平成18年3月14日の「医者も人間、患者も人間」で、
患者さんが楽をすれば、医者も楽をすることを考えてしまいます。
逆に、患者さんが真剣で、ご自身の治療に熱意があれば、
医者もその熱意に動かされて、真剣にならざるを得ない。
という内容のことを書きました。
医者が楽をするといっても、それは別に手抜きではありません。
日本では、標準的とされる治療をするのですから、
医者としては後ろ指刺されることはまったくありません。
ただ、それを患者さんが望んでいないというだけです。
何故医者が、積極的に「患者さんが望んでいる治療をしてあげよう」と、
思えないのでしょうか。
今の医者を取り巻く環境が、あまりにも厳し過ぎることに
大きな原因があるように思います。
あんなことでいちいち訴えられていたら、
バカバカしくて医者なんかやっていられない。
という事件が多過ぎます。
バカバカしい訴訟では、医者は敗訴はしないでしょうが、
勝訴するまでに多くの時間と費用が費やされます。
そのような中で、現在の日本の医者は、つねに
「患者さんの満足のいかない結果に終わったならば訴えられる」という、
いわれのない恐怖と隣り合わせにいます。
そのような環境の中で、エビデンスのない標準的ではない治療を行い、
患者さんのご家族の意に沿わない結果で終わってしまった場合、
「訴えられる」という、恐怖があります。
日本の医者は現在あまり恵まれない待遇の中で生活しています。
その状況下で、恐怖を押してまで、患者さんのためを考え、
患者さんが望む治療をする医者が
日本にどれだけ居るでしょうか。
その点、標準的抗癌剤治療を行いエビデンスどおりに患者さんが亡くなられれば、
それは、誰の責任にもなりません。
もし、生存期間中央値が10ヶ月というエビデンスの出ている標準的抗癌剤治療を行い、
不幸にして患者さんが2ヶ月で亡くなられても、
「10ヶ月以内に半分の患者さんが亡くなる」
これがエビデンスですから、
たとえ2ヶ月、1ヶ月でも、誰も文句の付けようがありません。
エビデンスは、患者さんにその治療を勧めるときの錦の御旗、黄門様の印籠ですが、
結果が良くなかった時に、
医者の身を守ってくれる、最強の盾にもなってくれるものです。
但し、標準的抗癌剤治療の副作用で、命を奪ってしまったならば、
それは責任を問われる可能性があります。
従って、標準的抗癌剤治療の標準的な副作用の対策に自信がなければ、
抗癌剤の使用量を減らせばイイだけです。
減らした理由は「医師の裁量」です。
その訴訟回避に走っている医者に対しては、
嫌な話ですが、
「医者は標準的抗癌剤治療を勧めた。
標準的ではない治療を希望するのは、患者さんご自信であり、
その治療による結果責任は、すべてそれを希望した患者が負う。」
旨の文書を患者さんが提示すれば、医者の態度は大きく変わる可能性はあります。
これは、患者さん自身の、治療に対する熱意、決意のあらわれです。
日本では、「医者 = 高額所得者」であり、優雅な生活をしている、
かのように誤解されているところが、多分にあります。
確かに一部の開業医で、羨ましい高額所得を得ている医者がいることは事実です。
特に、美容形成を行なっている医者の収入は、
我々一般の保険臨床医とは比較になりません。ケタが違います。
私の後輩でも、一般外科医から美容形成外科医に転身して、
億単位の収入を得ている羨ましい医者もいます。
一般の臨床医でも、平均的サラリーマンから比較したら、
待遇はそれ程悪くはないかもしれません。
しかし、受験で苦労して大学医学部に入学して、
6年間勉強し、卒業後最低5年程度の研修を行い、
それで、とりあえず一人前になります。
それまでは、患者さんからは想像できないほど、
悲惨で過酷な労働条件で働かなければなりません。
医者は労働基準法には守られていません。
その後に、やっと得られる医者としての待遇はけっして満足できるものではありません。
それだけの苦労、学力があれば現在の日本では、
