ある患者さんのご家族が、
昨日セカンドオピニオンに来られました。
再発ガンの治療中の患者さんです。
現在、有名な病院に入院されていますが、
ここ数日ほど食事がまったく取れないような状況です。
体重も激減しているようです。
しかし、持参された資料からは、
ガンは全身アチコチにポツポツと散らばっていますが
その大きさも進展具合も大したことはなく、
命を脅かすような状況ではありません。
消化器にも異常は無さそうです。
勿論、全身に対しての抗癌剤治療は必要ですが、
今すぐそれを行わなければならないという状況ではありません。
食事がまったく取れないのは、
頭頚部に対する放射線治療の影響で、
重篤な口内炎を併発したためのようです。
水の摂取もままならないような状況です。
放射線による開口障害もあるのかも知れません。
口内炎、開口障害とはいえ、
経口摂取がまったくできないのであれば、
人間生きていくことはできません。
飢餓死してしまいます。
現在、入院して点滴だけを行っているそうです。
普通の腕から入れる点滴だけです。
主治医はそれ以上の積極的なことを行おうとはしていないようです。
いろいろと経過を聞いていくと、
一度、現在の主治医が勧める抗癌剤治療を拒否した経緯がありました。
主治医の意見を聞かずに、
患者さん独自に探してきた治療法に賭け、
そちらで治療を行い良好な経過を辿ったようです。
しかし今回、経口食事摂取不良が原因の低栄養と思われる状態になり
入院することになりました。
主治医からは、
「私の言うとおりにしないからこうなるのだ」
というようなことを言外に言われたそうです。
あってはならないことですが、
「私に従わないからこうなる」
と決め付けてしまうと、
もう何も治療はしない。
という恐ろしい事態も発生してくる可能性もあります。
そして、無治療にする前に、
ご家族が主治医に呼び出され、
「もはや治療方法はありません」
との宣告がなされます。
その宣告が出されてしまったならば、
その病院では、
ガンに対して積極的な治療は何も行われません。
今回のご相談の患者さんの場合には、
現在積極的なガン治療は必要ありません。
ガンが直ちに命を脅かす状況ではありません。
現在の最優先課題は、
「飢餓死を如何に避けるか」ということです。
そのためには、
高カロリー点滴をしていくしかありません。
胃瘻を造ることも一つの作戦ですが、
重篤な口内炎と口が思うとおりに開かない状況では、
それは難しくなります。
緊急避難的に中心静脈カテーテルというのを挿入して、
そこから高カロリーの点滴を行うのが一番簡単で確実です。
腕の点滴では高カロリーは入れられません。
10月8日の「ガン治療拠点病院の正体」
でも書いたとおり、
標準的抗癌剤治療はほとんどの場合、
PS. がゼロまたは1の患者さんにしか行われません。
全身状態の悪化により、
標準的抗癌剤治療の適応から外れると、
緩和ケアだけを勧められます。
しかし、それを、
「治療法が無い」宣告を行った病院で行う場合には、
極めて不十分なケアであることも少なくありません。
治療方法が無い、と宣告した手前、
その後あまり長生きされても困る、
という心理が働いているように感じるのは、
下衆の勘ぐりでしょうか。
ご相談の患者さんの場合、
主治医の治療方針に背いての結果ですから、
それだけで「もはや治療方法は無い」
「緩和ケアをしてください」
となる可能性は十分に考えられます。
もし十分な栄養補給を伴う緩和ケアであれば、
その患者さんは、
それにより全身状態の改善を図った後、
抗癌剤治療により延命の可能性は十分にあります。
しかし、「もはや治療法はありません」の宣告後、
カロリーの低い点滴だけをされたら、
飢餓死を待つだけです。
勝手な敗北宣言が出る前に、
ご本人あるいはご家族から、
主治医に直接、
「具体的なお願い」をしなければなりません。
宣告が下されてからでは、
「もう治療方法は無い」と言った手前、
面子もあり医者は何もしなくなります。
勿論、病院を変わればよいのですが、
せっかく入院しているのに、
そこを利用しないのは勿体ない話です。
医者を動かすには、
ものを言うタイミングもとても重要です。
