や医療事故のリスクが大きいことなどを理由に、かつて花形ともいわれた外科が崩壊の危機に直面している実態が、日本外科学会(約3万8000人)のアンケートで分かった。約3割の外科医が後輩に外科を勧めようとは思わないことなどが判明。外科医のなり手は今後も減り続けるとみられ、新たな学会入会者は10年後にゼロになる計算という。小児科や産科だけでなく、外科でも深刻な事態が進んでおり、学会長の門田(もんでん)守人・大阪大医学系研究科教授は「人とカネを増やす政策を」と訴えている。
大阪市で4日あった関西プレスクラブ定例会で、門田教授が明らかにしたもので、11日から同市で開く日本外科学会定期学術集会で発表する。昨年11月、インターネットで実施し、会員1276人が回答した。
外科志望者が減る理由(複数回答)で多かったのは、▽労働時間が長い▽時間外勤務が多い▽医療事故のリスクが高い▽訴訟リスクが高い▽賃金が少ない----で、いずれも約7割に達した。
勤務時間の週平均は、診療所(開業医)で47・7時間、病院で68・8時間となり大きな差があった。大学病院勤務では「80時間以上」と答えた医師が2割を超えた。また、当直明け手術は「いつも」「しばしば」がいずれも約3割に上り、「まれに」(13%)を合わせ計72%が参加しており、過酷な勤務を裏付けた。
さらに、10%に医療訴訟の経験があり、示談の経験は11%。訴訟リスクが治療に影響すると答えたのは、「常に」「しばしば」「たまに」で計85%に達した。年収平均は全体で1385万円、病院の勤務医は1308万円、診療所は2553万円だった。
一方、半数以上の医師が仕事で満足を感じ、外科医を続けたいと回答したが、後輩に外科医を勧めようと思わないとした医師は28%に達した。同学会は、80年代には入会者が多かったが、過去20年間で激減しており、単純計算すると2018年にはゼロになるという。
門田教授は「日本では医師全体が少ない。医療費抑制政策で医療が崩壊した英国の教訓を生かさないといけない」と述べた。【根本毅】
現在の日本の外科医の置かれた状況を考えれば当然のことだと考えます。
現状での減少率のまま進めば、
10年後にゼロになるという試算のようですが、
外科医志願者が減少すれば、
さらに、現在外科医として働いている人間の仕事量はさらに増えます。
研修医として、その過酷な労働環境を見れば、
将来の外科医志願者はさらに減少することが予想されます。
減少率は加速度を増すことだと思います。
10年以内に志願者ゼロ、
その後は現役の外科医の老朽化(高齢化!)
本当に外科医が存在しない国になる日も遠くはないと思われます。
老いぼれ外科医に、
寝ずの番の当直などできません。
簡単に過労死してしまいます。
私が外科医になりたての20数年前
術後の経過が悪くICUに入った患者さんのために
30日間以上毎日泊り込みでその患者さん診て、
患者さんは奇跡的に生還しましたが、
30数日ぶりに自宅へ帰った先輩が、
翌朝自分のベットで冷たくなっているのを発見されたこともありました…
手術を受けるには、
中国や韓国、アメリカに行く時代になるのでしょうか。
日本の政府はガン治療拠点病院構想にはとても熱心なようですが、
“ガンを治す”手術を行う外科医が居なくなって、
拠点病院では何をするのでしょうか。
手術不能の進行ガン患者さんだけを対象に、
ひたすら標準的抗癌剤治療だけを行う構想でしょうか。
これからの日本では、
産科医不足で子供も産めない。
運良く、出産できても、
小児科医不足から、
その子供が病気になったら誰も診てくれない。
何事もなくその子が成長して、
大人になったとき、ガンになっても、手術はできない。
そんな絶望的な世の中になるのでしょうか。
私は、今はほとんどメスを持つことはなくなりましたが、外科医です。
外科医だから言うのではありませんが、
外科医の減少は、医者の責任ではありません。
誰にも認められている職業選択の自由から、
外科医を志望しないだけのことです。
誰でも、自分の一生の仕事を選ぶとき
「▽労働時間が長い▽時間外勤務が多い▽医療事故のリスクが高い
▽訴訟のリスクが高い▽賃金が少ない」ことが、分かっていたら、
その職種を敢えて選択はしないと思います。
現在の日本の、他人への甘え、責任転嫁の
社会風潮から考えれば、当然の結果のように思いますが、
悲しいことだと思います。
患者さんにとって最善の治療を求めたい気持ちは、
誰でも一緒だと思いますが、
その時、責任転嫁の姿勢が少しでも見えてしまったならば、
医者は「▽訴訟のリスクが高い」ことを恐れ、
そのリスクの一番低い治療を選択します。
ガンの治療では、
標準的な抗癌剤治療が、