他の職種に就いている方が、遥かに優遇され、魅力的な生活が保障されています。
私も、正直言って、今の経済的な待遇にはまったく満足はしていません。
ただ、自分の好きな仕事をしていられる満足感だけで働いています。
多くの医者も、仕事が嫌いではないから、何とかそこに生甲斐を見つけて、
仕事を続けているのだと思います。
そのような環境の中で、行なったことのない治療を、
熱意の感じられない患者さんに行なおうとは、
たいていの医者は考えないと思います。
NHKは、ガン治療特集番組で、「アメリカのガン医療は素晴らしい」と、
無条件に賞賛していましたが、
我々日本人の医者から見ると、アメリカの医者の待遇は羨望の的です。
私もアメリカで2年ほど見せつけられてきました。
さらに現在の日本では、追い討ちをかけるように、
間も無く、健康保険の診療報酬の3%カットという改革(?)が、
行なわれようとしています。
賃金3%カットなら、まだそれほど大きな問題ではないかも知れません。
そのように誤解されている方々がほとんどの様です。
しかし、例えばある病院・診療所で100万円の診療報酬があったとすると、
診療報酬3%カットの場合、同じ診療内容だと97万円になります。
たった3万円の減収のように見えます。
ところが、100万円の診療報酬を得るために、
人件費や消耗物品、諸経費で90万円程度必要です。
診療報酬は減額されても、必要経費は変わりません。
実際の利益(医者の収入)を見ると、
10万円が7万円への、30%の減額になります。
病院の主な収入源は診療報酬しかありません。
他は、僅かないわゆる差額ベット料金程度です。
けっして世間が思うほど優遇されていない医者の待遇は、さらに厳しくなります。
病院経営も相当に過酷なものになります。
賢いお子さんをお持ちであれば将来医者にだけはしない方が賢明です。
そのような過酷な環境に曝されている現在の病院経営において、
何処の病院も生き残りをかけて必死です。
私の勤務する町田胃腸病院では、今でこそギリギリ黒字かもしれませんが、
ガン患者さんの抗癌剤治療には、現在の日本の保険制度では、
病院は、ほとんど利益はありません。
むしろ赤字です。
そのような厳しい病院の状況も、少しは理解してあげて下さい。
このような状況の中で、ご自身に一番適した病院・医者を探して下さい。
最近頂くメールで、患者さんが望むように治療してもらえないことに対して、
病院・医者の対応を非難するような論調のものもありましたので、
患者さんが望まれる治療をしてくれないのは、
病院だけが悪いのではないことを、言いたくなりました。
先日と同じような内容になってしまいました。
現在の日本の医療行政にも、
そして、何でもかんでも訴えてでるという風潮にも大いに問題があると思います。
追記
3月11日に「八王子市在住のT」様から、
褒めすぎのコソバユイコメントを頂いております。
確かに、日本癌治療学会に発表しても、「アッ、ソッソ」で終わりそうです。
海外の雑誌への投稿は考えていますが、
2月27日の「メトロノームのように」で書いたとおり、
頻回の抗癌剤投与がアメリカで注目されてきましたので、
現在の標準とは違う治療が、日本でも普及してくると思います。
日本人の方が先にその治療ははじめていたのですけれども・・・
手術不能の乳ガン患者さんは、先日も町田胃腸病院に来られました。
このブログも、著書も介さず、別の病院から紹介されて来ました。
現在4名の手術不能乳ガンの患者さがおられます。
皆さんとても元気です。3名はフルタイムの仕事を、
お一人は孫の面倒をみています。
Tさまは、八王子在住であれば横浜線で一本ですので、
電話で受付けに連絡の上、月曜か木曜の午後においで下さい。
コメントにアドレスがありませんでしたので、ブログ上でお答え致しました。
以上 文責 梅澤 充
患者さんが楽をすれば、医者も楽をすることを考えてしまいます。
逆に、患者さんが真剣で、ご自身の治療に熱意があれば、
