昨日は、UFT(ユーエフティー)という日本が世界に誇る経口抗癌剤について、
生まれ祖国である日本の偉~い抗癌剤治療専門の腫瘍内科といわれる先生方に、
散々苛め抜かれた不遇の、誠に気の毒な生い立ちについて書きました。
そのお偉先生方は、何故か副作用の大きい点滴の抗癌剤ばかりを贔屓し、
優しい性格で人を苛める副作用がとても少ないUFTは目の敵にされ、
「効かない抗癌剤」と散々罵倒されてきました。
しかし、昨日ご紹介したとおり、現在では、
ガンの根治手術後の再発予防効果があることが、
科学的に証明され、やっと日の目を見ることができるようになりましたが、
それまでは、まったく日の当たらない日陰のクスリでした。
また、2月27日の「メトロノームのように」
で書いた、メトロノミックテラピーの、
主役を演じることができる重要な一員としても、
UFTをアメリカ人が取り上げたことから、
UFTを散々酷評しておられた日本の先生方は、手の平を返したように、
今度は賞賛するようになりました。
私も含め多くの日本の外科医は、その罵倒され続けていた時代からの愛好者でした。
しかし、私は、現在でも、UFTに腫瘍縮小効果が大きいとは思いません。
逆にほとんどないのではないかと思っています。
よく厚生労働省(当時は厚生省)が抗癌剤として認可したものだと思います。
そして今でも、抗癌剤治療専門の先生方は、アメリカ人の前では賞賛しますが、
日本国内では「UFTなんか効かない」と言われます。
実は私も、そのとおりだとも思います。
話が複雑になりましたが、この矛盾した事実は、
3月3日の「効く抗癌剤、効かない抗癌剤」で、書きましたとおり、
「抗癌剤が効く」ということに対する、
患者さんと医者との認識の違い、ボタンの掛け違えにあるように思います。
「抗癌剤治療には副作用は当たり前」と考える
現在の標準的抗癌剤治療の考え方からすれば、
腫瘍縮小効果がなければ、効いたとはみなしません。
確かに、辛い副作用という、大切な患者さんの身体に大きなダメージを与える、
すなわち、患者さんは大きな代償を払うわけですから、
それなりの縮小効果がなければその代償には見合いません。
しかし、患者さんとしては、痛くも痒くもないガンは、
治療によって、小さくならなかったとしても、
その治療で、副作用がないのであれば、大きくならなければ、
大きな満足が得られるはずです。
このように、治療の目的を何処に置くかにより、
効くことにもなり、効かないクスリ・国の恥にもなります。
3月3日に書いたとおり、
効く、効かないの判断は、患者さんご自身で決めて下さい。
ここまで、
UFTをイイこと尽くめのように書いてしまいましたが、
UFTにも、副作用はあります。
副作用として長期間の服用により、味覚障害が出現し、それは内服を中止し後も、
回復しないことも珍しくありません。
この副作用は、UFT内服により食物中の亜鉛の吸収が阻害され、
亜鉛不足に陥ることが主因と考えられるため、
当時、亜鉛を含有している唯一の胃粘膜保護剤であるプロマックという薬を、
UFTと同時に内服してもらい、味覚試験を行なったところ、明らかに味覚障害は、
軽減されました。
当時はなかったのですが、現在では、亜鉛を含むサプリメント(栄養補助剤)が、
スーパー、コンビニでも置いてありますから、それを飲むことでも
軽減されるものと思います。
また、ムカつきや胃のもたれなどの胃腸障害も出現します。
これは、カプセル製剤には多かったのですが、
胃の中では溶けないで、小腸にまで達してはじめて溶解する、
顆粒製剤(マイクロカプセル)が開発されてから著明に減少しました。
以上の様な副作用はありますが、
UFTというクスリは、
腫瘍縮小効果はほとんど認めないけれども、
腫瘍の増大を食い止めてくれる、
また、再発抑制効果は確実にあるクスリだと考えます。
実際に、進行スピードが速いことで知られる小細胞肺ガンに対して、
免疫活性の向上とUFTだけで、進行が止まっている患者さんも今まで何人も診てきました。
今診ている小細胞肺ガンの患者さんは3年以上も進行が完全に止まっています。
UFTと同様に、あるいはそれ以上に「効かないクスリ」という罵声を浴びているクスリに、
クレスチンというものもあります。
このクスリは、小細胞肺ガンおよび手術後の胃ガンと大腸ガンに対して、
5‐FU系統の内服薬(UFTなど)と併用で、健康保険で認められている、
クスリです。
クレスチンは、いわゆる免疫活性の賦活剤です。
細胞を殺すことを主作用とする一般的な抗癌剤とは、
まったくその性質を異にするものです。