それを実施する医者にとっては一番安全です。何が起きても、すべてエビデンスですから、
医者の責任にはなりません。
イギリスの医療の崩壊については知りませんが、
現在、日本の医療は崩壊へまっしぐらに突き進んでいるように感じます。
何故そうなってしまったのか、
責任の一端は現在の日本人の考え方そのものにあるように感じます。
以上 文責 梅澤 充
匿名で幼稚な理論を振り回してないで、堂々と実名で意見を書きなさい。
「仕方ない」?何を言ってるんですか。
観念や理念で語れるほど生も死も甘っちょろくありませんよ。
あなた自身が死を目前にして、心から本当にそう思えれば本物ですが。
2011-07-31 日 16:09:26 /URL /矢城 /
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何が悪いのか分からない
医療のアクセスが減って、医療が受けられないのは仕方がないことです。何が悪いのか分からない。
第一に、理想の医療は膨大なカネが掛るので実現不可能。理想を追うのはナンセンスで、妥協する必要がある。
誰かが犠牲になる?仕方がない。それが妥協だ。
第二に、医師の抑制を主張したのは医師会でしょう?供給過剰による給与削減を恐れた。
ま、儲かって良かったな(笑)。忙殺されているらしいが。
とにかく現況には医師全体にも責任がある。医師の悪いところは、自分の責任を棚にあげるところだと思う。それじゃ話も進まないのでは?
第三に、有能な政府を求めるほうがおかしい。
役人なんて無能に決まっている訳で、有能だったら役人になんぞならない。政府批判をしてもメリットはない。さっさと医療を崩壊させて、体制を作り直したほうが早い。
あ、犠牲が出る?
仕方ないでしょう。
書いているこの自分が自分が犠牲になろうと、「仕方ないな」と思う。
犠牲は必要です。
だいいち愚民が犠牲になるんでしょ?
自然の摂理じゃないか。
最後に、犠牲になるっていっても大多数は老人じゃないですか?老人ばっかりじゃないか。病院なんて。
老人死んで、何か困るのかな。どうせ数年後には死ぬんでしょうが。老人数年の寿命なんてどうでもいいがな。
2011-07-31 日 03:13:51 /URL /通りすがり /
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はじめまして。
病気や怪我をすると人間ってどうしても気落ちしてしまいますが、出来るだけ前向きに頑張りたいものですよね。
私は腎移植や肝移植について勉強をしています。
助かる命がそこにあるのなら、少しでもお役に立ちたいと日々考えています。
こちらのサイトはそんな私の勉強になり、色々参考になりました。
ありがとうございました。
2011-04-11 月 13:43:01 /
URL /
腎移植について /
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外科医の減少に関して
将来希望する医師が減少しているのは何も産婦人科、小児科に限ったお話ではありません。外科に限らず、脳外科や救命医などもその数がさらに減少の一途を辿っております。その理由は激務であること、プライベートな時間もないこと、勤務時間に見合った報酬は貰えない事、などが具体的にあると思います。いわゆる時間の取れるといわれている科(実際にはどうか分かりませんが精神科、眼科、皮膚科など)の医師達との不透明な生活格差があります。
私が医師になりたての頃は、まだ救命にかける医師達は憧れ的な存在で、その場に居合わせただけで仕事に誇りを持って働いていた人達が多く存在していたと思います。それを横目で見ながら、自分も医師として大きくなっていきたいと願ったものです。かくいう私も15ヶ所以上の公立病院、大学を経て今に至りますが、最近特に感じることは社会構造の変化が、遂に医療福祉をも蝕みつつあるという現状です。これに対しては今の若い研修医達はさらに敏感で、始めは外科系を志していた若者が研修を終える頃には楽な科を選び始め、はたまた保健所の所長などを始めから希望して道を諦めて行くのを多数見かけました。私達の時代には例えば保健所勤務などは基礎研究者で臨床を出来ない人か、仕事を途中で断念したために一線に復帰できない人達が行くような印象がありましたが、今では立派な就職口となっています。これでは外科系の医師達は年老いていくばかりで、まさに「医療崩壊」が加速していくのみと思います。
さらに恐るべき事は、実はこの由々しき医療現場の事態は一般にはほとんど、いや全くといって良いほど知られていないという事です。現在がこういう状況であれば、その医師達が第一線を担う10年後、20年後はどうなってしまうのでしょうか?
