ガン治療の奏効率、生存期間中央値、については先日説明しました。
本日は、エビデンスEBM(Evidence)について説明します。
辞書を引けば、「エビデンス」とは、「明白に見えるもの」とか「証拠」「根拠」「証(アカシ)」などと出てきます。
医療の現場では、「臨床研究に基づく実証の報告」のことを意味します。
すなわち仮説や想像ではなく、現実の臨床研究の結果として得られているデータです。
すでに何度かこのブログでも登場した「抗癌剤治療を行った時の生存期間」などがそれに該当します。
すなわち、「無治療よりも抗癌剤治療を行った方が○○ヶ月延命できる。」という、実証データです。
数十年間の暗黒の抗癌剤治療時代(2006年1月13日記載)は、患者さんが一番望んでいるはずである、"長生きすること"は完全に無視され、抗癌剤治療による奏効率だけが、その治療を行うための唯一の、大義名分でした。
しかし、近年、その抗癌剤治療でも、無治療で経過を診るよりは、数ヶ月間長生きが出来るというデータが出てくると、今度はその、証拠(エビデンス)が、抗癌剤治療を遂行するための、"錦の御旗"になりました。
そして、「そのエビデンスに従って治療計画を立てる」という考え方が、広がってきました。(一部のがんセンターなどが中心になり強引に、広められています)
その結果、現在、ガン医療の現場ではEvidence Based Medicine(EBMエビデンス ベースド メディスン)(エビデンスに基づいた治療)と言う言葉が、盛んに言われています。
根拠・データの無い治療ではなく、"Evidence"すなわち"証拠"に基いて治療しよう。」
というものです。
その掛け声は、一見極めて当然であり、正当な考え方の様に思われます。
しかし、そのエビデンスとは、どのようなものなのでしょうか。
そして、どのような証拠・根拠が現在明らかになっているのでしょうか。
一般に日本では、患者さんに対し「Evidence Based Medicine(EBM)(エビデンスに根ざした治療)が重要なのだ。エビデンスの無い治療はするべきではない。」と説明されます。
それはまさに"ごもっとも"なのですが、その肝腎なエビデンスの内容については、殆どの医者は、患者さんに対して説明しません。
2006年1月10日と12日にお示しした、胃ガンや肺ガンでの抗癌剤治療を行った時の、
生存期間中央値(MST)などが、立派なエビデンスです。
再び、その表とグラフを示します。


この図およびグラフは、
胃ガンでは、5−FU + シスプラチン、あるいは、5−FU単独による抗癌剤治療を行なうと生存期間中央値(MST)は、7.7ヶ月、というエビデンス。
肺ガンの場合、抗癌剤治療を受けた416人の患者群ではMSTは6ヶ月。
無治療で経過を診た362人の患者群ではMSTは4.5ヶ月。
すなわち、抗癌剤治療を行なった方が、1.5ヶ月長生きできます。
というエビデンスを表しています。
これらのエビデンスを"錦の御旗"にして、抗癌剤治療が進められてゆきます。
ほとんど全ての種類のガン治療で、このエビデンスは出されています。
しかし、実際の治療に際しては、「1.5ヶ月しか長生きできない。」(現在の最新のエビデンスでは3〜4ヶ月程度にまで進化してはいます…)
胃ガンでは、7.7ヶ月で、確実に半数の患者さんは死ぬ。(これも最新の治療では、300日を越えるものもエビデンスになりつつあります。)
という、エビデンスの内容に関しては、ほとんど患者さんに知らされることはなく、「無治療よりは長生きできる」ことだけを聞かされて、治療は遂行されます。
本来、エビデンスとは「その治療を受けた場合、どれだけの利益があるか。」という真実の数字のはずです。
そして、その「利益」に関するエビデンスの内容について、しっかり理解した上で患者さんは治療を受けるか否かを決定する権利を持っているはずです。
しかし、その権利は、多くの場合完全に無視されて、強引に治療が開始されます。
そもそもEvidenceとは下の表のように、5段階に分けられています。
そして、EBMとは、エビデンスの中で信頼性の高い、信頼度1および2をだけを採用し、それを指標に治療を進めようというものです。

先ほどの、胃ガンや肺ガンのエビデンスなどは、信頼度1に該当するものです。
しかし、どの患者さんやご家族が、7.7ヶ月で確実の半分の患者が死に至るというエビデンスに従って治療してほしいと考えるでしょうか。
辛い副作用に耐えて治療を受けても、無治療より1.5ヶ月しか長生きできない、というエビデンスを誰が有難がるのでしょうか。
そんな「絶望的なエビデンス」"根拠・証拠"を誰が望むのでしょうか?