そのクスリの本体は、カワラタケというキノコの菌糸体成分です。
このクスリも、本当に効きません。
まったく効きません。
私はかつて相当数の患者さんに使ってきましたが、
効きませんでした。
しかし、先程のUFTとの併用で確実に延命効果はあるように感じました。
腫瘍の縮小効果はまったく認められませんでしたが、
増大抑制効果は確実に存在すると思われます。
副作用のない増大抑制効果は、その抑制されている期間だけは確実に延命できている
ものと考えられます。
抗癌剤治療で、身体に多大なダメージを与えては、増大抑制だけでは、
延命にはつながりません。
縮小があってはじめて延命の可能性がでてきます。
実際、クレスチンは
「5‐FU系統の内服薬(UFTなど)と併用で、延命効果が認められる。」
ということで、厚生労働省(当時は厚生省)が1977年に認可したクスリです。
副作用を伴う一般的な殺細胞効果を期待する抗癌剤では、
腫瘍縮小効果がなければ厚生労働省は認可しませんが、
クレスチンは、殺細胞効果はまったく期待せず、従って
ほとんど副作用のない免疫賦活剤ということで認可されたようです。
今では考えられませんが、当時はそれでも、認可されていました。
同様に「効かない」クスリとして、スエヒロタケというキノコの菌糸体成分である、
ソニフィランや、
シイタケから抽出したレンチナンなどが、
また、溶連菌という細菌の死菌製剤であるピシバニールなども、
免疫賦活による延命効果を期待する「抗癌剤」として認可されています。
ほかにも、ベスタチンという、白血病に健康保険で使えるキノコ製剤もあります。
(いずれも商品名)
いずれも「まったく効かないクスリたち」です。
しかし、「効かない」というのは、
腫瘍の縮小を期待する医者の目から見た話であり、
患者さんの目から見たら、
「副作用が軽微で、自宅で内服するだけで延命が得られる」
非常に有効な、「良く効くクスリ」だと思います。
本日は、UFTに関連し、
3月3日の「抗癌剤が効く、効かない」という意味、
患者さんと医者の思惑の違い、
ボタンの掛け違えについて書きました。
医者が、「効いていない」逆に「効いている」と言っても、
それを鵜呑みにしないで、
ご自身の状況をよく見極め、
次の治療(継続、変更)について考えて下さい。
以上 文責 梅澤 充
生まれ祖国である日本の偉~い抗癌剤治療専門の腫瘍内科といわれる先生方に、
散々苛め抜かれた不遇の、誠に気の毒な生い立ちについて書きました。
そのお偉先生方は、何故か副作用の大きい点滴の抗癌剤ばかりを贔屓し、
優しい性格で人を苛める副作用がとても少ないUFTは目の敵にされ、
「効かない抗癌剤」と散々罵倒されてきました。
しかし、昨日ご紹介したとおり、現在では、
ガンの根治手術後の再発予防効果があることが、
科学的に証明され、やっと日の目を見ることができるようになりましたが、
それまでは、まったく日の当たらない日陰のクスリでした。
また、2月27日の「メトロノームのように」
で書いた、メトロノミックテラピーの、
主役を演じることができる重要な一員としても、
UFTをアメリカ人が取り上げたことから、
UFTを散々酷評しておられた日本の先生方は、手の平を返したように、
今度は賞賛するようになりました。
私も含め多くの日本の外科医は、その罵倒され続けていた時代からの愛好者でした。
しかし、私は、現在でも、UFTに腫瘍縮小効果が大きいとは思いません。
逆にほとんどないのではないかと思っています。
よく厚生労働省(当時は厚生省)が抗癌剤として認可したものだと思います。
そして今でも、抗癌剤治療専門の先生方は、アメリカ人の前では賞賛しますが、
日本国内では「UFTなんか効かない」と言われます。
実は私も、そのとおりだとも思います。
話が複雑になりましたが、この矛盾した事実は、
3月3日の「効く抗癌剤、効かない抗癌剤」で、書きましたとおり、
「抗癌剤が効く」ということに対する、
患者さんと医者との認識の違い、ボタンの掛け違えにあるように思います。
「抗癌剤治療には副作用は当たり前」と考える
現在の標準的抗癌剤治療の考え方からすれば、
腫瘍縮小効果がなければ、効いたとはみなしません。
確かに、辛い副作用という、大切な患者さんの身体に大きなダメージを与える、
すなわち、患者さんは大きな代償を払うわけですから、
それなりの縮小効果がなければその代償には見合いません。
しかし、患者さんとしては、痛くも痒くもないガンは、
治療によって、小さくならなかったとしても、
その治療で、副作用がないのであれば、大きくならなければ、