医者もその熱意に動かされて、真剣にならざるを得ない。
という内容のことを書きました。
医者が楽をするといっても、それは別に手抜きではありません。
日本では、標準的とされる治療をするのですから、
医者としては後ろ指刺されることはまったくありません。
ただ、それを患者さんが望んでいないというだけです。
何故医者が、積極的に「患者さんが望んでいる治療をしてあげよう」と、
思えないのでしょうか。
今の医者を取り巻く環境が、あまりにも厳し過ぎることに
大きな原因があるように思います。
第一点目は、今の日本で、いたるところで起こっている訴訟問題が、医者が標準的ではない治療をしたがらない大きな原因の一つであろうと思われます。
訴訟の中には、訴えられた医者の方が気の毒という事例もたくさんあります。あんなことでいちいち訴えられていたら、
バカバカしくて医者なんかやっていられない。
という事件が多過ぎます。
バカバカしい訴訟では、医者は敗訴はしないでしょうが、
勝訴するまでに多くの時間と費用が費やされます。
そのような中で、現在の日本の医者は、つねに
「患者さんの満足のいかない結果に終わったならば訴えられる」という、
いわれのない恐怖と隣り合わせにいます。
そのような環境の中で、エビデンスのない標準的ではない治療を行い、
患者さんのご家族の意に沿わない結果で終わってしまった場合、
「訴えられる」という、恐怖があります。
日本の医者は現在あまり恵まれない待遇の中で生活しています。
その状況下で、恐怖を押してまで、患者さんのためを考え、
患者さんが望む治療をする医者が
日本にどれだけ居るでしょうか。
その点、標準的抗癌剤治療を行いエビデンスどおりに患者さんが亡くなられれば、
それは、誰の責任にもなりません。
もし、生存期間中央値が10ヶ月というエビデンスの出ている標準的抗癌剤治療を行い、
不幸にして患者さんが2ヶ月で亡くなられても、
「10ヶ月以内に半分の患者さんが亡くなる」
これがエビデンスですから、
たとえ2ヶ月、1ヶ月でも、誰も文句の付けようがありません。
エビデンスは、患者さんにその治療を勧めるときの錦の御旗、黄門様の印籠ですが、
結果が良くなかった時に、
医者の身を守ってくれる、最強の盾にもなってくれるものです。
但し、標準的抗癌剤治療の副作用で、命を奪ってしまったならば、
それは責任を問われる可能性があります。
従って、標準的抗癌剤治療の標準的な副作用の対策に自信がなければ、
抗癌剤の使用量を減らせばイイだけです。
減らした理由は「医師の裁量」です。
その訴訟回避に走っている医者に対しては、
嫌な話ですが、
「医者は標準的抗癌剤治療を勧めた。
標準的ではない治療を希望するのは、患者さんご自信であり、
その治療による結果責任は、すべてそれを希望した患者が負う。」
旨の文書を患者さんが提示すれば、医者の態度は大きく変わる可能性はあります。
これは、患者さん自身の、治療に対する熱意、決意のあらわれです。
第二点目は医者の待遇の問題があると思います。
日本では、「医者 = 高額所得者」であり、優雅な生活をしている、
かのように誤解されているところが、多分にあります。
確かに一部の開業医で、羨ましい高額所得を得ている医者がいることは事実です。
特に、美容形成を行なっている医者の収入は、
我々一般の保険臨床医とは比較になりません。ケタが違います。
私の後輩でも、一般外科医から美容形成外科医に転身して、
億単位の収入を得ている羨ましい医者もいます。
一般の臨床医でも、平均的サラリーマンから比較したら、
待遇はそれ程悪くはないかもしれません。
しかし、受験で苦労して大学医学部に入学して、
6年間勉強し、卒業後最低5年程度の研修を行い、
それで、とりあえず一人前になります。
それまでは、患者さんからは想像できないほど、
悲惨で過酷な労働条件で働かなければなりません。
医者は労働基準法には守られていません。