しかも辛く苦しい思いをしたり、入院したりしてです。
それが、今流行りのEvidence Based Medicine(EBMエビデンス ベースド メディスン)(エビデンスに根ざした治療)です。
「このスケデュールで抗癌剤治療を行なうと、半分の患者は確実に○○ヶ月で死ぬ。」と、医者だけは判っていながら、それを患者に知らせることなく、「きっと自分のガンは良くなるのだろう。ウンと長生きできるのだろう」と患者を誤解させたまま、とても苦しい治療を遂行することは、
かつて何処かの国で行われた、罪の無い人間の「強制収容所送り」と同じではないでしょうか。
私には、NHKが絶賛する某がんセンターと、暗い時代の「強制収容所」との違いが理解できません。
唯一の違いは、「収容所」は強制的に入れられてしまいましたが、
がんセンターでは、実態を知らずに患者さん自らの意志で入ってしまったことだけではないでしょうか。
但し、現在では胃ガンでもMST約300日以上、すなわち10ヶ月間以上の平均生存が可能な治療も開発されており、その数字がエビデンスになりつつあります。
このように、エビデンスも進歩はしています・・・
しかし、考えてみれば、この進歩は、何も知らされずに収容所に入れられた、多くのお気の毒な患者さんたちの尊い犠牲の上に成り立っている進歩です。
確かに生存期間だけを考えれば、数ヶ月といえどもエビデンスのある立派な治療かも知れません。
しかし、患者さんやご家族はそれだけで満足されるのでしょうか。
さらに、その現在のエビデンスについて、正しく説明してくれて、それを患者さんが納得して、その"十分な了解"の後に治療を行うことは、今の日本ではほとんどありません。
その"十分な了解"認識の上に患者側が判断して治療を開始することは、「インフォームドコンセント」と言われています。
EBMを重要視されるセンセイ方は、同時にインフォームドコンセントも、極めて重要であるかのように、訴えておられますが、実際には、一番それを無視しておられるように思えてなりません。
それが、現在の日本での、EBM(エビデンスに根ざした治療)およびインフォームドコンセントの実態です。
現在では、それを反省する謙虚な姿勢も出現し、NBM(Narrative Based Medicine ナラティブ ベースド メディスン)という、その病を患った個人を包括的に診てゆこうという、考え方も出てきました。
本来、医療の当然の姿だと考えます。
この考え方については、後日ゆっくりと書きたいと思います。
以上 文責 梅澤 充
本日は、エビデンスEBM(Evidence)について説明します。
辞書を引けば、「エビデンス」とは、「明白に見えるもの」とか「証拠」「根拠」「証(アカシ)」などと出てきます。
医療の現場では、「臨床研究に基づく実証の報告」のことを意味します。
すなわち仮説や想像ではなく、現実の臨床研究の結果として得られているデータです。
すでに何度かこのブログでも登場した「抗癌剤治療を行った時の生存期間」などがそれに該当します。
すなわち、「無治療よりも抗癌剤治療を行った方が○○ヶ月延命できる。」という、実証データです。
数十年間の暗黒の抗癌剤治療時代(2006年1月13日記載)は、患者さんが一番望んでいるはずである、"長生きすること"は完全に無視され、抗癌剤治療による奏効率だけが、その治療を行うための唯一の、大義名分でした。
しかし、近年、その抗癌剤治療でも、無治療で経過を診るよりは、数ヶ月間長生きが出来るというデータが出てくると、今度はその、証拠(エビデンス)が、抗癌剤治療を遂行するための、"錦の御旗"になりました。
そして、「そのエビデンスに従って治療計画を立てる」という考え方が、広がってきました。(一部のがんセンターなどが中心になり強引に、広められています)
その結果、現在、ガン医療の現場ではEvidence Based Medicine(EBMエビデンス ベースド メディスン)(エビデンスに基づいた治療)と言う言葉が、盛んに言われています。
根拠・データの無い治療ではなく、"Evidence"すなわち"証拠"に基いて治療しよう。」
というものです。
その掛け声は、一見極めて当然であり、正当な考え方の様に思われます。
しかし、そのエビデンスとは、どのようなものなのでしょうか。
そして、どのような証拠・根拠が現在明らかになっているのでしょうか。
一般に日本では、患者さんに対し「Evidence Based Medicine(EBM)(エビデンスに根ざした治療)が重要なのだ。エビデンスの無い治療はするべきではない。」と説明されます。
それはまさに"ごもっとも"なのですが、その肝腎なエビデンスの内容については、殆どの医者は、患者さんに対して説明しません。
2006年1月10日と12日にお示しした、胃ガンや肺ガンでの抗癌剤治療を行った時の、
