ガンという病気そのもの、およびガン治療に対する、患者さんの間違った認識、誤解には、
毎日のように接します。
それが故に、患者さんが望むのとは違う方向の治療へ、迷い込んでしまう患者さんも大勢います。
その大きな原因の一つは、言うまでもなく、ガンという病気およびそれに対する真実を知らないからです。
その真実を知ってゆく上で、ガン医療の現場で、医者が使っている言葉の意味を正確に理解することは非常に重要です。
ガン医療の現場で使われる言葉の意味について説明します。
本日は、生存期間中央値(Median Survival Time MST)という言葉を説明します。
生存期間中央値
(Median Survival Time MST)
余り聞き慣れない言葉だと思います。
先ず、下のグラフをご覧下さい。
このグラフを生存曲線、カプランマイヤー曲線といいます。

実線(―)が、抗癌剤治療を行なった患者グループの曲線(短い直線のつながり)。
破線(---)は、無治療で経過を見た患者グループの曲線です。
治療開始時(無治療群は観察開始時点)は当然100%の患者さんが、元気だった訳ですけれども、時間の経過と同時に、残念ながらガンが進行し、一人また一人と、亡くなられてゆく患者さんの割合が増加してきます。
時間の経過とともに「生存率」は下がります。
従って2本の曲線はともに、右肩下がりになります。
そして、2本ともいずれゼロ点に到達します。
生存率ゼロ。すなわち全ての患者さんが亡くなられたことを意味します。
この曲線上で、半分(50%)の患者さんが亡くなられた時点までの期間のことを生存期間中央値(MST)といいます。
厳密に言うと、その治療を行って亡くなられた患者さんを、その亡くなるまでの時間の順に並べて、ちょうど真ん中の患者さんが亡くなられるまでの期間を表します。しかし話がゴチャゴチャしますので、半分の患者さんが亡くなるまでの期間と考えて概ね間違いありません。
現在ではこの生存期間中央値(MST)をもって患者さんの平均生存期間とみなします。
「"本当の平均生存期間"を出せばイイじゃないか。」と言われるかも知れませんが、100人の患者さんのデータを出すのに、99人は1年以内に亡くなられて、お一人だけもし50年間元気でおられたりした場合、その"本当の平均生存期間"のデータを出すのに50年間以上もかかってしまうことになり、事実上不可能ですから、この生存期間中央値をもって、概ねの平均生存期間と考えます。
この、データでは、抗癌剤治療を行なった患者グループでは、生存期間中央値は6ヶ月、
無治療で経過を診た患者グループでは4.5ヶ月でした。
すなわち、「抗癌剤治療を行なった方が、無治療でいるより1.5ヶ月長生きできる」というデータが出ています。
また、言い方を変えると、抗癌剤治療を行なっても半分の患者さんは、残念ながら6ヶ月以内に間違いなく死亡する、というデータでもあります。
さらに、皮肉な言い方をすれば、無治療でも、半分の患者さんは4.5ヶ月以上生きていることが出来る、ということにもなります。
なお、24ヶ月生きることが出来た患者さんは、抗癌剤治療グループで416名中28人(6.7%)。無治療グループでは362名中16名(4.4%)でした。
現在では、肺ガンの治療成績は、1995年のこのデータよりは進歩して、生存期間中央値で無治療よりは、3~4ヶ月程度の"長生き"が可能にはなってきています・・・・
また、このグラフのデータは、「メタアナリシス」(メタ解析)という、極めて信頼度の高い統計処理を行なって出されたデータです。
この「メタ解析」を通じて得られたデータは、様々な施設が独自に出しているデータとは比較にならないほど信頼度が高く、いずれ詳しく説明する「エビデンス」と言われるデータになります。
もう一つ、生存曲線を示します。
これは、切除不能の膵ガン患者さんで、5-FUという抗癌剤を使った時と、ジェムザールという抗癌剤を使った時の治療効果の差を見たものです。

これによると、ジェムザールを使った患者グループで生存期間中央値(MST)は5.7ヶ月。
5-FUのグループで4.4ヶ月でした。
従って、ジェムザールのグループの方が、生存期間中央値(MST)で1.3ヶ月長生きできることになります。
現在、ほとんど全ての種類のガンで、さまざまな治療法に対する、このデータ、すなわち生存曲線が出されていますが、それが患者さんに知らされることはほとんどありません。
これらのデータは、患者さんが、ご自身の治療法を決定する上で、極めて重要な判断材料になるはずです。
しかし、何故か、これらの非常に貴重なデータは、日本では患者さんのためのものではなく、お医者様だけのモノになっているようです。
このような、エビデンスといわれる、信憑性の高い実際のデータを患者さんが知ってしまったならば、
「辛い思いをしても、僅かな延命効果しかない、いわゆる標準的な抗癌剤治療など、受けたくない。」と考えてしまうであろうから、
患者さんには真実は伏せたまま、標準的な抗癌剤治療を勧める・・・・
下衆の勘ぐりでしょうか?
NHKが絶賛している、某がんセンターでも、この数字・データを提示された上で治療をはじめた患者さんは、まだ見たことがありません。
ホンの十数年前まで、全く延命効果のない治療を、強引に勧めていた病院ですから、当然でしょうが・・・・
ある治療を行ったならば、「それによりどれくらいの恩恵を受けられるのか」、
すなわち、ガン治療の場合、「その治療によりどれだけ長生きできるのか」、
ということは、患者さんが、その治療方法を選択する上で極めて重要な判断材料になるはずです。
これからは、ご自身の治療法を決定する際には、是非、主治医に、その治療による、
生存期間中央値(MST)について確認して、それに納得したならば、治療を受けるようにされるべきだと考えます。
以上 文責 梅澤 充
毎日のように接します。
それが故に、患者さんが望むのとは違う方向の治療へ、迷い込んでしまう患者さんも大勢います。
その大きな原因の一つは、言うまでもなく、ガンという病気およびそれに対する真実を知らないからです。
その真実を知ってゆく上で、ガン医療の現場で、医者が使っている言葉の意味を正確に理解することは非常に重要です。
ガン医療の現場で使われる言葉の意味について説明します。
本日は、生存期間中央値(Median Survival Time MST)という言葉を説明します。
生存期間中央値
(Median Survival Time MST)
余り聞き慣れない言葉だと思います。
先ず、下のグラフをご覧下さい。
このグラフを生存曲線、カプランマイヤー曲線といいます。