その後に、やっと得られる医者としての待遇はけっして満足できるものではありません。
それだけの苦労、学力があれば現在の日本では、
他の職種に就いている方が、遥かに優遇され、魅力的な生活が保障されています。
私も、正直言って、今の経済的な待遇にはまったく満足はしていません。
ただ、自分の好きな仕事をしていられる満足感だけで働いています。
多くの医者も、仕事が嫌いではないから、何とかそこに生甲斐を見つけて、
仕事を続けているのだと思います。
そのような環境の中で、行なったことのない治療を、
熱意の感じられない患者さんに行なおうとは、
たいていの医者は考えないと思います。
NHKは、ガン治療特集番組で、「アメリカのガン医療は素晴らしい」と、
無条件に賞賛していましたが、
我々日本人の医者から見ると、アメリカの医者の待遇は羨望の的です。
私もアメリカで2年ほど見せつけられてきました。
さらに現在の日本では、追い討ちをかけるように、
間も無く、健康保険の診療報酬の3%カットという改革(?)が、
行なわれようとしています。
賃金3%カットなら、まだそれほど大きな問題ではないかも知れません。
そのように誤解されている方々がほとんどの様です。
しかし、例えばある病院・診療所で100万円の診療報酬があったとすると、
診療報酬3%カットの場合、同じ診療内容だと97万円になります。
たった3万円の減収のように見えます。
ところが、100万円の診療報酬を得るために、
人件費や消耗物品、諸経費で90万円程度必要です。
診療報酬は減額されても、必要経費は変わりません。
実際の利益(医者の収入)を見ると、
10万円が7万円への、30%の減額になります。
病院の主な収入源は診療報酬しかありません。
他は、僅かないわゆる差額ベット料金程度です。
けっして世間が思うほど優遇されていない医者の待遇は、さらに厳しくなります。
病院経営も相当に過酷なものになります。
賢いお子さんをお持ちであれば将来医者にだけはしない方が賢明です。
そのような過酷な環境に曝されている現在の病院経営において、
何処の病院も生き残りをかけて必死です。
私の勤務する町田胃腸病院では、今でこそギリギリ黒字かもしれませんが、
ガン患者さんの抗癌剤治療には、現在の日本の保険制度では、
病院は、ほとんど利益はありません。
むしろ赤字です。
そのような厳しい病院の状況も、少しは理解してあげて下さい。
このような状況の中で、ご自身に一番適した病院・医者を探して下さい。
最近頂くメールで、患者さんが望むように治療してもらえないことに対して、
病院・医者の対応を非難するような論調のものもありましたので、
患者さんが望まれる治療をしてくれないのは、
病院だけが悪いのではないことを、言いたくなりました。
先日と同じような内容になってしまいました。
現在の日本の医療行政にも、
そして、何でもかんでも訴えてでるという風潮にも大いに問題があると思います。
追記
3月11日に「八王子市在住のT」様から、
褒めすぎのコソバユイコメントを頂いております。
確かに、日本癌治療学会に発表しても、「アッ、ソッソ」で終わりそうです。
海外の雑誌への投稿は考えていますが、
2月27日の「メトロノームのように」で書いたとおり、
頻回の抗癌剤投与がアメリカで注目されてきましたので、
現在の標準とは違う治療が、日本でも普及してくると思います。
日本人の方が先にその治療ははじめていたのですけれども・・・
手術不能の乳ガン患者さんは、先日も町田胃腸病院に来られました。
このブログも、著書も介さず、別の病院から紹介されて来ました。
現在4名の手術不能乳ガンの患者さがおられます。
皆さんとても元気です。3名はフルタイムの仕事を、
お一人は孫の面倒をみています。
Tさまは、八王子在住であれば横浜線で一本ですので、
電話で受付けに連絡の上、月曜か木曜の午後においで下さい。
コメントにアドレスがありませんでしたので、ブログ上でお答え致しました。
以上 文責 梅澤 充