生存期間中央値(MST)などが、立派なエビデンスです。
再び、その表とグラフを示します。


この図およびグラフは、
胃ガンでは、5−FU + シスプラチン、あるいは、5−FU単独による抗癌剤治療を行なうと生存期間中央値(MST)は、7.7ヶ月、というエビデンス。
肺ガンの場合、抗癌剤治療を受けた416人の患者群ではMSTは6ヶ月。
無治療で経過を診た362人の患者群ではMSTは4.5ヶ月。
すなわち、抗癌剤治療を行なった方が、1.5ヶ月長生きできます。
というエビデンスを表しています。
これらのエビデンスを"錦の御旗"にして、抗癌剤治療が進められてゆきます。
ほとんど全ての種類のガン治療で、このエビデンスは出されています。
しかし、実際の治療に際しては、「1.5ヶ月しか長生きできない。」(現在の最新のエビデンスでは3〜4ヶ月程度にまで進化してはいます…)
胃ガンでは、7.7ヶ月で、確実に半数の患者さんは死ぬ。(これも最新の治療では、300日を越えるものもエビデンスになりつつあります。)
という、エビデンスの内容に関しては、ほとんど患者さんに知らされることはなく、「無治療よりは長生きできる」ことだけを聞かされて、治療は遂行されます。
本来、エビデンスとは「その治療を受けた場合、どれだけの利益があるか。」という真実の数字のはずです。
そして、その「利益」に関するエビデンスの内容について、しっかり理解した上で患者さんは治療を受けるか否かを決定する権利を持っているはずです。
しかし、その権利は、多くの場合完全に無視されて、強引に治療が開始されます。
そもそもEvidenceとは下の表のように、5段階に分けられています。
そして、EBMとは、エビデンスの中で信頼性の高い、信頼度1および2をだけを採用し、それを指標に治療を進めようというものです。

先ほどの、胃ガンや肺ガンのエビデンスなどは、信頼度1に該当するものです。
しかし、どの患者さんやご家族が、7.7ヶ月で確実の半分の患者が死に至るというエビデンスに従って治療してほしいと考えるでしょうか。
辛い副作用に耐えて治療を受けても、無治療より1.5ヶ月しか長生きできない、というエビデンスを誰が有難がるのでしょうか。
そんな「絶望的なエビデンス」"根拠・証拠"を誰が望むのでしょうか?
しかも辛く苦しい思いをしたり、入院したりしてです。
それが、今流行りのEvidence Based Medicine(EBMエビデンス ベースド メディスン)(エビデンスに根ざした治療)です。
「このスケデュールで抗癌剤治療を行なうと、半分の患者は確実に○○ヶ月で死ぬ。」と、医者だけは判っていながら、それを患者に知らせることなく、「きっと自分のガンは良くなるのだろう。ウンと長生きできるのだろう」と患者を誤解させたまま、とても苦しい治療を遂行することは、
かつて何処かの国で行われた、罪の無い人間の「強制収容所送り」と同じではないでしょうか。
私には、NHKが絶賛する某がんセンターと、暗い時代の「強制収容所」との違いが理解できません。
唯一の違いは、「収容所」は強制的に入れられてしまいましたが、
がんセンターでは、実態を知らずに患者さん自らの意志で入ってしまったことだけではないでしょうか。
但し、現在では胃ガンでもMST約300日以上、すなわち10ヶ月間以上の平均生存が可能な治療も開発されており、その数字がエビデンスになりつつあります。
このように、エビデンスも進歩はしています・・・
しかし、考えてみれば、この進歩は、何も知らされずに収容所に入れられた、多くのお気の毒な患者さんたちの尊い犠牲の上に成り立っている進歩です。
確かに生存期間だけを考えれば、数ヶ月といえどもエビデンスのある立派な治療かも知れません。
しかし、患者さんやご家族はそれだけで満足されるのでしょうか。
さらに、その現在のエビデンスについて、正しく説明してくれて、それを患者さんが納得して、その"十分な了解"の後に治療を行うことは、今の日本ではほとんどありません。
その"十分な了解"認識の上に患者側が判断して治療を開始することは、「インフォームドコンセント」と言われています。
EBMを重要視されるセンセイ方は、同時にインフォームドコンセントも、極めて重要であるかのように、訴えておられますが、実際には、一番それを無視しておられるように思えてなりません。
それが、現在の日本での、EBM(エビデンスに根ざした治療)およびインフォームドコンセントの実態です。
現在では、それを反省する謙虚な姿勢も出現し、NBM(Narrative Based Medicine ナラティブ ベースド メディスン)という、その病を患った個人を包括的に診てゆこうという、考え方も出てきました。
本来、医療の当然の姿だと考えます。
この考え方については、後日ゆっくりと書きたいと思います。
以上 文責 梅澤 充