以上 文責 梅澤 充
昨日セカンドオピニオンに来られました。
再発ガンの治療中の患者さんです。
現在、有名な病院に入院されていますが、
ここ数日ほど食事がまったく取れないような状況です。
体重も激減しているようです。
しかし、持参された資料からは、
ガンは全身アチコチにポツポツと散らばっていますが
その大きさも進展具合も大したことはなく、
命を脅かすような状況ではありません。
消化器にも異常は無さそうです。
勿論、全身に対しての抗癌剤治療は必要ですが、
今すぐそれを行わなければならないという状況ではありません。
食事がまったく取れないのは、
頭頚部に対する放射線治療の影響で、
重篤な口内炎を併発したためのようです。
水の摂取もままならないような状況です。
放射線による開口障害もあるのかも知れません。
口内炎、開口障害とはいえ、
経口摂取がまったくできないのであれば、
人間生きていくことはできません。
飢餓死してしまいます。
現在、入院して点滴だけを行っているそうです。
普通の腕から入れる点滴だけです。
主治医はそれ以上の積極的なことを行おうとはしていないようです。
いろいろと経過を聞いていくと、
一度、現在の主治医が勧める抗癌剤治療を拒否した経緯がありました。
主治医の意見を聞かずに、
患者さん独自に探してきた治療法に賭け、
そちらで治療を行い良好な経過を辿ったようです。
しかし今回、経口食事摂取不良が原因の低栄養と思われる状態になり
入院することになりました。
主治医からは、
「私の言うとおりにしないからこうなるのだ」
というようなことを言外に言われたそうです。
あってはならないことですが、
「私に従わないからこうなる」
と決め付けてしまうと、
もう何も治療はしない。
という恐ろしい事態も発生してくる可能性もあります。
そして、無治療にする前に、
ご家族が主治医に呼び出され、
「もはや治療方法はありません」
との宣告がなされます。
その宣告が出されてしまったならば、
その病院では、
ガンに対して積極的な治療は何も行われません。
今回のご相談の患者さんの場合には、
現在積極的なガン治療は必要ありません。
ガンが直ちに命を脅かす状況ではありません。
現在の最優先課題は、
「飢餓死を如何に避けるか」ということです。
そのためには、
高カロリー点滴をしていくしかありません。
胃瘻を造ることも一つの作戦ですが、
重篤な口内炎と口が思うとおりに開かない状況では、
それは難しくなります。
緊急避難的に中心静脈カテーテルというのを挿入して、
そこから高カロリーの点滴を行うのが一番簡単で確実です。
腕の点滴では高カロリーは入れられません。
10月8日の「ガン治療拠点病院の正体」
でも書いたとおり、
標準的抗癌剤治療はほとんどの場合、
PS. がゼロまたは1の患者さんにしか行われません。
全身状態の悪化により、
標準的抗癌剤治療の適応から外れると、
緩和ケアだけを勧められます。
しかし、それを、
「治療法が無い」宣告を行った病院で行う場合には、
極めて不十分なケアであることも少なくありません。
治療方法が無い、と宣告した手前、
その後あまり長生きされても困る、
という心理が働いているように感じるのは、
下衆の勘ぐりでしょうか。
ご相談の患者さんの場合、
主治医の治療方針に背いての結果ですから、
それだけで「もはや治療方法は無い」
「緩和ケアをしてください」
となる可能性は十分に考えられます。
もし十分な栄養補給を伴う緩和ケアであれば、
その患者さんは、
それにより全身状態の改善を図った後、
抗癌剤治療により延命の可能性は十分にあります。
しかし、「もはや治療法はありません」の宣告後、
カロリーの低い点滴だけをされたら、
飢餓死を待つだけです。
勝手な敗北宣言が出る前に、
ご本人あるいはご家族から、
主治医に直接、
「具体的なお願い」をしなければなりません。
宣告が下されてからでは、
「もう治療方法は無い」と言った手前、
面子もあり医者は何もしなくなります。
勿論、病院を変わればよいのですが、
せっかく入院しているのに、
そこを利用しないのは勿体ない話です。
医者を動かすには、
ものを言うタイミングもとても重要です。
以上 文責 梅澤 充