大きな満足が得られるはずです。
このように、治療の目的を何処に置くかにより、
効くことにもなり、効かないクスリ・国の恥にもなります。
3月3日に書いたとおり、
効く、効かないの判断は、患者さんご自身で決めて下さい。
ここまで、
UFTをイイこと尽くめのように書いてしまいましたが、
UFTにも、副作用はあります。
副作用として長期間の服用により、味覚障害が出現し、それは内服を中止し後も、
回復しないことも珍しくありません。
この副作用は、UFT内服により食物中の亜鉛の吸収が阻害され、
亜鉛不足に陥ることが主因と考えられるため、
当時、亜鉛を含有している唯一の胃粘膜保護剤であるプロマックという薬を、
UFTと同時に内服してもらい、味覚試験を行なったところ、明らかに味覚障害は、
軽減されました。
当時はなかったのですが、現在では、亜鉛を含むサプリメント(栄養補助剤)が、
スーパー、コンビニでも置いてありますから、それを飲むことでも
軽減されるものと思います。
また、ムカつきや胃のもたれなどの胃腸障害も出現します。
これは、カプセル製剤には多かったのですが、
胃の中では溶けないで、小腸にまで達してはじめて溶解する、
顆粒製剤(マイクロカプセル)が開発されてから著明に減少しました。
以上の様な副作用はありますが、
UFTというクスリは、
腫瘍縮小効果はほとんど認めないけれども、
腫瘍の増大を食い止めてくれる、
また、再発抑制効果は確実にあるクスリだと考えます。
実際に、進行スピードが速いことで知られる小細胞肺ガンに対して、
免疫活性の向上とUFTだけで、進行が止まっている患者さんも今まで何人も診てきました。
今診ている小細胞肺ガンの患者さんは3年以上も進行が完全に止まっています。
UFTと同様に、あるいはそれ以上に「効かないクスリ」という罵声を浴びているクスリに、
クレスチンというものもあります。
このクスリは、小細胞肺ガンおよび手術後の胃ガンと大腸ガンに対して、
5‐FU系統の内服薬(UFTなど)と併用で、健康保険で認められている、
クスリです。
クレスチンは、いわゆる免疫活性の賦活剤です。
細胞を殺すことを主作用とする一般的な抗癌剤とは、
まったくその性質を異にするものです。
そのクスリの本体は、カワラタケというキノコの菌糸体成分です。
このクスリも、本当に効きません。
まったく効きません。
私はかつて相当数の患者さんに使ってきましたが、
効きませんでした。
しかし、先程のUFTとの併用で確実に延命効果はあるように感じました。
腫瘍の縮小効果はまったく認められませんでしたが、
増大抑制効果は確実に存在すると思われます。
副作用のない増大抑制効果は、その抑制されている期間だけは確実に延命できている
ものと考えられます。
抗癌剤治療で、身体に多大なダメージを与えては、増大抑制だけでは、
延命にはつながりません。
縮小があってはじめて延命の可能性がでてきます。
実際、クレスチンは
「5‐FU系統の内服薬(UFTなど)と併用で、延命効果が認められる。」
ということで、厚生労働省(当時は厚生省)が1977年に認可したクスリです。
副作用を伴う一般的な殺細胞効果を期待する抗癌剤では、
腫瘍縮小効果がなければ厚生労働省は認可しませんが、
クレスチンは、殺細胞効果はまったく期待せず、従って
ほとんど副作用のない免疫賦活剤ということで認可されたようです。
今では考えられませんが、当時はそれでも、認可されていました。
同様に「効かない」クスリとして、スエヒロタケというキノコの菌糸体成分である、
ソニフィランや、
シイタケから抽出したレンチナンなどが、
また、溶連菌という細菌の死菌製剤であるピシバニールなども、
免疫賦活による延命効果を期待する「抗癌剤」として認可されています。
ほかにも、ベスタチンという、白血病に健康保険で使えるキノコ製剤もあります。
(いずれも商品名)
いずれも「まったく効かないクスリたち」です。
しかし、「効かない」というのは、
腫瘍の縮小を期待する医者の目から見た話であり、
患者さんの目から見たら、
「副作用が軽微で、自宅で内服するだけで延命が得られる」
非常に有効な、「良く効くクスリ」だと思います。
本日は、UFTに関連し、
3月3日の「抗癌剤が効く、効かない」という意味、
患者さんと医者の思惑の違い、
ボタンの掛け違えについて書きました。
医者が、「効いていない」逆に「効いている」と言っても、
それを鵜呑みにしないで、
ご自身の状況をよく見極め、
次の治療(継続、変更)について考えて下さい。
以上 文責 梅澤 充