2月17日は、エビデンスがなくなった場合には、
EBM(エビデンスに基づいた治療)を提唱しておられる、
日本の中心的なガン治療専門の病院では、
如何に対処しているのかについて、
邪推も込めて書きました。
本日は、そのエビデンスはどのように生れて、
その後どのようにEBM、
すなわち、そのエビデンスに基づいた治療へと、
発展していくのかについて書きます。
先進国の中では、胃ガン患者数が圧倒的に多い日本では、
当然その治療に関しては、世界の最先進国です。
手術技術・技量に関しては、まさに日本の独壇場ですが、
遅れているといわれる抗癌剤治療においても、
圧倒的な患者数を背景に世界をリードしていると言えます。
日本発のエビデンスが、今後も多数出てくると思います。
その治療による現在の数字は、
1月15日「ガン医療の現場で使われる言葉 エビデンスEBM(Evidence)」で紹介したとおりです。
その数字をエビデンスとして行なう標準的抗癌剤治療での、
生存期間中央値は、8ヶ月もありません。
すなわち、半分以上の患者さんは8ヶ月以内に亡くなるというエビデンスです。
勿論、新しい抗癌剤の開発や、投与方法の工夫により、現在では、
生存期間中央値が、300日を越える治療もでてきました。
340日というデータも出てきました。
さらに優れたデータも散発的に出てきています。
それらの治療は、いずれ治験という厳密な臨床試験を経て、
エビデンスに進化していき、
標準的抗癌剤治療として採用されることになります。
エビデンスはその内容も進化しています。
生存期間中央値については、
1月12日の「ガン医療の現場で使われる言葉 生存期間中央値」で説明したとおりです。
しかし、日本胃癌学会編「胃癌治療ガイドライン(医師用)」では、
様々な抗癌剤治療で、エビデンスはでているものの、
「進行再発胃癌に対する化学療法は、PS0〜2の症例には強く勧められるけれど、国内外の臨床試験からは推奨できるレジメンは無い。」
と書かれています。(レジメンとは抗癌剤治療方法のことです)
エビデンスに基づいた治療を推奨していながら、
「エビデンスはあるのに推奨できるレジメンは無い。」という状態です。
「各病院で、エビデンスを見て、適当に治療法を決めて下さい。」
というスタンスです。
推奨できない理由は、
欧米のエビデンスでは、日本人医師が使い慣れていないクスリを使っているとか、
治療成績はイイが、副作用が強すぎて死亡事故が多すぎる。などイロイロありますが、
エビデンス・標準的抗癌剤治療など言っている割に、
「エビデンスはあるのに推奨できるレジメンは無い。」
とは、なんとも不思議な話しです。
次に日本発の世界に誇れる治療成績を紹介します。
すべての肺ガンの15〜20%の割合で存在するといわれる、
肺の小細胞ガンと呼ばれるガンがあります。
進行スピード非常に速いガンで、手術で完治するケースは稀な、悪性度の高いガンです。
(限局型といわれる、手術で根治するタイプもあります。)
そのガンに対して、1990年頃から、EP療法と言われる、エトポシド(Etoposide)と、
シズプラチン(CDDP)という抗癌剤を組み合わせて使う治療が、
世界標準的とされてきました。
それに対し日本で開発された抗癌剤イリノテカン(Irinotecan)と
シズプラチンを組み合わせたIP療法という治療が、優れた効果を発揮することが判り、
EP療法との比較試験が日本で行われました。
患者さんを無作為に、EP群とIP群に分け、
それぞれの治療を行ないました。
臨床試験です。
当初200例以上で検討する予定でしたが、
途中経過で、
EP群の生存期間中央値が287日
IP群のそれは390日と大きく差がついたため、
それぞれ77例ずつの患者数で試験は中止されました。
IP療法の方が、EP療法より、103日長生きできることが判明しました。
IP療法における生存期間中央値390日、
1年生存率58.4%、2年生存率18.9%は、素晴らしい画期的な数字でした。
この誇るべき結果を得て、現在日本では、IP療法が、
ファーストライン(First Line)の標準的治療になっています。
ファーストラインの治療については、
2月17日に「エビデンスが無いときは?」で書きました。
しかし、IP療法のクジを引いた患者さんは、103日得しましたが、
EP療法のクジを引き当ててしまった患者さんはお気の毒です。
IP療法の方が優れていると、予想されるならば、
はじめからそちらだけを行なえばイイようにも思ってしまいますが、
それでは、エビデンスにはならず、広く世間に広がらない・・・
大事の前の小事ですかね〜
私にはできません。
ともかく、その様にしてファーストラインはめでたく決定されましたが、
次がありません。
現在、試行錯誤で検討されていますが、
イリノテカン同様に日本で開発された抗癌剤アムルビシンを使っての治療が、
恐らくセカンドラインの治療として定着していくものと思われます。
その前に、またくじ引きの臨床試験が待っているはずですが……
臨床試験は、4000万人の無保険者がいると言われるアメリカなどでは、
経済的な問題から、ガン治療を受けることができない患者さんが溢れています。
その様な患者さんでは、
その試験に参加すれば、無料で治療が受けられるという
非常に大きな恩恵があるので、
こぞってその試験に群がります。
一方、毎月健康保険料を支払っているほとんどの日本人であれば、
治療法を選択する権利があるのは、患者さん本人です。
臨床試験(治験)に反対するつもりは更々ありません。
医学の進歩のためには、通らざるを得ない道です。
しかし、その臨床試験を受ける時に、
どのような目的で、どのような結果が期待される試験であるのかを、
正確に理解してから、くじ引きをして下さい。
また、その時
「その主治医の身内の患者さんでも、その試験を受けさせるか否か?」
を是非確認して下さい。
