術後の補助抗癌剤治療についての質問を
メールでたくさんいただいております。
2007年7月8日の「再発予防のガン治療」
をはじめ、何回も書いてきましたが、
再発を予防、あるいは再発確率を低下させる目的で行われる
術後補助抗癌剤治療は、
身体中に散らばっている”かも知れない”ガン細胞を相手にして戦うのです。
すなわち、相手が見えないのです。
さらに言えば、
相手はすでに”存在しないかも知れない”のです。
術後無治療で○○%の確率で再発するならば、
(100 - ○○ )%の患者さんでは、
戦うべき敵はすでに存在しないのです。
如何なる治療も必要ないのです。
そのような状態での戦いでは、
その道標はエビデンス以外にはありません。
そして、その治療を選択するか否かを決めるのは、
患者さん自身の死生観、価値観です。
実際にガンが見えていれば、
どんなありがたいエビデンスも必要ありません。
見えているガンと患者さんの全身状態がすべてであり、
エビデンスなどに振り回される必要はまったくありません。
しかし、相手が見えなければ、
治療指針はエビデンスだけになります。
基本的には、エビデンスの無い術後補助抗癌剤治療は
行うべきではないと考えます。
例えば、手術ができても再発確率のとても高い肺ガンに対して、
再発予防の術後補助抗癌剤治療の治験が行われたことがあります。
再発・切除不能肺ガンに対してとても奏効率の高い標準的抗癌剤治療を
「術後の再発予防にも効果があるのではないか」と考え、
根治手術後にその治療の治験が行われました。
結果は「再発予防効果無し」でした。
しかし副作用は必発です。
辛い思いをしただけ患者さんは損をしました。
エビデンスの無い再発予防の抗癌剤治療では、
このようなことも起こりえます。
「エビデンスの無い治療はするべきではない」
これは昨日の「外科医と内科の考え方」
で書いた「内科医の考え方」です。
まったく正しい考え方だと思います。
一人一人のガンが見えないのですから、
エビデンスを道標にして、
患者さんを十把一絡げにして、
すなわち、大勢の患者さんを「マス」として扱わざるを得なくなります。
ガン患者さんを「マス」として扱う内科の先生は、
術後補助抗癌剤治療には
最適な人材だと思います。
最大耐用量の抗癌剤の扱いには長けています。
「エビデンスが無いから、その治療はするべきではない」
と、理屈のうえでは言っても、
何もせずに、再発するまで待つ、
あるいは再発しないことを祈りながら生活する、
というのは患者さんにとっては、
精神衛生上もけっして良いものではありません。
また、発生頻度の低い珍しいガン種では、
再発してもエビデンスのある治療方法が存在しないものもあります。
そのようなガン種では、
当然、再発予防に対してエビデンスのある抗癌剤治療など
存在するはずがありません。
しかし、手術時の所見から考えて再発確率が高い、
となった場合はどうするのでしょうか。
お祈り、だけでしょうか。
その場合、
勿論、エビデンスはありませんが、
身体の害の出ない程度の抗癌剤治療を続ける、
というのも一つの選択肢だと考えています。
しかし、そのような治療では、
残存しているかもしれないガン細胞を
すべて殺してしまうほどの効果は期待できません。
したがって、その場合その治療を
終生、あるいは再発を来たすまで続けるという覚悟も必要です。
だからこそ、「身体に害が無い」ことが絶対条件になります。
私は外科医ですが、
かつて、胃ガンや大腸ガン術後で、
再発確率が極めて高いと考えられる
患者さんに対して、
今では再発予防効果も確認されていますが
昔は「効かない抗癌剤」として有名であった、
UFT という内服の抗癌剤を使っていたことがあります。
術直後の予想に反して4年5年と再発をせずに経過して、
「これはもはや再発しないのかもしれない」と考え、
UFT の内服を中止した途端に再発を来たした患者さんを何人も診ました。
偶然に内服を止めた時期と再発時期が一致した
とは考えられないほどの数の患者さんを見ました。
「UFT が残存していたガン細胞の増殖を抑えていた」
としか考えられません。
今では、UFTは立派に術後の再発予防効果があることが証明されています。
かつて、「UFT は国の恥」とまで罵っていた腫瘍内科の先生は、
手のひらを返してそのエビデンスを賞賛していますが・・・・
(「国の恥」UFT については、
2006年3月4日の「効かない抗癌剤」で紹介しました。)
今は、UFT だけではなく、
内服の抗癌剤として、
TS-1 や ゼローダなどもあります。
ゼローダは大腸ガン術後の再発予防として、
まもなく健康保険の適応になる予定です。
それらを続けるというのも一つの考え方であるように思います。
エビデンスが絶対重要である術後の再発予防の抗癌剤治療でも、
ある程度は、個々の事情に合わせて臨機応変に考えるべきだと思います。