政府や役人の政策はこうした医療崩壊の現状をよく理解したうえで、国民全体を守っていくには経済回復以外にもっと守らなければならないインフラ(教育、福祉、医療、建築)があることを理解するべきと思います。これらが保てなくなった国に、国民は何を期待して生きていけるというのでしょう。雑多に書いてしまいすみません。私も最近年をとったためでしょうか。普段口に出せないことを書き込むことで済ましているように思います。
2007-09-23 日 11:10:43 /URL /Dr.Maradona /
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2007-09-12 水 00:34:12 / / /
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専門外ですが心配しています
梅澤 充 様
ブログ読ませていただきました。
2年前に、ある県の「医療関係の某検討委員会」の公募委員となりました。
この委員就任が医療問題との係わり合いの第一歩となりました。
その結果、素人なりに、この2年間で分かったことの主要な点は次の3点です。
1)医療に関するデーター不足で、医療コストの実態を正確につかめないこと
2)その結果、厚生労働省の施策は、充分なデーターの裏づけのない場合が多いと思われること
3)老人医療費の適正化(医療費高騰抑制)も必要だが、「医療崩壊」の危機が進行していること。
この3点について次のように考えています。
医師の立場から、梅澤様からコメントをいただければ深甚。
イ、上記1,2)の問題は、レセプトのIT化の実現によって、データー分析が出来れば、解決するだろうと思います。
一刻も早くレセプトのIT化とその活用が実現することを主張しています。
(一部の医療関係者にIT化に熱心ではない方もいるかと聞きますが疑問です。)
ロ、3)の「医療崩壊」は、次の3点の改善によって、防止できないかと考えます。
①梅澤様のご指摘の「現在の日本人の考え方そのもの」にあることの改善。
②同じく梅澤様のご指摘の「医療事故・訴訟リスク」回避
③同様ご指摘がありました「医師の激務と収入」の改善
上記①ー③についても意見を述べます。
① 先ず、最初の「日本人の考え方」ですが、「医療とはどんな行為か国民に対する啓蒙」が必要だと考えます。
この啓蒙は、医療関係者・団体に是非行ってほしいと思います。
また、二番目の「医療事故・訴訟リスク」の改善があれば、当然今の国民の一部にある、医療責任追及の考えは減少すると思います。
② 二番目の「医療事故・訴訟」リスク回避は、次の二つの制度によって改善されるであろうと考えますがいかがでしょうか
・「医療版事故調査委員会」の制度化
・「無過失保証制度」の導入
勿論、前述の「医療の国民啓蒙」もリスク回避には重要です。
③ 三番目の「医師の激務と収入」の改善については、医療費の適正化の中で解決すべきと考えます。
レセプトのIT化による現状のデーター分析等によって、勤務医・開業医間の収入や勤務時間を改善できるのではないでしょうか
このような素人考えに加え、最も重要なことの一つに「国民の医療ニーズに応じた医療供給体制の整備」があります。
先ずこのような「ニーズに応じた医療供給体制(理念or目的)」があって、次にその「医療供給体制」の中で、「医療費抑制」をどのように進めるかを厚生労働省は、検討すべきでしょう。
ところが、現実は「医療費抑制」のために「医療供給体制」を、「勘?」や「少ないデーター」で制度を変更してきました。
つまり理念なき施策ないしは目的を見間違えている施策のように思います。
ところで、制度変更があれば、医療機関であれ、受診者であれ、当然変更後の制度の枠内で有利な行動をとるのは至極当然です。
この点を見込めないため、失敗を続けてきた厚生労働省に「医療崩壊」の責任の一端はあります。
2007-05-16 水 16:51:15 /
URL /
風間昭彦 /
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■医療消費者としての患者の視点 いままで3回に渡り患者の視点から見た「痛み」...
ブログを始めて、ネットを徘徊していろんな医師のブログを目にしたり、今日も梅澤先生のブログで読みました。「近づく医療崩壊!?」私も2月24日の日記は新聞記事からパクッてます。医療クライシス-----忍び寄る崩壊の足音------毎日新聞で「医療クライシス」というコラ...