実線(―)が、抗癌剤治療を行なった患者グループの曲線(短い直線のつながり)。
破線(---)は、無治療で経過を見た患者グループの曲線です。
治療開始時(無治療群は観察開始時点)は当然100%の患者さんが、元気だった訳ですけれども、時間の経過と同時に、残念ながらガンが進行し、一人また一人と、亡くなられてゆく患者さんの割合が増加してきます。
時間の経過とともに「生存率」は下がります。
従って2本の曲線はともに、右肩下がりになります。
そして、2本ともいずれゼロ点に到達します。
生存率ゼロ。すなわち全ての患者さんが亡くなられたことを意味します。
この曲線上で、半分(50%)の患者さんが亡くなられた時点までの期間のことを生存期間中央値(MST)といいます。
厳密に言うと、その治療を行って亡くなられた患者さんを、その亡くなるまでの時間の順に並べて、ちょうど真ん中の患者さんが亡くなられるまでの期間を表します。しかし話がゴチャゴチャしますので、半分の患者さんが亡くなるまでの期間と考えて概ね間違いありません。
現在ではこの生存期間中央値(MST)をもって患者さんの平均生存期間とみなします。
「"本当の平均生存期間"を出せばイイじゃないか。」と言われるかも知れませんが、100人の患者さんのデータを出すのに、99人は1年以内に亡くなられて、お一人だけもし50年間元気でおられたりした場合、その"本当の平均生存期間"のデータを出すのに50年間以上もかかってしまうことになり、事実上不可能ですから、この生存期間中央値をもって、概ねの平均生存期間と考えます。
この、データでは、抗癌剤治療を行なった患者グループでは、生存期間中央値は6ヶ月、
無治療で経過を診た患者グループでは4.5ヶ月でした。
すなわち、「抗癌剤治療を行なった方が、無治療でいるより1.5ヶ月長生きできる」というデータが出ています。
また、言い方を変えると、抗癌剤治療を行なっても半分の患者さんは、残念ながら6ヶ月以内に間違いなく死亡する、というデータでもあります。
さらに、皮肉な言い方をすれば、無治療でも、半分の患者さんは4.5ヶ月以上生きていることが出来る、ということにもなります。
なお、24ヶ月生きることが出来た患者さんは、抗癌剤治療グループで416名中28人(6.7%)。無治療グループでは362名中16名(4.4%)でした。
現在では、肺ガンの治療成績は、1995年のこのデータよりは進歩して、生存期間中央値で無治療よりは、3~4ヶ月程度の"長生き"が可能にはなってきています・・・・
また、このグラフのデータは、「メタアナリシス」(メタ解析)という、極めて信頼度の高い統計処理を行なって出されたデータです。
この「メタ解析」を通じて得られたデータは、様々な施設が独自に出しているデータとは比較にならないほど信頼度が高く、いずれ詳しく説明する「エビデンス」と言われるデータになります。
もう一つ、生存曲線を示します。
これは、切除不能の膵ガン患者さんで、5-FUという抗癌剤を使った時と、ジェムザールという抗癌剤を使った時の治療効果の差を見たものです。

これによると、ジェムザールを使った患者グループで生存期間中央値(MST)は5.7ヶ月。
5-FUのグループで4.4ヶ月でした。
従って、ジェムザールのグループの方が、生存期間中央値(MST)で1.3ヶ月長生きできることになります。
現在、ほとんど全ての種類のガンで、さまざまな治療法に対する、このデータ、すなわち生存曲線が出されていますが、それが患者さんに知らされることはほとんどありません。
これらのデータは、患者さんが、ご自身の治療法を決定する上で、極めて重要な判断材料になるはずです。
しかし、何故か、これらの非常に貴重なデータは、日本では患者さんのためのものではなく、お医者様だけのモノになっているようです。
このような、エビデンスといわれる、信憑性の高い実際のデータを患者さんが知ってしまったならば、
「辛い思いをしても、僅かな延命効果しかない、いわゆる標準的な抗癌剤治療など、受けたくない。」と考えてしまうであろうから、
患者さんには真実は伏せたまま、標準的な抗癌剤治療を勧める・・・・
下衆の勘ぐりでしょうか?
NHKが絶賛している、某がんセンターでも、この数字・データを提示された上で治療をはじめた患者さんは、まだ見たことがありません。
ホンの十数年前まで、全く延命効果のない治療を、強引に勧めていた病院ですから、当然でしょうが・・・・
ある治療を行ったならば、「それによりどれくらいの恩恵を受けられるのか」、
すなわち、ガン治療の場合、「その治療によりどれだけ長生きできるのか」、
ということは、患者さんが、その治療方法を選択する上で極めて重要な判断材料になるはずです。
これからは、ご自身の治療法を決定する際には、是非、主治医に、その治療による、
生存期間中央値(MST)について確認して、それに納得したならば、治療を受けるようにされるべきだと考えます。
以上 文責 梅澤 充