以上 文責 梅澤 充
メールでたくさんいただいております。
2007年7月8日の「再発予防のガン治療」
をはじめ、何回も書いてきましたが、
再発を予防、あるいは再発確率を低下させる目的で行われる
術後補助抗癌剤治療は、
身体中に散らばっている”かも知れない”ガン細胞を相手にして戦うのです。
すなわち、相手が見えないのです。
さらに言えば、
相手はすでに”存在しないかも知れない”のです。
術後無治療で○○%の確率で再発するならば、
(100 - ○○ )%の患者さんでは、
戦うべき敵はすでに存在しないのです。
如何なる治療も必要ないのです。
そのような状態での戦いでは、
その道標はエビデンス以外にはありません。
そして、その治療を選択するか否かを決めるのは、
患者さん自身の死生観、価値観です。
実際にガンが見えていれば、
どんなありがたいエビデンスも必要ありません。
見えているガンと患者さんの全身状態がすべてであり、
エビデンスなどに振り回される必要はまったくありません。
しかし、相手が見えなければ、
治療指針はエビデンスだけになります。
基本的には、エビデンスの無い術後補助抗癌剤治療は
行うべきではないと考えます。
例えば、手術ができても再発確率のとても高い肺ガンに対して、
再発予防の術後補助抗癌剤治療の治験が行われたことがあります。
再発・切除不能肺ガンに対してとても奏効率の高い標準的抗癌剤治療を
「術後の再発予防にも効果があるのではないか」と考え、
根治手術後にその治療の治験が行われました。
結果は「再発予防効果無し」でした。
しかし副作用は必発です。
辛い思いをしただけ患者さんは損をしました。
エビデンスの無い再発予防の抗癌剤治療では、
このようなことも起こりえます。
「エビデンスの無い治療はするべきではない」
これは昨日の「外科医と内科の考え方」
で書いた「内科医の考え方」です。
まったく正しい考え方だと思います。
一人一人のガンが見えないのですから、
エビデンスを道標にして、
患者さんを十把一絡げにして、
すなわち、大勢の患者さんを「マス」として扱わざるを得なくなります。
ガン患者さんを「マス」として扱う内科の先生は、
術後補助抗癌剤治療には
最適な人材だと思います。
最大耐用量の抗癌剤の扱いには長けています。
「エビデンスが無いから、その治療はするべきではない」
と、理屈のうえでは言っても、
何もせずに、再発するまで待つ、
あるいは再発しないことを祈りながら生活する、
というのは患者さんにとっては、
精神衛生上もけっして良いものではありません。
また、発生頻度の低い珍しいガン種では、
再発してもエビデンスのある治療方法が存在しないものもあります。
そのようなガン種では、
当然、再発予防に対してエビデンスのある抗癌剤治療など
存在するはずがありません。
しかし、手術時の所見から考えて再発確率が高い、
となった場合はどうするのでしょうか。
お祈り、だけでしょうか。
その場合、
勿論、エビデンスはありませんが、
身体の害の出ない程度の抗癌剤治療を続ける、
というのも一つの選択肢だと考えています。
しかし、そのような治療では、
残存しているかもしれないガン細胞を
すべて殺してしまうほどの効果は期待できません。
したがって、その場合その治療を
終生、あるいは再発を来たすまで続けるという覚悟も必要です。
だからこそ、「身体に害が無い」ことが絶対条件になります。
私は外科医ですが、
かつて、胃ガンや大腸ガン術後で、
再発確率が極めて高いと考えられる
患者さんに対して、
今では再発予防効果も確認されていますが
昔は「効かない抗癌剤」として有名であった、
UFT という内服の抗癌剤を使っていたことがあります。
術直後の予想に反して4年5年と再発をせずに経過して、
「これはもはや再発しないのかもしれない」と考え、
UFT の内服を中止した途端に再発を来たした患者さんを何人も診ました。
偶然に内服を止めた時期と再発時期が一致した
とは考えられないほどの数の患者さんを見ました。
「UFT が残存していたガン細胞の増殖を抑えていた」
としか考えられません。
今では、UFTは立派に術後の再発予防効果があることが証明されています。
かつて、「UFT は国の恥」とまで罵っていた腫瘍内科の先生は、
手のひらを返してそのエビデンスを賞賛していますが・・・・
(「国の恥」UFT については、
2006年3月4日の「効かない抗癌剤」で紹介しました。)
今は、UFT だけではなく、
内服の抗癌剤として、
TS-1 や ゼローダなどもあります。
ゼローダは大腸ガン術後の再発予防として、
まもなく健康保険の適応になる予定です。
それらを続けるというのも一つの考え方であるように思います。
エビデンスが絶対重要である術後の再発予防の抗癌剤治療でも、
ある程度は、個々の事情に合わせて臨機応変に考えるべきだと思います。
以上 文責 梅澤 充