以上 文責 梅澤 充
EBM(エビデンスに基づいた治療)を提唱しておられる、
日本の中心的なガン治療専門の病院では、
如何に対処しているのかについて、
邪推も込めて書きました。
本日は、そのエビデンスはどのように生れて、
その後どのようにEBM、
すなわち、そのエビデンスに基づいた治療へと、
発展していくのかについて書きます。
先進国の中では、胃ガン患者数が圧倒的に多い日本では、
当然その治療に関しては、世界の最先進国です。
手術技術・技量に関しては、まさに日本の独壇場ですが、
遅れているといわれる抗癌剤治療においても、
圧倒的な患者数を背景に世界をリードしていると言えます。
日本発のエビデンスが、今後も多数出てくると思います。
その治療による現在の数字は、
1月15日「ガン医療の現場で使われる言葉 エビデンスEBM(Evidence)」で紹介したとおりです。
その数字をエビデンスとして行なう標準的抗癌剤治療での、
生存期間中央値は、8ヶ月もありません。
すなわち、半分以上の患者さんは8ヶ月以内に亡くなるというエビデンスです。
勿論、新しい抗癌剤の開発や、投与方法の工夫により、現在では、
生存期間中央値が、300日を越える治療もでてきました。
340日というデータも出てきました。
さらに優れたデータも散発的に出てきています。
それらの治療は、いずれ治験という厳密な臨床試験を経て、
エビデンスに進化していき、
標準的抗癌剤治療として採用されることになります。
エビデンスはその内容も進化しています。
生存期間中央値については、
1月12日の「ガン医療の現場で使われる言葉 生存期間中央値」で説明したとおりです。
しかし、日本胃癌学会編「胃癌治療ガイドライン(医師用)」では、
様々な抗癌剤治療で、エビデンスはでているものの、
「進行再発胃癌に対する化学療法は、PS0〜2の症例には強く勧められるけれど、国内外の臨床試験からは推奨できるレジメンは無い。」
と書かれています。(レジメンとは抗癌剤治療方法のことです)
エビデンスに基づいた治療を推奨していながら、
「エビデンスはあるのに推奨できるレジメンは無い。」という状態です。
「各病院で、エビデンスを見て、適当に治療法を決めて下さい。」
というスタンスです。
推奨できない理由は、
欧米のエビデンスでは、日本人医師が使い慣れていないクスリを使っているとか、
治療成績はイイが、副作用が強すぎて死亡事故が多すぎる。などイロイロありますが、
エビデンス・標準的抗癌剤治療など言っている割に、
「エビデンスはあるのに推奨できるレジメンは無い。」
とは、なんとも不思議な話しです。
次に日本発の世界に誇れる治療成績を紹介します。
すべての肺ガンの15〜20%の割合で存在するといわれる、
肺の小細胞ガンと呼ばれるガンがあります。
進行スピード非常に速いガンで、手術で完治するケースは稀な、悪性度の高いガンです。
(限局型といわれる、手術で根治するタイプもあります。)
そのガンに対して、1990年頃から、EP療法と言われる、エトポシド(Etoposide)と、
シズプラチン(CDDP)という抗癌剤を組み合わせて使う治療が、
世界標準的とされてきました。
それに対し日本で開発された抗癌剤イリノテカン(Irinotecan)と
シズプラチンを組み合わせたIP療法という治療が、優れた効果を発揮することが判り、
EP療法との比較試験が日本で行われました。
患者さんを無作為に、EP群とIP群に分け、
それぞれの治療を行ないました。
臨床試験です。
当初200例以上で検討する予定でしたが、
途中経過で、
EP群の生存期間中央値が287日
IP群のそれは390日と大きく差がついたため、
それぞれ77例ずつの患者数で試験は中止されました。
IP療法の方が、EP療法より、103日長生きできることが判明しました。
IP療法における生存期間中央値390日、
1年生存率58.4%、2年生存率18.9%は、素晴らしい画期的な数字でした。
この誇るべき結果を得て、現在日本では、IP療法が、
ファーストライン(First Line)の標準的治療になっています。
ファーストラインの治療については、
2月17日に「エビデンスが無いときは?」で書きました。
しかし、IP療法のクジを引いた患者さんは、103日得しましたが、
EP療法のクジを引き当ててしまった患者さんはお気の毒です。
IP療法の方が優れていると、予想されるならば、
はじめからそちらだけを行なえばイイようにも思ってしまいますが、
それでは、エビデンスにはならず、広く世間に広がらない・・・
大事の前の小事ですかね〜
私にはできません。
ともかく、その様にしてファーストラインはめでたく決定されましたが、
次がありません。
現在、試行錯誤で検討されていますが、
イリノテカン同様に日本で開発された抗癌剤アムルビシンを使っての治療が、
恐らくセカンドラインの治療として定着していくものと思われます。
その前に、またくじ引きの臨床試験が待っているはずですが……
臨床試験は、4000万人の無保険者がいると言われるアメリカなどでは、
経済的な問題から、ガン治療を受けることができない患者さんが溢れています。
その様な患者さんでは、
その試験に参加すれば、無料で治療が受けられるという
非常に大きな恩恵があるので、
こぞってその試験に群がります。
一方、毎月健康保険料を支払っているほとんどの日本人であれば、
治療法を選択する権利があるのは、患者さん本人です。
臨床試験(治験)に反対するつもりは更々ありません。
医学の進歩のためには、通らざるを得ない道です。
しかし、その臨床試験を受ける時に、
どのような目的で、どのような結果が期待される試験であるのかを、
正確に理解してから、くじ引きをして下さい。
また、その時
「その主治医の身内の患者さんでも、その試験を受けさせるか否か?」
を是非確認して下さい。
以上 文責 梅澤 充



